雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

児童文学 「ビルマの竪琴」に見る水島上等兵の気持ち(2)

2016-08-07 11:39:19 | 読書案内

児童文学 「ビルマの竪琴」に見る水島上等兵の気持ち(2) 

日本へ帰れるぞ! 一緒に帰ろう!

  これからお話しするのは、
ビルマという熱帯の国で終戦を迎え、
からくも生き残ったある日本兵・水島上等兵の物語の、さわりの部分です。
1945年、長く続いた太平洋戦争は終わり、
日本は敗戦国になった。
 
 多くの兵隊が現地に残り、捕虜となった。
水島上等兵は、隊長の命令で、降伏しようとしない日本兵の説得に向かいます。
だが、その後いつまでたっても、水島は戻らなかった。

 そんなある日、部隊の前に、水島そっくりのビルマ僧があらわれました……。
黄色い衣を着た、まだ若い僧でした。
手には托鉢のための器を持ち、肩には、目の覚めるような緑のオウムが止まっています。

 「あっ、あれは水島ではないか」
 「水島上等兵
!
 「水島上等兵
!
 「おい、水島
!水島だろう」

 皆が声を掛けましたが、
この水島に似たビルマ僧は、何も答えず、
捕虜になった兵隊たちの前を両手を合わせ、
無言で、
うつむき加減に通りすぎて行きました。

 夏も終わり近くなったある日のこと。
一人の兵隊が、息を切らしながら、走ってきて言いました。

「日本へ帰れるぞ
!命令が出たんだ。出発は三日後だ!

 夢にまで見た祖国日本に帰れるのです。
みんなは、手を取り合って喜びました。

 「あれほど、帰りたかった日本に、やっと帰れる」。

 肩を抱き合い、
生きて帰れることをみんなで喜び合いました。
その時、兵士のひとりが思い出したように言いました。


「そうだ、あの水島に似たお坊さんがもし水島上等兵だったら、一緒に日本に帰れるのに」

 しかし、連絡の方法もなく瞬く間に、
2日間が過ぎてしまいました。
明日には日本に帰る船が出る。

水島にはもう会えないのだろうか。

 その日の夕方です。
「あの坊さんが柵の外にいる」誰かが叫びました。
それは、あの日確かに橋ですれ違ったお坊さんでした。

「水島―っ」 
誰かが叫ぶと、他の兵隊たちも思い思いに叫びました。

「水島
!我々は明日、日本へ帰るぞぉー」
「一緒に帰ろう」                       
            (2016.8.4記)           つづく

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 読書紹介「ビルマの竪琴」に... | トップ | 児童文学 「ビルマの竪琴」... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書案内」カテゴリの最新記事