雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

読書案内「長いお別れ」 ① 恍惚の人…

2018-06-12 08:30:00 | 読書案内

読書案内「長いお別れ」中島京子著 ①
    記憶を失い、壊れていく父の姿を通して、人間を描く
       

内容紹介(ブックデータベースを参考)
 帰り道は忘れても、難読漢字はすらすらわかる。
妻の名前を言えなくても、顔を見れば、安心しきった顔をする――。

東家の大黒柱、東昇平はかつて区立中学の校長や公立図書館の館長をつとめたが、
十年ほど前から認知症を患っている。
長年連れ添った妻・曜子とふたり暮らし、娘が三人。孫もいる。

“少しずつ記憶をなくして、ゆっくりゆっくり遠ざかって行く”といわれる認知症。
迷子になって遊園地へまよいこむ、
入れ歯の頻繁な紛失と、その入れ歯が予想もしなかった場所から発見される。
記憶の混濁--日々起きる不測の事態に右往左往する家族の姿を通じて、
終末のひとつの幸福が描き出される。
認知症の昇平の介護を巡る家族たちの温かくて少し切ない10年の日々を描く。

恍惚の人
 (新潮文庫)
まだ認知症とかアルツハイマーなどという言葉がなかったとき、
徐々に襲ってくる高齢化社会で、「ボケ」というような言葉が使われていた。
1972(平成47)年、有吉佐和子の『恍惚の人』がベストセラーになった。
自分が誰であるかもわからなくなり、人間としての尊厳も徐々に失われていく。
「恍惚の人」、いわゆる認知症であるが、当時はこの病に関する情報も知識も全くなかった様に思う。現在に比べれば当時の福祉制度もお粗末なものだった。ボケも介護も社会問題という視点で語られることはなく、一家庭の問題として自助努力にゆだねられていたから、時によっては家族を巻き込み家族の人生をも壊してしまう現象であった。

 長寿はめでたいことだと思った多くの人たちは、認知症の当事者も含め、思いもしなかった家族の不幸をもたらす現象に皆が唖然とさせられた。そんな時代があったのだ。
                                                                                                              (つづく)
      (次回「長いお別れ」の内容を紹介します)

                       (読書案内№123-1)  (2018.06.08記)

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