越前若狭の民話から
永平寺の豆太鼓
昔、意地の悪い姑と、おとなしく素直な嫁さんがおりました。
嫁さんのする事は、何をやっても気に入らず、ことあるごとに嫁に辛く当たって、この姑の意地悪さは例えようもないほどでした。
ある日嫁さんが畑に豆蒔きに行くことを知った姑は、こっそりと豆を生炒りにしておいて、嫁さんが出掛ける時にその豆を渡しました。
嫁さんは、炒り豆だと知っていましたが、お母さんに文句一つ言えませんので、だまって毎日せっせと豆蒔きをしました。
でも、豆は一粒も芽を出しません。
「お前の蒔き方が悪いから、一つも芽が出んではないか!」と
姑は毎日意地悪く嫁さんをののしっておりました。
幾日かたったある朝、一粒だけ芽を出した豆がありました。きっと、一粒でもよいから芽を出しておくれと、願って蒔いた嫁さんの気持ちが通じたのでしょう。
その豆はみるみる成長していきました。そして、見上げるような大木になって、数え切れないほどに豆がなりました。
これを見た姑は、すっかり心を入れ替えて嫁いびりをしなくなり、二人仲良く暮らすようになりました。
そして、その豆の木の幹を切って太鼓を作り、永平寺に寄進したそうです。
その太鼓は、今でも永平寺の豆太鼓として寺宝になっている、とのことです。