パパママおねがいゆるして ⑤
児童相談所を取り巻く環境
前回は児童相談所に関する、設置基準を茨城県の児童相談所を例にとって解説しました。
また、児童虐待が報道を通じて注目される時、
多くの報道は児童相談所(児相)の責任追及に終始し、
児相を取り巻く環境の不備についての報道が少なく、
小さな命を守るために、
何をしたらいいのかということに触れた記事が少ないことにも触れてみました。
今回は、毎日新聞(6/18)社説を紹介しながら、
児相を取り巻く環境について述べたいと思います。
【毎日新聞社説】 児童虐待の緊急対策 専門職の大増員が必要だ
現在の体制では増え続ける虐待に対応するのは困難だ。 |
2015度に虐待で命を落とした子ども52人。
この中には児相が関わりを持ちながらケースも多く、抜本的な改善策が必要だ。
虐待をした親が児相から逃れるために別の地域へ転居することは珍しくない。 |
社説の中では、詳細な事件の内容にも触れている。
神奈川県の児相と品川児相では明らかに受け止め方が違っている。
送る方は『緊急性の高いケース』として引き継ぎ、
受けた方は『そのような説明はなかった』と主張している。
双方の言い分が対立している以上、徹底した検証が必要と思うが、
互いのメンツがあるために、
うやむやにされてしまっては結愛ちゃんの御霊に申し訳ない。
16年度に全国210ヵ所の児相で対応した虐待は12万件を超える。
10年で3倍以上になる件数だ。
国や自治体は児童福祉司の増員を図ってきたが、
16年度は約3000人で、10年前の1・5倍程度に過ぎない。
この数字を全国210カ所の児相に当てはめると、一カ所の児相で約14人になる。
3000人で12万件の虐待のケースを担当すると、
一人の児童福祉司で40件のケースを担当しなければならない。
更に、児童福祉司の仕事には一時保護や施設等に措置入所させた児童の継続支援
電話相談、窓口相談など多岐に渡る仕事の量があり、
一人の児童福祉司で受け持つケースが100件になることも珍しくない。
この記事をアップするためにある地方都市の児相に電話で問い合わせをしてみた。
対応に出た職員は、「一人が抱えるケースが多いことは確かです」と、
具体的な数字を言わなかったが、ある児童福祉司は100件を超える場合もありますと
教えてくれた。
政府は19年度までに550人の児童福祉司の増員を計画 |
だが………
それでも虐待の急増には追いつかない。 |
実務を担うためには経験を積んだ職員が必要だが、児相の現場では勤務経験が3年未満の職員が4割を占めるといわれる。 |
児相の取り組み
高知県 2008年 から県警との情報共有を行っている。
愛知県 2018.4から
茨城県 2018.1から
児童相談所が把握した虐待案件について保護者と子供の氏名などを幅広く警察に提供し、
情報共有する取り組みをスタート。
小池百合子東京都知事の対応
6月8日の定例会見冒頭で、小池東京都知事は児童相談体制のさらなる強化を図りたい意向を表明。
<関係局に児童福祉司、児童心理司、そして保護所の職員の増員>による児童相談所体制の強化、
<夜間、休日の相談体制など、24時間365日子供を見守る体制>の強化、
<法的対応力>の強化、<地域でのネットワーク>の強化を、早急に検討し、
人員や予算を優先的に措置するとの考えを述べた。
今回①~⑤の記事を書くのに、多くの新聞を参考に読ませていただいた。
浮かび上がってきたのは、
当事者が児相の当該管轄地から他の児相の管轄地に転居した場合の連携の悪さが目に付いた。
引き継ぎの過程で緊急性が失われていった結果が、「哀しい結末」に至ってしまった。
その裏には、児童福祉司(任用資格)等の専門職員の不足が、
年々増加していく児童虐待問題に適切な対応ができない現実がある。
また、関係機関の児相や警察などとの仕組み作りも急がなければならない。
専門職員の増員は喫緊の課題であることを痛切に感じた。
(2018.7.1記) (児童虐待№8)
追記(7/2)
虐待を許さないために 厚労省ホームページより
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