読書案内「ファントム・ピークス」北林一光
プロローグから読者を引きつけ、捉えて離さない。
三井杳子(ようこ)が消息を絶ったのは、秋の木漏れ陽が降り注ぐ長野県南安曇郡堀金村
(現・安曇野市堀金)烏川支流二の沢付近。
『茂みの中から何かが躍り出た。…悲鳴も出なかった。杳子は驚愕と恐怖の表情をその顔に張り付けたまま、自分の死を覚悟した』。
半年後、杳子の頭蓋骨が発見された。
二の沢とは別の本沢で発見されたのはなぜか?
安曇野に聳え立つ常念岳と蝶ケ岳への登山道があり、
烏川渓谷の谷が続く深い山の中が舞台になっている。
(余談だがここは、私の好きな場所でもある。)
木谷茜が姿を消したのは、同じ山系に架かる橋の上であった。
愛用のカメラを残し、恋人が眼を離したわずかな隙に、
忽然と消えてしまった。
この失踪事件の次の日、
新井深雪が、烏川林道で六歳の娘千尋(ちひろ)と姿を消す。
豪雨の中発見された少女は、恐怖におののき言葉を忘れたように寡黙になってしまう。
後日、発見されたのは、
杳子をはじめ、茜、深雪とも身体の一部だけだった。
ファントム・ピークス(幻の山)に潜む不可解な謎は一向に見えてこない……
(ここまでが前半、後半事件の全容が明らかになり、緊張感が高まる)
角川文庫・2010年初版刊
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