RE・かの世界この世界
ああ、なんでも使ってくれ
グリ(タングリス)が鷹揚に返事をすると、小さな敬礼を返してこちらのゲペックカステンを開ける軍曹。
「なんだこりゃ、お菓子屋でもやるつもりなのか?」
「…………(゚ロ゚;)Σ(゚ロ゚#)」
焦るブリとケイトを尻目にタングリスは方頬に笑みを浮かべて、こう言った。
「シュタインドルフのヴァイゼンハオスの慰問を兼ねているんだ。ツ-ルはノルデンハーフェンで補給してもらうことになっている」
戦争でいろんなものを見てきたのだろう、軍曹はしみじみとした横顔で続ける。
「ヴァイゼンハオス……戦災孤児たちだな」
「ああ、仰々しい慰問じゃ、シスターたちもかえって困るだろうからな」
「なるほど、いや、停めてすまなかった。ツールは他の奴から借りるわ」
「せっかくだ、キャンディーなら一袋進呈するよ」
「いや、孤児の取り分をいただくわけにはいかないだろう」
「乗員用のがある。ブリ伍長、ポケットのを軍曹に渡せ」
「え? あ、イエスマム('◇')ゞ」
一瞬あっけにとられたが、素直に軍曹にくれてやる。
「じゃ、行ってくれ。停めてすまなかったな」
軍曹たちはキャンディーを口に放り込み、我々は前進を再開した。
ムヘンブルグの北には荒川ほどの川が流れていて流刑の島ムヘンを南北に分けている。川を渡って、そのまま北進すればノルデンハーフェンに至って船旅になる。
砲塔の中に貼ってある地図を見て予想がついていた。ブァルハラへの道は、まだ振りだしを一コマ進んだだけだ。
城塞の北方も必ずしも平穏ではないが、街道を走っている分には安全だろう。
あれ?
ところが、橋の手前で我々の二号は左に曲がったではないか。
「グリ、どこへ行くんだ?」
「軍曹にも言ったじゃないか、我々はシュタインドルフのヴァイゼンハオスに寄っていくんだ」
「え、マジか( ゚Д゚)!?」
ブリが目を剥く。
シュタインドルフは九十度方角が違う。道中の安全も保障されてはいない。
「方便とは言え、口にしたことです。向かわねばなりません」
「ぐぬぬ(>д<)」
ュンヒルデを抜かれたブリは、けっこう面白い。
そして、ハッチから垣間見える旅の空は行く末を暗示するかのように曇り始めてきた……。
☆ ステータス
- HP:250 MP:150 属性:剣士(テルキ) 弓兵(ケイト)
- 持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル
- 装備:トールソード 剣士の装備レベル1 トールボウ 弓兵の装備レベル1
☆ 主な登場人物
- テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
- ケイト(小山内健人) 今度の世界の照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトと変えられる
- ブリ ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
- タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係
- タングニョ-スト トール元帥の副官 タングリスと共にブリの世話係
- トール元帥 主神オーディンの将軍
- ペギー 峠の万屋
- 二宮冴子 二年生、不幸な事故で光子に殺される
- 中臣美空 三年生、セミロングの『かの世部』部長
- 志村時美 三年生、ポニテの『かの世部』副部長