児童虐待なぜ増加する
児童相談所対応最多 12.2万件
全国の児童相談所が2016年度に対応した児童虐待の件数は12万2578件で、
前年度より1万9292件(18.7%)増えている。(朝日新聞8/17夕刊)
統計を取り始めた90年度から26年連続で過去最多を記録している。
これは重大な社会現象ではないか。
法改正があって、一般の私たちにも虐待を見つけたら通告の義務が生じたこと。
人権や児童福祉の関心が高まり虐待への関心が高まったことなどが、
増加率を高めている一因だと言われています。
しかし、26年連続過去最多の記録を更新するほどの増加率は異常です。
社会そのものの在り方が正常な生き方ができないほど、
軋(きし)みを立ててゆがみ始まっているのではないか。
虐待の内容
心理的虐待……6万3,187件(+1万4,487)
暴言や脅しなどで面前DVも含む
身体的虐待……3万1,927件(+3,306)
ネグレクト……2万5,842件(+1,398)
性的虐待 ……1,622件(+101)
(面前DV:ドメスティック・バイオレンスの中でも、
親が子どもの目の前で配偶者や親族らに暴力を振るうこと。
児童への心理的虐待として認知されている)
こうして見ると心理的虐待が全体の51.5%を占めている。
これは面前DVを心理的虐待に含んだことによる増加と理解することもできます。
どうしてこんなに児童虐待が増加していくのか。
児童が健全に育つ社会環境が育たない社会に希望は持てません。
児童虐待が増えていく原因には、さまざまな要因が考えられるが、
一つには家族の養育機能の低下を挙げることができるでしょう。
大家族制度が崩壊し、核家族化が増えたことも原因の一つです。
具体的には次のようなことが考えられます。
●妊娠先行結婚(出来ちゃった婚)の増加とその離婚率の高さ
●10代の母親の出産の増加
●全般的な離婚率の上昇
●若い母親と幼児からなる若年母子家庭の増加
●母子家庭の貧困率の高さ
動機について考えてみましょう。(複数回答)
保護を怠った。(ネグレクト)
しつけのつもり。
子どもの存在の拒否・否定。
泣きやまないことへのいらだち。
このような動機を持つに至った遠因として
「予期しない妊娠だった」ことを挙げた母親が34.6%にも上っていることは、大きな問題です。
社会の仕組みからこぼれてしまう人を、
「自己責任」という概念で見捨ててしまえば、
この社会はますます衰退していってしまうでしょう。
こぼれてしまう人を救う手立てや仕組みが必要かと思います。
児童虐待専門委員会の委員は、
「予期しない妊娠による虐待死が多く、妊娠期から切れ目のない支援が必要」と指摘する。
現在このような支援システムは存在しません。
起きてしまった事例について支援のシステムは作りやすいが、
起きていないことについての支援策(予防措置)の構築は非常難しい。
(昨日の風 今日の風№75) (2017.8.22記) (つづく)
次回は「里親」の制度について述べます。