雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

 読書案内「ところであなたは…?」

2018-07-05 23:19:23 | 読書案内

読書案内「ところであなたは…?」
           やなせたかし 詩・絵 三心堂出版社 1999年4月刊

     …ぼくの人生は
   あとどのくらい残っているのだろう
   そう思うときがある
   たっぷりあるような気もするし
   ほんの少しのような気もする
   ところであなたは…。
            (ブックデータより)                               

 
   誰でもご存じのように、やなせ たかし氏は「それいけ!アンパンマン」の作者である。
  アンパンマンは、お腹のすいている人がいると
  自分の顔を食べさせてしまう優しいキャラクターだが、
  弱い者いじめをするものには敢然と立ち向かう正義の人でもある。
  その作者が紡ぎ出す詩と絵はほのぼのとして優しい(残念ながら絵を紹介することができません)。

  表紙の絵:
       部屋のドアをあけると暗い室内に光が差し込み、

       その光に照らされた石畳。分厚い本が一冊転がっている。
       壁には絵が掛けてあるが何を書いた絵なのか薄暗くてわからない。        
       部屋の外でまんまる顔をした人が帽子を振って挨拶をしている。
       おそらく月の光が部屋に差し込み、帽子を振っている人を白く浮き上がらせている。
       部屋に差し込む光も帽子を振る人も青白い光に照射されている。
       だが、その向こうの背後は真っ暗だ。
       
                  優しい雰囲気が漂っているけれど、同時にどこかに寂しさも漂っている不思議な絵だ。
      あてどなく彷徨う心の行方を表現し、最後の一行は、
      ところであなたは…?
      と、読者本人に問いかけて来る。
      冒頭の一編を紹介しよう。 

  

     ひとはみんな泣き叫びながら生まれる
   絶叫する
   この世の汚濁と人生の苦痛を予感するのか
   ホモサピエンス
   そして
   よろこびと
   悲しみと
       後悔と希望と
       愛の
       片道切符をにぎりしめて
       不安な旅を続ける
       いつのまにか
       通りすぎたいくつかの駅
       しかしほんの一秒も
       停止することはできなかった
       なにがなんだかわからないまま
       もうターミナルが近づいてきた
       でも あなたに逢えたから
       決して愚痴はこぼさない
       ところであなたは……。

    ところであなたは……と最期に問いかけられて、
   私は自分の人生の来し方、行く末を思った。
   通りすぎたいくつかの駅には、
   重い荷物を降ろし 
   新しい荷物を背負いなおし、
   駅路の分かれ道を
   目的地も定めずに歩んできた時もあった。 

   そして、たくさんの大切なあなたに逢うことができたから
   思い出と一緒にターミナルに向かって歩んで行きたい。 

                  (2018.7.3記)     (読書案内№125)




















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