鳴かぬなら 信長転生記
御注進ーーーーーーーーーん!
念のために出しておいた物見がもどってきた。
「申し上げます。お屋形様ご指示の通り丑寅の方角を探ってまいりましたが、兵馬俑一万余は長城の手前二キロの地点で方角を変えて東進しております」
「馬の脚は?」
「はい、半ば以上は歩兵でありますので、並足であります」
「時速5、6キロというところか。歩兵が半ば以上ならいつまでも出せる速度ではない、途中で休憩を入れる……とすると、一時間後の敵の位置は……」
砂上に地図を広げさせて、兵馬俑どもの動きを予想する。
上杉の最精鋭とは言え、たかだかニ十騎。
正面からの攻撃はあり得ない……と、敵も味方も思っている。
情報から敵の一時間後の位置を推定、トンと石を置き、東西南北から石に向かって矢印を入れる。
「二時間後、四方から同時に仕掛ける。仕掛けると言っても、それぞれ五騎。深入りはせずに、敵がうるさく感じたところで散る。敵が脚を止めたら再び仕掛ける。中軍が緩んだところで川中島を仕掛ける」
地図を囲んだ中からウサ耳の宇佐美定満が顔を上げる。
「引き際は、どうなさいます?」
「三時間後、事の進捗に関わらずひいて長城の破れから扶桑に引き上げてちょうだい。目的はあくまでも……」
「信長殿への愛ですね」
「あのね、いくら『愛』がトレードマークだからって、なんでも愛でしめくくらないでよね、愛ちゃん」
「はい、承知しています。兵馬俑の注意をひいて信長……三蔵法師さま御一行の安全を図ること」
そう言うと愛ちゃんこと直江兼続は愛の前立ての付いた兜をかぶり直し、それが合図だったように、宇佐美定光はウサ耳を立て直し、柿崎景家は柿、甘糟景持は雨傘の兜の緒を締めて馬に乗った。
「それじゃ、時計の時間を合わせるわよ。他の人もいっしょよ!」
二十騎全員が腕時計を見る。
ザザ
全員美少女化しているのに、時計は男のように左手首の外側。
内側に付けているのは自分一人、まあいいけどね。
時計そのものは全員電波時計なので、時間を合わせる意味はないんだけど、真珠湾攻撃の時、赤城艦上で搭乗員は一斉に時計を合わせて出撃したって、去年転生した攻撃隊長が言っていたのであやかっている。
「五秒前……4……3……2……1……テーッ!」
カチ!
一つ一つは幽けき音だけど二十人がいっせいにやると迫力。
あとは無言で馬腹を蹴って、五騎づつ四方に散った。
☆彡 主な登場人物
- 織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
- 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
- 織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
- 平手 美姫 信長のクラス担任
- 武田 信玄 同級生
- 上杉 謙信 同級生 配下に上杉四天王(直江兼続・柿崎景家・宇佐美定満・甘粕景持 )
- 古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
- 宮本 武蔵 孤高の剣聖
- 二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
- 雑賀 孫一 クラスメート
- 松平 元康 クラスメート 後の徳川家康
- リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
- 今川 義元 学院生徒会長
- 坂本 乙女 学園生徒会長
- 曹茶姫 魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
- 諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
- 大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
- 孫権 呉王孫策の弟 大橋の義弟
- 天照大神 御山の御祭神 弟に素戔嗚 部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主