読書紹介 「下山の思想」 五木寛之著 幻冬舎新書 2011年12月刊
「人生指南の書」になりうるか。生きるヒントを発見することができるか。
裏表紙のBOOKデータベースによれば、
『どんなに深い絶望からも人は立ち上がらざるを得ない。
すでに半世紀も前に、海も空も大地も農薬と核に汚染され、
それでも草木は根付き私たちは生きてきた。……』とあり、
私はこれを読んで「東日本大震災」を経験した私たちが、
苦しみや悲しみの中から立ちあがっていくにはどんな方法があるのかと、
期待に胸躍らせページを開いた。
GNP世界第2位(2009年中国に抜かれて現在第3位)まで登りつめた日本社会ばかりでなく、
アメリカもヨーロッパ先進国も、国の在りようは行きつくところまで行きつき、
頂上(頂点)を極めた私たちの社会は、大きなひずみ(矛盾)を噴出させている。
行く先の見えない不安定な社会をどのように修正し、解決していくか、
その方法が「下山の思想」だという。
「実り多き下山」と著者は言う。
決してマイナス思考ではなく、新たな高みへ上るためのプロセスとして、
極めた頂点から下りることが望ましいと……。
「東日本大震災」とは全く関係のない内容であるが、次の一文が目をひく。
『すでにこの国が、そして世界が病んでおり、
急激に崩壊へと向かいつつあることを肌で感じている……。
知っている。感じている。それでいて、それを知らないふりをして日々を送っている。
明日のことは考えない。
考えるのが耐えられないからだ。
いま現に進行しつつある事態を、直視するのが不快だからである。
明日を想像するのが恐ろしく、不安だからである。
しかし、私たちはいつまでも目を閉じているわけに入んない。
事実は事実として受け止めるしかない』。
そうです、受け止める現実がどんなに苛酷な状況であろうと、
そこから目をそらさずに生きていくほかに道はないのです。
(評価:☆☆☆★★)
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