(イノベーションのジレンマ(クリステンセン))
クリステンセン氏の説く「イノベーションのジレンマ」のメカニズムは、簡単に示すと以下のようなものです。
(p18より引用) 製品の性能が市場の需要を追い抜く現象が、製品のライフサイクルの段階を移行させる最大のメカニズムであると考える。
企業は、競争力の高い製品を開発し優位に立とうとするために、急速に上位市場へと移行しており、高性能、高利益率の市場をめざして競争するうちに、当初の顧客の需要を満たしすぎてしまったことに気づかないことが多い。そのため、低価格の分野に空白が生じ、破壊的技術を採用した競争相手が入り込む余地ができる。
破壊的イノベーションは、自分が所属しているマーケット(バリュー・ネットワーク)において0「ゼロ」から生まれてくるものではないようです。別のバリュー・ネットワーク(通常は、よりベーシックなマーケット)で生まれ育ちます。
優良企業たるもの、そのイノベーションの動向は、きちんと感知しているのです。そして、それに対応する(同様の技術を習得する)準備も怠り無く実施します。そして、顧客の声も聞きます。
が、ここが重要なポイントになるのです。
顧客は現状の技術トレンド上の製品に満足しています。当然、現時点ではまだ何のメリットもない新技術を活用した新たな製品を評価しません。
そのため、顧客の声に忠実な既存主要企業では、新たな技術への投資よりも、既存技術の充実にリソースを集中するのです。
そのうち、別のバリュー・ネットワークでの技術が、上位のバリュー・ネットワークのマーケット(すなわち、自社が拠って立っている市場)の顧客が許容する水準の機能及び価格で参入してきます。
この過程で、この別のバリュー・ネットワーク内の技術が「破壊的イノベーション」に変身するのです。破壊的イノベーションといっても、それは画期的な新発明といったとびきりピカピカのものとは限りません。
当該技術が適応する別のマーケットでじわじわと力を蓄え、そこで磨かれたものが、満を持して上位マーケットに攻め込んでくるのです。
(p108より引用) 実績ある企業は、いつも新しい技術を確立された市場に押し込もうとするが、成功する新規参入企業は、新しい技術が評価される新しい市場を見つける。・・・
新規参入企業は、まず、当時の新技術の能力に見合った市場を見つけ、その市場で設計と製造の経験を積み、その商業的基盤を利用して上位のバリュー・ネットワークを攻撃した。この競争で、実績ある企業は負けた。