糸が描く曲線に沿って削られた細長い木製板・・・星の数、砂の数以上の偶然という一度きりの現象、その線条を固定化する。その線条は風の流れのように瞬時現れた形状である。本来消滅すべき形状を写し取り、さらにそれを『原基』(停止原基)であると名づく。
原基というものは、世界(国際)基準であって、個人的な決定は無い。
しかも作品の選定は客観性に欠け、主観というのも当たらない。
真だろうか、善ではなく美でもない任意、偶然。
人類の叡智によって定められた測量のための原基は《直線》である。直線というものは自然には存在しない。垂直に降る雨も水平に吹く風も、そういうように感じることはあっても厳密に直線を描くことはない。あくまで人類の叡智の結集とも言える『原基』である。
『3つの停止原基』は、決して原基としての使用はありえない、それを『3つの停止原基』と名付け作成したことの意味。
絶対に同一なものは存在しない、唯一無二であるが、決して使用に耐えることのない不要の長物。
確かに存在した事実のある曲線、しかし未来永劫合致する曲線は現れない。
人類を含む地上の生物の生々流転・・・時間を凝縮したなら、単に《明滅》にすぎない。同じように見えて決して同じでない、非なるものの連鎖である。
『3つの停止原基』とは《現象》を象徴するものではないか。3Stoppages etalon。人生とはこんなもの、これが「任意の停止原基」であると。
写真は『DUCHAMP』ジャニス・ミンク(www.taschenより)
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