大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

真凡プレジデント・23《これをやれば体育祭は盛り上がる!》

2021-03-16 06:52:53 | 小説3

レジデント・23

《これをやれば体育祭は盛り上がる!》  

 

 

 

 目立たない格好のつもりらしい。

 

「でしょでしょ(o^-^o)、番組で着てたおシャレなジャージだから、ちょっとだけね、スクールジャージみたく白線とかネームとか入ってないし、狸穴坂46とオソロだし、コンセプトは『書を捨てよ街に出よう』だから、パジャマ、部屋着、ちょっとした外出着にもなってえ、引きこもり応援グッズのベストワンだったしさ、自然に溶け込んで目立たないっしょ」

「喋ったら目立つ!」

 グイグイ引っ張って家に帰る道すがら、姉貴は陽気に言い訳ばかりしている。

 小さいころからのモテカワで、高校と大学のミスコンではずっと一等賞。女子アナになってからは、いっそう磨きがかかり某週刊誌で『恋人にしたい女子アナ!』のナンバーワンになった。いくらジャージ姿でも姉貴は目立つんだ。それに、いくらオシャレでもジャージはジャージ、狸穴坂46だって不振で解散してるし、理由はダサイアイドルだったし、落ちぶれ女子アナ宣伝してるようなもんだし、やっと世間は忘れかけてるっていうのに、ジャージ姿で買い食いなんてあり得ないんだよ!

「ねえ、これだけ買いに行かせてよ~」

 折り込み広告なんかヒラヒラさせんな、ちょ、顔に貼りつけんな!

「……大学芋?」

「そ、コロッケじゃないんだよ! 匂いもしないからさ、これだけ買いに行かせてよ! 行かせてよ真凡ちゃ~ん」

「ウウ……ダメだあ」

「ね、家に帰るまで食べたりしないからさ」

 立ち止まったのが中町公園の前、やっぱ、人がチラチラ見ている。これ以上ことを荒立てたくないわたしは「先に帰ってジッとしとくこと!」チラシをふんだくって商店街に舞い戻る。

 

 で、やっと宿敵の大学芋を買って戻ってみると、公園の一角に人だかり。

 

 買い物帰りのオバサンや、下校途中やらそうでないのやらのガキども、シルバー人材センターご指名の公園整備のお年寄り。

 でもって、その人だかりの真ん中には不肖の姉貴。だれが持ち込んだのかけん玉で賑わっている。

 とても、その輪の中に入っていく気にはなれずに木陰に隠れる。

――やっぱ、腰の入り方! 失敗してもフォームがお見事! 大勢でやると楽しさ倍増! これは延長戦か!? いま、ドキッとした? アハハ、笑顔でやらなくっちゃ何事も~ よーし、じゃ、つぎはみんなで駆けっこだ! 低学年の部と高学年の部と、それ以上に分けまーす!――

 職業柄かよくしゃべる。

 喋るだけじゃなくて、姉貴の喋りは場を盛り上げる。

 

 そーっと木陰から覗いてみると、みんな、姉貴よりもけん玉に夢中になり始めている。

 けん玉くらいで、こんなに人は熱狂はしないだろう。盛り上げたのはジャージの姉貴……。

 

 閃いた! これをやれば体育祭は盛り上がる!

 けん玉大会が終わるのを待って、ジャージ女を引っ張って家に帰る。

「ん? なんか、さっきまでの真凡と違くない?」

 わたしは、なんとか家に帰るまでは耐えるのだった。

 

☆ 主な登場人物

  •  田中 真凡(生徒会長)   ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
  •  福島 みずき(副会長)   真凡たちの一組とは反対の位置にある六組
  •  橘 なつき(会計)     入学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き 
  •  北白川 綾乃(書記)    モテカワ美少女の同級生 
  •  田中 美樹         真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、家でゴロゴロしている。
  •  柳沢 琢磨         対立候補だった ちょっとサイコパス 
  •  橘 健二           なつきの弟
  •  藤田先生          定年間近の生徒会顧問
  •  中谷先生          若い生徒会顧問

 

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 銀河太平記・035『リトル... | トップ | 魔法少女マヂカ・202『常... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小説3」カテゴリの最新記事