雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

読書紹介「暴雪圏」佐々木譲著 新潮文庫2011刊

2014-12-21 23:34:32 | 読書案内

  今日の天気予報では北海道はじめ日本海側でここ数日、「暴風雪・大雪」が予測され、警戒が必要と注意を呼び掛けているようです。この、爆弾低気圧の影響で、死傷者が出ていると報道は伝えています。雪国生まれの人でなければ、雪と風が混然となって襲ってくる時の不安は理解できないのでしょう。車は動かず、視界も遮られ、やがて寒きと恐怖が襲ってくる。

 除雪車も動かない、パトカーも救急車も出動できない最悪の気象条件の中で、事件は進行し、孤独な駐在警官が事件と対峙する。数年前に読んだ小説「暴雪圏」の内容が思い出される。

 暴雪圏」

 冒頭から読者を捉えて離さない。

季節外れの風と雪が北海道東部の釧路地方の寒村を襲う。

三月彼岸の頃に襲来する嵐は、

『厳寒期とは違い、湿った重い雪が大地に吹き荒れる』。

幹線道路の交通は完全にマヒし、途絶してしまう。

北海道東部・釧路方面志茂別(しもべつ)駐在所の駐在員川久保篤は

一本の電話を受ける。

「赤っぽい上着が、雪の下から出ている」。

住民からの通報である。

事故か、事件か雪と風が強くなる中、

吹きだまりの深い雪の中を現場に到着した川久保が目にしたものは、

一部白骨化した女の変死体。

全ての始まりである。

 

 同時刻ごろ組長の家に強盗に入り、組長夫人を射殺し逃亡する二人の男。

会社の金庫から2000万円を奪い逃走する会社員は、がんの宣告を受け余命いくばくもない。

義父の魔手から逃げてきた少女・美幸。

不倫関係を清算するために家を飛び出した明美。

 5人の人物が錯綜し、荒れ狂う「暴雪」の中を一点に向かって移動していく。

  刻々と激しさを増す雪と風、湿った雪が凍りつき、道路は白い闇の中で封鎖される。

 

 それぞれが抱えた心の闇は深く、

一刻も早くこの町を抜け出したいと思うが、

これを阻止するように猛吹雪がこの町を呑み込んでいき、

吹きだまりに寄せ集められるように、

町はずれの小さなペンションに吸い寄せられていく。

 

 錯綜する情報の中、本庁からの応援は来ない、

孤立無援の駐在の警察官・川久保篤は

暴雪、暴風の中をどのように事件と向きあい、

警察官としての使命を果たすのか……

 

          暴雪、暴風の描写が臨場感にあふれ、

          一気に小説の世界にとらわれてしまう。

         北海道生まれの、北海道在住の作家にしか書けない小説です。

         警察官・川久保篤の孤独と責任感に共感し、

         ノンストップで読ませてしまう。

         刑事ではなく、警察官の視点で描かれるところに、

         一味違う警察小説になっている。

        駐在警官・川久保篤シリーズの二作目にあたり、

        前作は「制服警官」。

    ほかに「警官の血」

    (親子三代にわたる警官がテーマ)などもお勧めの作品。

     私の好みとしていずれの作品も少し内容が暗いところが難点です。でも、読む価値は十分にあります。

                                     (2011.12.18のブログより転載) 

 

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