大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ライトノベルベスト『となりのアノコ・4』

2021-06-09 06:14:10 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『となりのアノコ・4』  


 

 ボクはよく夢をみるようになった。

 夢をみるということは、その間眠っているということだ。

 だから正確には、よく寝るようになったということだ。夜だけじゃない。昼間カップラーメンを作っているときとか、二階への階段をあがっている最中とか。

 カップラーメンのときは、伸びきったラーメンで分かる。階段のときは、しゃがみ込んだ何段目かで、窓からの陽が傾いて、無理な姿勢で身体が痛くなっているので分かる。

 夢は、外国にいる夢だ。

 社会科は苦手だけど、アメリカや大統領やロシアの大統領ぐらいは分かる。ついさっきは某国の国家主席に会っていた。会っていたといっても、いつも相手は眠っている。そこで、ボクは、ただ突っ立っているだけ。

 実に変な夢だ。
 
 レポートを仕上げなくっちゃ。通信制はラクチンと思っている人がいるかもしれないけど、けっこう家でやらなきゃならない課題やレポートがある。

 で、机に向かってシャーペンを持ったところで、また眠ってしまった。

 当然の如く夢を見る。

 あれ、ここは、ついさっき夢でみたどこかのホテルだ。

「何度もごめんね」

 後ろから声がした。振り向くと乃木坂の制服のアノコがいた。

「邪魔が入ったの。もう一回やり直し」

 ドアを開けると、さっきと同様に国家主席が寝ていた。気づくとボクは、アノコのスマホを持っていて、スマホのオレンジのアイコンを叩いていた。ちょっと手を緩めると、オレンジが赤っぽくなる。意味は分かっている。アノコの義体が限界に近くなっているんだ。アノコは習 近平の額に手をかざし汗を流しながら、念力を送っている。

「もうちょっとよ……」

 すると、急に国家主席が目を開き、ベッドから手を出したかと思うと、アノコが部屋の壁に吹き飛ばされた。

 ドオオオオオオオン!

「明……コードX!」

 ボクは、スマホを操作しXマークを出すとタッチした。

 爆発音と同時に、ボクたちは、アノコの部屋に戻った。

 アノコは仰向けに倒れていた……だけではなくて、制服の上からでも分かるこぶし大の穴が開いて、出血していた。

「おい、アノコ、大丈夫か!?」

「なわけないじゃない……」

「どうしたらいい?」

「…………」

「な、どうしたらいいんだ!?」

「明クンを拘束したくない……」

「言ってる場合か。義体ごと死んじまうぞ!」

「あたしと別れられなくなるわよ……いい?」

「いいよ、アノコが直るんなら、なんでもするよ」

「……じゃ、コードαにして」

 ボクは、スマホ画面をコードαにした。するとスマホが、ボクの手のひらに癒着したかと思うと、あっという間にボクの体の中に溶け込んでいった。

「あたしを……ゲホ!」

 アノコが大量の血を吐いた。どうしたらいいか、体内のスマホが命じてきた。ボクの奥に残っている理性と羞恥心が邪魔をしたが、ボクは指令に従った……。

 気づくと、アノコとボクは裸で抱き合っていた。もう血の跡もなければ、アノコの体に開いた穴も塞がっていた。

「ごめん、一線を越えちゃった……」

「いいよ、キミが元気になったんだから」

「明クンが思っている以上に大変なことなのよ……」

 そう言いながら、アノコは真新しい服を身につけ始めた。ボクも服を着た。

「アナライザーは、明クンと同化してしまった。コードαにするって、そういうことなの。これから、メンテや、あたしが致命的な傷を負ったときは、今みたいにしなくちゃいけないの」

「そ、そうなんだ……」

「で、生涯、あたしから離れられなく……逆ね、あたしが明クンから離れられなくなっちゃった……ごめんね」

「いいよ……ボクも、なんとなく、そんな気がしていたんだ」

「ありがとう、前任者は、そこまでの覚悟をしてくれる人がいなかったから、ハンパな仕事しかできなかった」

「あの……」

「うん?」

「キミの仕事って?」

 そう聞くとアノコの目が点になり、ズッコケてしまった……。





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