読書案内「ところであなたは…?」
やなせたかし 詩・絵 三心堂出版社 1999年4月刊
…ぼくの人生は |
誰でもご存じのように、やなせ たかし氏は「それいけ!アンパンマン」の作者である。
アンパンマンは、お腹のすいている人がいると
自分の顔を食べさせてしまう優しいキャラクターだが、
弱い者いじめをするものには敢然と立ち向かう正義の人でもある。
その作者が紡ぎ出す詩と絵はほのぼのとして優しい(残念ながら絵を紹介することができません)。
表紙の絵:
部屋のドアをあけると暗い室内に光が差し込み、
その光に照らされた石畳。分厚い本が一冊転がっている。
壁には絵が掛けてあるが何を書いた絵なのか薄暗くてわからない。
部屋の外でまんまる顔をした人が帽子を振って挨拶をしている。
おそらく月の光が部屋に差し込み、帽子を振っている人を白く浮き上がらせている。
部屋に差し込む光も帽子を振る人も青白い光に照射されている。
だが、その向こうの背後は真っ暗だ。
優しい雰囲気が漂っているけれど、同時にどこかに寂しさも漂っている不思議な絵だ。
あてどなく彷徨う心の行方を表現し、最後の一行は、
ところであなたは…?
と、読者本人に問いかけて来る。
冒頭の一編を紹介しよう。
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ところであなたは……と最期に問いかけられて、
私は自分の人生の来し方、行く末を思った。
通りすぎたいくつかの駅には、
重い荷物を降ろし
新しい荷物を背負いなおし、
駅路の分かれ道を
目的地も定めずに歩んできた時もあった。
そして、たくさんの大切なあなたに逢うことができたから
思い出と一緒にターミナルに向かって歩んで行きたい。
(2018.7.3記) (読書案内№125)
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