雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

読書紹介「世界地図の下書き」

2016-07-08 22:28:40 | 読書案内

読書紹介「世界地図の下書き」
             朝井リョウ著 2013.7 第一刷発行
             
2009年「桐島、部活やめるってよ」がデビュー作(第22回小説スバル新人賞受賞)。
                本作品は第29回坪田譲治文学賞受賞作
 

  事故で両親を失い、「青葉おひさまの家」で暮らす小学生の太輔。
はじめは心を閉ざしていたが、同じ部屋の仲間たちのおかげで打ち解けていく。
施設を卒業する佐緒里のため、4人の子どもたちは、
「蛍祭り」を復活させようと、作戦を立てはじめる……。
カバーイラストはスタジオジブリの近藤勝也氏による描き下ろし。(ブックデーターより引用) 
集英社 1470円(税込)
  
 子どもは成長し、やがてそれぞれの人生を歩むことにより、自立への第一歩を踏み出していく。
  児童養護施設。
  この施設で暮らす子どもたち。
  親と共に暮らせない様々の理由を持った子どもたち。
  両親の離婚に伴い居場所を失った子ども、貧困家庭、親の育児放棄、虐待等々。
  
  小説の舞台「青葉おひさまの家」にも、
  子どもにはとても抱えきれない問題を背負わされた子どもたちが暮らしている。
  彼らを取りまく家庭環境の不適さゆえに、
精神的に不安定で、問題行動を起こす子どもも少なくない。

  かって児童養護施設に関わっていた私には、ここに登場する子どもたちが、健全さを失わず
  前向きに生きる姿に現実の児童養護施設とのギャップに違和感を覚えた。

  現実の施設では、子どもたちの問題行動に職員が余裕を失い苦しむ場面も多々ある。

  だがこれは、あくまでもフィクションで構成された物語だ。
  子どもたちは様々な問題をかかえながら、
  ひとつひとつ解決していこうという前向きの生き方を失わずに成長していく。

  逆境の中でくじけずに生きようとする子どもたちは
  
希望を持って生きていく。
  思い思いの地図を希望の色で塗りつぶしていく。
  大人になるための試練の地図、「世界地図の下書き」は
  子どもたちの貴重な経験で彩られていく。
        評価☆☆☆☆
                              (2016.7.8記)


 


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