ファルコンZ・5
さすが、火星で有数のマースアリーナだった。
2万人収容の会場前は長蛇の列!
リハは、開場2時間前にデジタルリハを簡単にやった。火星のAKBファン1000万人の内から2万人のファンをモニタリングした情報で、デジタル観客を可視的に再現。その2万人分のホログラム相手に、曲やベシャリの反応をモニタリング。とくにベシャリはMCだけでなく、他のメンバーや観客との息の合方まで試した。ハンベに取り込んだ火星の時事ネタや、芸能界の情報まで、うまく絡めることができた。曲は30曲。『あ いたかった』から『永遠のAKB』まで、念入りにやった。特に心配した地球との感覚のズレは少なかった。というか、火星の若者たちの方が熱く、AKBを古典芸能バイブルとしてではなく。今の自分たちのエモーションとしてとらえていて、それだけ、ダイレクトに反応してくれることが分かった。
デジリハなので、圧縮し3時間の公演にもかかわらず30分で終わった。むろんミナコの自信があればこそであったが。
残りの本番まで、ミナコは開場待ちの観客の中に混じってみた。モニタリングのデジ観客ではなく、部分的にでも、今日の生の観客のエモーションを知っておきたかったのだ。
筋骨タクマシイ男たちのグループの中に入ってみた。ここは、他のグループと違ってガタイや風貌のわりに大人しい。
「お待たせしております。開場まで30分です。いましばらくお待ちください」
スタッフのユニホームを着たミナコは丁寧に声を掛けた。ハンベが「極フロンティアからの観客」と、教えてくれた。北極の開拓団の人たちだ。地球の40%の引力しかない火星なので、大気形成のためや、人間に適した環境を作るために、赤道周辺は地球と同じ重力にしてある。しかし、それ以外は40%の引力のままである。ここの重力は堪えるはずだ。
スタッフのユニホームを着たミナコは丁寧に声を掛けた。ハンベが「極フロンティアからの観客」と、教えてくれた。北極の開拓団の人たちだ。地球の40%の引力しかない火星なので、大気形成のためや、人間に適した環境を作るために、赤道周辺は地球と同じ重力にしてある。しかし、それ以外は40%の引力のままである。ここの重力は堪えるはずだ。
「重力疲れなさいませんか?」ミナコは聞いてみた。
「あんた、地球からきたアルバイトだろ」
「あ、はい」
バイトとは認めても、総合ディレクターだとは言えない。こんな小娘がオペレートしてるんじゃ、申し訳ないほど苦労して見に来てくれているんだ。
「極地は、確かに重力は、ここの40%だけどね、その分重労働に耐えている。日頃から200マースキロぐらいの重さのものを扱ってるんだ。並の赤道人よりは丈夫さ」
「いちおう、重力シンパサイザーはつけてきてるけどね」
「試しに、そこの車持ち上げてみようか」
「おい、よせ」
「あんた、地球からきたアルバイトだろ」
「あ、はい」
バイトとは認めても、総合ディレクターだとは言えない。こんな小娘がオペレートしてるんじゃ、申し訳ないほど苦労して見に来てくれているんだ。
「極地は、確かに重力は、ここの40%だけどね、その分重労働に耐えている。日頃から200マースキロぐらいの重さのものを扱ってるんだ。並の赤道人よりは丈夫さ」
「いちおう、重力シンパサイザーはつけてきてるけどね」
「試しに、そこの車持ち上げてみようか」
「おい、よせ」
年輩の仲間の言うことも聞かず、若者二人が、路駐している高そうなスポーツカーを持ち上げ、焼き鳥を焼くように、クルクルと回し始めた。スポーツカーとは言え、800マースキログラムはある。周囲の人たちが目を丸くしている。
「汚い手で、オレの車を触るんじゃない!」
前列の方から、いいとこのボッチャン風が駆け寄ってきた。
「ここは路上駐車は御法度だぜ、ニイチャン」
「ナンバーをよく見ろ、政府の公用車だぞ!」
ボッチャンが、鼻息を荒くした。
「公用車にスポーツタイプなんてのがあんのかい?」
「オレはな……」
ボッチャンは瞬間ハンベの個人情報の一部を解放した。
「これは、とんだVIPだ」
「あなた、国務長官の息子!?」
ミナコも驚いた。
「あ、ついムキになっちゃった。ま、そういうことだから……」
「待ちな、ボンボン。国務長官の息子だからって、路駐していいのかい」
「だから、公用車だって!」
「こんなガキのオモチャが公用車だなんて、ふざけんな!」
「なんだと!」
「ここは路上駐車は御法度だぜ、ニイチャン」
「ナンバーをよく見ろ、政府の公用車だぞ!」
ボッチャンが、鼻息を荒くした。
「公用車にスポーツタイプなんてのがあんのかい?」
「オレはな……」
ボッチャンは瞬間ハンベの個人情報の一部を解放した。
「これは、とんだVIPだ」
「あなた、国務長官の息子!?」
ミナコも驚いた。
「あ、ついムキになっちゃった。ま、そういうことだから……」
「待ちな、ボンボン。国務長官の息子だからって、路駐していいのかい」
「だから、公用車だって!」
「こんなガキのオモチャが公用車だなんて、ふざけんな!」
「なんだと!」
ボッチャンが、へっぴり腰でスゴムと、取り巻きの若者が7人ほどやってきた。
「この、北極の野蛮人に、キャピタルの礼儀を教えてやって!」
「こっちも教えてやらあ、赤道がヌクヌクしてられんのは、極地のお陰だってな!」
「あ、あの、みなさん……」
「こっちも教えてやらあ、赤道がヌクヌクしてられんのは、極地のお陰だってな!」
「あ、あの、みなさん……」
ミナコのか細い声など聞こえもしないで、もしくはシカトして、大乱闘になった。
これじゃ、ショーが……いいえ、コンサートがムチャクチャになる。
ミナコは切れた。
「いいかげんにしなさい、みんなAKBのファンなんでしょう!!」
その一言で、みんなが静かになった。あまりのインパクトにミナコ自身驚いた。
「そうだよ……おれ達、なにやってんだ?」
「そうだな、同じファンなんだ。オレ、車パーキングに持っていく」
その一言で、みんなが静かになった。あまりのインパクトにミナコ自身驚いた。
「そうだよ……おれ達、なにやってんだ?」
「そうだな、同じファンなんだ。オレ、車パーキングに持っていく」
ビックリするような素直さで、大乱闘は収まり、みんな大人しく列に戻り始めた。さすがにAKBの威力だと思った。
「あんた、似ている……」
極地組の年輩のおじさんが言った。ミナコは、あたりを振り向き、自分であると分かってドッキリした。
「あたしが……誰に?」
「あ、いや……その、名前は忘れたがAKBの選抜メンバーのだれかだったかに」
「あたしが……誰に?」
「あ、いや……その、名前は忘れたがAKBの選抜メンバーのだれかだったかに」
ミナコはいぶかった……AKBのメンバーは、選抜はおろか、研究生の全員まで知っている……ま、オジイチャンと言ってもいいくらいの年輩。きっと何かの思い違い。
「おっと、開場の時間だ」
「おっと、開場の時間だ」
ミナコは、開演にそなえ、オペレーションルームに急いだ……。