読書案内「喜びは悲しみのあとに」上原 隆著 (5)
一生懸命生きて
悲しみのあとに喜びは訪れるのか。
努力が報われる日が訪れることを願いながら読んだ。
キャッチセールス
渋谷駅ハチ公前のスクランブル交差点。行く人々と帰る人々が接近し、交差する。
交差点を渡る人の数は一日平均約27万人。その多くが若者だ。
出原ひとし。23歳。
多くの人々が渦を巻くようにして行き交う。
信号が変わるたびに砂浜に押し寄せる波のように
どっと押し寄せ、信号が変われば人の波は引いていく。
この路上が彼の職場だ。
職業。
キャッチセールス。
完全歩合制だ。
客が取れなければ収入はゼロだ。
女性に声をかけ、アンケートに答えてくださいと言って、ビルに連れていき、女性のカウンセラーのいるカウンターに座らせる。カウンセラーはアンケートを取りながら、美容の話をして、化粧品や美顔器などを売りつける。
商品は25万円から50万円で、契約金の約7%が彼の取り分となる。
25万円で1万7千円、50万円で3万5千円ぐらいになる。
行き交う女性に手当たり次第に声をかけても、本契約に持ち込めるのは2人程度だ。
もちろんゼロなんていう日もある。
声をかけた女性から、「ウッセンダヨ。バカヤロー」という声が返ってくることも少なくない。
でも彼はくじけない。
声をかけて掛けまくる。
結構いい収入になるが、稼いだ金のほとんどは飲み代に消えていく。
「キャッチセールスの仕事好き?」と問われ彼は答える。「嫌いですよ。でも僕みたいな中卒が今ぐらい稼げるとしたら、こういう仕事しかないんです」
何の保証もなく、社会の底辺で生きる彼らは、元気よく夜の街に散っていく。
その後ろ姿を想像しながら、この本を読み終えた私は、
登場するすべての人に「頑張れ」といつの間にかエールを送っていた。
最後にこの本の題名のもとになった、キャロル・キングの詞を紹介します。
(略) 辛い過去を話してくれた友だちが
こういったよ
「人生でやらねばならないことなんて
案外いいま、やっていることだったりするのさ」
ね、あなたは暗くならないで
いまはつらいだろうけど
みんなそうしている、あなたも大丈夫
これ知ってればくじけないよ
もう、わかったでしょう
喜びは悲しみのあとにかならずやってくる
5回にわたるシリーズを最後まで読んでいただきありがとうございました。
(2017.9.6記) (読書案内№107)
(おわり)
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