読書案内「電池が切れるまで」
子ども病院からのメッセージ①
すずらんの会編 角川文庫 2006.6初版
15年も前に単行本で発刊され、当時ベストセラーになった本の文庫版。
当時、福祉系の仕事の責任者をしていた私は、職場で購入しスタッフに薦めた。
改めて文庫版で読んでみたが、当時の感動が少しも色あせずに残っていたことに感動。
それはきっとこの本が、小さな子供たちが病気と闘う「命」に、真剣に向き合い、
決して希望を捨てずに、辛い手術やリハビリに挑む姿が、子どもたちの詩や文章に
生き生きと描かれているからに違いない。
子どもたちの命の鼓動が聞こえる
長野県・安曇野(旧豊科)ICを降りて南に向かって12~3分走ると、赤いとんがり帽子の屋根の建物が見えてきます。長野県立こども病院です。
西に雪をかぶった常念岳を背負ったメルヘンチックな建物です。
訪れた17日、関東育ちの私に風は冷たく、枯葉がベンチの周りを舞っていましたが、
入院病棟の窓の中から、あたたかな灯りがこぼれ、
ちらちらと子どもたちが動く姿が垣間見えました。
発刊当時テレビドラマ化され話題になったこの子ども病院を訪れたのは2度目です。
「読書案内」を書く前にもう一度行ってみたい。
詩や文章から伝わる感動を五感で感じたいと思ったからです。
子どもたちにとって、「命と闘う治療」は不安と辛さを伴うものです。
それを支えているのは、第一に子どもたちの「命」に向き合う一途な気持ちと、
子どもを支える家族であり、医師であり、看護師であり、
院内学級の教師の「命の尊厳」への絶えざるアプローチがあるから、
やさしさがあるから子どもたちは希望を見失うことなく、
辛い現実に立ち向かっていくことができるのだろう。
そうした子供たちの一人・宮越由貴奈(小学4年)ちゃんの詩を紹介します。
命
命はとても大切だ
人間が生きるための電池みたいだ
でも電池はいつか切れる
命もいつかはなくなる
電池はすぐに取り換えられるけど
命はそう簡単にとりかえられない
何年も何年も
月日がたってやっと
神様から与えられるものだ
命がないと人間は生きられない
でも
「命なんかいらない。」
と言って
命をむだにする人もいる
まだたくさん命がつかえるのに
そんな人を見ると悲しくなる
命は休むことなく働いているのに
だから 私は命が疲れたと言うまで
せいいっぱい生きよう
全文を紹介しました。
この詩は由貴奈ちゃんの遺作になってしまいました。
命と闘った由貴奈ちゃんのご冥福を祈ります。
(2017.11.22記) (読書案内№114) (つづく)
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かなしいような、清らかなような、強いような
伝えたい詩です
転載大歓迎です。
由貴奈ちゃんの詩を読んで、「命」について多くの人が考える契機になれば幸いです。
残念なことに、由貴奈ちゃんは、闘病のかいなく逝ってしまいましたが、「命」の詩の中に由貴奈ちゃんの気持ちがしっかり生かされているということでしょうか。
死は終わりではなく、一つの区切りにすぎないと私は思っています。
亜母さん、どうぞご自愛ください。