大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 162『テンパる天照大神』

2024-01-30 14:41:47 | ノベル2
ら 信長転生記
162『テンパる天照大神』二宮忠八 




 緊箍児(きんこじ)の花菱紋がキラキラ輝いたかと思うと、超新星爆発のように画面が真っ白になって、ラボのみんなは思わず目をつぶった!

 ホワワァ~~

 音に変換したら、こんな感じで光は3Dになって画面から飛び出してきた!

 シュララララ~~ン ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 ☆いっぱいのエフェクトが満ち満ちて、こんな派手に3Dの星を出したら、グラボの能力が追い付かなくてなる! 画面左上のフレームレートが15まで落ちて、もうフリーズしてしまうと思った時、星々は女性の姿になって、画面の前に現れた。

 え……!?

 みんな息をのんで驚いたけど、信玄さんや謙信さんは見覚えがあるようだ。

信玄:「これは、御山の天照ではないか」

謙信:「本物か……御山の神域以外では姿を現さないのではなかった?」

天照:「これはね、ホログラム。忠八くんのスキルが高いから、こうやって現れることができたわけさ。ありがとう忠八くん」

忠八:「ハ、ハヒ、こ、光栄です!」

乙女:「ご顕現してくださったがはありがたいけんど、なんの御用ですろうか?」

 みなが恐れ入る中、乙女生徒会長は龍馬を彷彿とさせる長閑さで訊ねてくれる。
 こういう状況では緩い対応が一番なんだけど、なかなかできることじゃないからね。

天照:「これから信長くんたちの冒険は山場を迎えるんだけど……」

 シャリン!

武蔵:「やはりか!」

 双剣を抜いて気を吐く武蔵、それにつられて他の学院生や学園生も得物を持って立ち上がる。

信玄:「逸るな!」

 信玄さんが双乳をブルンと振るわせて立ち上がり、瘦身の謙信さんも静かに横に並ぶ。

 その迫力に、みんな半歩下がるけど、恐れ入るところまではいかない。

 みんな、ちょっと火が点いた感じだ(;'∀')。

天照:「そういうところなのよ、あなたたちが前世で失敗したのは。これから信長くんたちは三蔵法師一行のまま、おそらくは魏の曹操と対峙することになる。おそらくは上首尾に終わるとは思うけれど、まだまだ手に汗握ったり、ハラハラしたり……そして、なによりも――ここで介入すれば漁夫の利――と腰を浮かす瞬間があるかもしれないけれど、けっして介入してはいけません。しかし、目を離してもいけません。これまでは機に応じて、最小の介入でうまくいきましたが、これに欲を出してはいけません。止水明鏡の心で見守ってあげて」

乙女:「天照さんが心配するばあ、ちっくと危ないところにきちゅーいうことなんやねや?」

天照:「そうよ、鷹揚に構えすぎても……」

乙女:「龍馬の例もあるということやね」

 あ…………

 みんな息をのんだ、龍馬さんのことは学園ではタブーなんだ。それを生徒会長の乙女さん自ら口にしたことの意味は大きい。

天照:「日本の歴史は、ここ一番の詰めや辛抱が足りずに大崩れしたことが度々ありました……神代の昔、我が父イザナギは妻イザナミの忠告を聞かず玄室を覗いたためイザナミを鬼にしてしまいました。壬申の乱では大友皇子を野に放ったため大海の皇子は皇子でありながら命を失いました。義経は勝つことだけを考えて幕府が信用組合であることを理解できずに平泉で死ぬことになり、後醍醐天皇は鎌倉幕府を滅ぼし足利を九州に追ったことで全能感に陥って建武の新政をオジャンにし。今川義元は調子をこいて田楽狭間で休憩しすぎて信長に討たれるし、その信長も本能寺で光秀にやられるし、秀吉は天下を統一して、やめときゃいいのに朝鮮に出兵して豊臣の土台を台無しにしてしまった。こらえ性の無い浅野内匠頭は殿中で刀を抜いて家来を路頭に迷わせ討ち入りをやらせるは。黒船に腰を抜かして不平等条約を結ぶし、真珠湾では第二次攻撃をやらずに帰って来るし、その反省もなく、ミッドウェーは秘密を守れずに大敗北を喫してしまうし、好景気にうつつを抜かしてバブル崩壊に陥るし……」

 畏れ多いことに、天照さんは、ちょっとテンパっておられる。

 あちこちでクシャミや咳払いや肩を落とす音がする。

乙女:「気持ちは分かるけんど、転生は脛に傷もつ者ばっかりやし、それ以上は未来の話にもなるしぃ、ちっくと容赦してもらえんろうか(^_^;)」

天照:「そうね、そうよね……この御山の神の身をもっても、読み切れないものがある……いいこと、くれぐれも、走らず停まらずにね……信長くんには一番のシホンケーキの型を預けてある。成就の暁には、この天照一番のスィーツを作ってやるからね。それでは……」

 シュボン

 言うだけ言うと天照さんはシフォンケーキが萎むように小さくなって消えてしまった。

利休:「みんな、ちょっとお茶にしようか」

 遅れてやって来ていた利休さんがお茶を勧めて、やっと、少しだけ落ち着いた。



☆彡 主な登場人物
  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生 配下に上杉四天王(直江兼続・柿崎景家・宇佐美定満・甘粕景持 )
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主
  
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第66話《特認三等陸尉に任ずる》

2024-01-30 06:51:26 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第66話《特認三等陸尉に任ずる》さつき 





 フランスにいるとき、よく夢を見た。


 クロウド君の夢が多かったけど、あの緊急事態を共に乗り越えたためだと思っていた。とくにクロウド君に特別な気持ちを持ったためだとは思わなかった。ミッション・コイビトの時のドキドキは単なる吊り橋効果に過ぎない。
 その証拠と言ってはなんだけど、起きているときに、懐かしく思い出すことはあっても、連絡をとって会いたいとまでは思わなかった。
 第一、夢の細部は覚えていない。なんとなくタクミ君が仕事をしている……そんなことぐらいしか覚えていない。

「それがハッキングなんですよ」

 一佐が言った。

「さつきさんが見た夢はハッキングされると、夢を見た本人の記憶は、とても薄いものになってしまうんです」

「削除されてるってことですか?」

「コンピューターのように完全な削除はできませんが……ほんの一カ月前なんです。NATOの関係者との防衛関係の話がC国に漏れていることが分かりました。まだ協議段階の内容なので、防衛省にさえ入ってきていない内容です。その内容を知っているのは小林一佐と通訳のクロウド・レオタール三曹だけなんです。二人には悪いが身辺調査もやりました。正直行き詰まり、たどり着いたのが、さつきさん、貴女なんです」

「どうして……」

「調査方法は申し上げられませんが、さつきさんの寮の近くにC国の女がアパートを借りたことをつきとめました。そして、この女がC国の工作員だったのです」

「それって、あたしの知っている人ですか?」

 あたしは、クレルモンの大学関係者や近所のアジア系の女性を思い浮かべたが、思い当たる人間はいなかった。

「近所のパン屋で働いていた武藤利加子ですよ」

「え……彼女日本人ですよ。字は違うけど氷室冴子さんの小説の主人公と同じ名前で、それで仲良くなって、よくお店や、休みの日には公園なんかで……でも、ほんの立ち話です」

「そうやって、あなたの心の鍵を開けていたんです。ある程度親しい人間でないと頭脳のハッキングなんかできないんです」

「……そんな」

 武藤利加子は、パン屋でバイトしながら、音楽の勉強をしていた。ときどき公園でギターを弾いて小さな声で歌っていた。歌の趣味はわたしといっしょ……それって!?

「そう、心をシンクロさせていたんですよ」

「でも、まだ、ほんの二十歳くらいの子でしたよ」

「実年齢は40を超えています。さつきさんに合わせたんですよ。それくらいに化ける奴は自衛隊にもいます。梅田のトイレで出くわした女子高生は二人とも見かけの倍は歳くってますから」

「……そんな」

 あたしは、ここに来て、ほとんど「どうして」と「そんな」しか口にしていなかった。

「柿崎君、入ってきてくれ」

 一佐がいうと「失礼します」と声がかかり、一曹の階級章をつけた女性自衛官が入ってきた。

「彼女が、しばらくのあいだ貴女の世話係になります」

「柿崎君子です。よろしくお願いします」

「あの……どういうことなんでしょう?」

「あなたの心をハッキングするためには、あなたの半径500メートル以内にいなければできません。しばらく、この駐屯地内で暮らしていただきます。申し訳ありません」

「あたし……幽閉されるんですか?」

「昼間は自由になさってください。ただ、夜は駐屯地内で過ごしていただきます」

「隊内で日常的に起居出来るのは決まりで自衛官に決まっていますので、三尉待遇の特認自衛官になっていただきます」

「これが辞令です。面倒ですが起立願いますか」

 室内にいる自衛官がみな起立した。

「では、司令、お願いします」

「わたしの前にきてください」

 駐屯地の一佐が、机の前を示した。あたしは兄の記憶を元に気をつけした。

「任。佐倉さつき。特認三等陸尉に任ずる。令和六年五月十七日。防衛大臣某。S駐屯地司令、斉藤元一佐伝達」

「まあ、あとは気楽にやりましょう。わたしのことは柿崎でも君ちゃんでもすきなように呼んでください」

「は、はい……」

「够朋友gòu péngyou!」

「あ、あの時の女子高生!」


 ナンチャッテ女子高生はニヤリと笑った。


☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  由紀子       さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • クロウド          Claude Leotard  陸自隊員 
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