大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

宇宙戦艦三笠39[宇宙戦艦グリンハーヘン・1]

2023-03-02 08:53:38 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

39宇宙戦艦グリンハーヘン・1] 修一  

 

 

 虚無宇宙域ダルの正面はガラ空き。

 ……の、つもりだった。

 ワープし終わってもしばらくは分からなかった。

 それとの距離が50万キロという、宇宙単位では目と鼻の先になって知れた。


「正面50万キロに大型宇宙戦艦。ロックオンされている!」

 念のためCICに入っていたクルーがホッとして出ようとした時に砲術長の天音が叫んだ。

「取り舵一杯。右舷シールド展開。砲雷戦ヨーイ!」

 ドゴーーーン!!

 天音と樟葉が、操艦と砲雷戦の用意をし終えたころに、着弾があった。

「右舷装甲版、第四層まで破壊される。右舷舷側砲、全て損傷!」

「次の砲撃には耐えられない」

「そのまま旋回、左舷を敵に向けろ!」

 敵は、三笠が大破したことで一瞬の油断があった。旋回も舵の惰性だと思っている。

「光子砲、雷撃、テー!!」

「照準ができていない!」

「構わない、主砲、舷側砲、光子魚雷全て発射! 前進強速!」

 三笠の砲雷撃は、それでも半分が敵艦に命中したが、全て敵のシールドに阻まれた。機関もダメージを受けていて、10万キロ進んだところでダウンした。

―― 降伏を勧告する ――

 いきなりモニターに敵の艦長の姿が現れた。見かけは中一程度の女の子だったが、同時に送られてきた情報は、彼女がグリンヘルド、シュトルハーヘン両星連合タスクフォースの司令官であることを示していた。

―― 20年待った甲斐があったわ。狙い通り、ダル宇宙域に隠れていたんだ。わたしはタスクフォース司令のミネア。その船は破壊するが、あなたたちは助けます。ここまでやってきた努力はあなたたちの優秀さを示しています。地球支配の役に立ってもらいます。一分だけ待ちます。降伏か、戦死かを選びなさい ――


 トシが、メモをよこしてきた。


―― ワープ、敵艦に体当たり ――


 三笠の残存エネルギーは、さっきのワープと、今の攻撃を受け止めることに使われて完全にエンプティーのはずである。しかし、修一は、クローンのトシに賭けてみる気になった。ワープは通常機関を使わない。なにか目論見があっての事だろう。この三笠のクルーは、誰も地球支配のお先棒を担いでまで生き延びようとは思わない。その確信はあった。


「……分かった、降伏しよう。三笠の救命カプセルでは、そこまでたどりつけない。近くまで牽引してくれないか、ミネア司令」

―― 了解、賢明な選択ね。まず残っている主砲と舷側砲をロックして ――

「するまでもなく、あらかた破壊されてしまったけどね」

―― 余計なことは言わない。言われた通りにしなさい ――

「了解。美奈穂、オールウェポンロック」

 ガチャリ

 天音が、悔しそうな顔で、全装備をロックした。

 三笠は牽引ビームが来ると同時にワープした。修一とトシとの阿吽の呼吸である。

 牽引ビームとワープエネルギーの相乗効果で、三笠は、船そのものが巨大な弾丸になり、敵巨大戦艦の艦首にめり込んだ。

 半分消えかかった意識で、敵の艦首の銘板が読めた。

 グリンハーヘン……芸のない艦名だと思った。

 

☆ 主な登場人物

 修一(東郷修一)    横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉(秋野樟葉)    横須賀国際高校二年 航海長
 天音(山本天音)    横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ(秋山昭利)    横須賀国際高校一年 機関長
 レイマ姫        暗黒星団の王女 主計長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ
 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊
 クレア         ボイジャーが擬人化したもの
 ウレシコワ       遼寧=ワリヤーグの船霊
 こうちゃん       ろんりねすの星霊


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