スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

叡王戦&公理系のルール

2020-06-22 19:24:26 | 将棋
 今井浜温泉で指された昨日の第5期叡王戦七番勝負第一局。対戦成績は永瀬拓矢叡王が3勝,豊島将之竜王・名人が2勝。
 事前の振駒により永瀬叡王の先手で角換り相早繰り銀。後手の豊島竜王・名人から仕掛けて馬を作りましたが,先手が駒を押し上げ後手が退却を余儀なくされるような展開。この将棋は馬とと金のコンビネーションで後手が先手の飛車を攻めたところで千日手に。先手がこの将棋を千日手にしたのは僕には驚きでした。
 先手と後手が入れ替わっての指し直し局は角換り。後手の永瀬叡王の右玉から,互いに5筋の歩を突き合う,この戦型では珍しい進展に。後手の戦術は千日手志向でしたが,先手の豊島竜王・名人が打開して戦いに持ち込みました。
                                        
 打開した先手が角を打ち込み,後手が5二の金を寄って受けた局面。この局面は先手を持ってそれほど自信はなく,後手を持ってもそれなりに戦えそうというのが僕の判断です。
 ここから☗5五銀☖同銀☗5六歩☖4六銀☗4九飛☖2八角☗6五歩☖5三銀☗6四歩☖同銀左☗6五歩☖同桂☗同桂☖4三金寄☗3八桂と進んで第2図になりました。
                                        
 第2図も先手を持ってそれほど自信があるとは思えないのですが,後手を持ったら相当勝てなさそうと僕には思えます。なので僕の判断では,第1図から第2図の間に後手に何らかの疑問手があったのでなければならないのですが,それがどの手であったのかがはっきりと分かりませんし,また,後手がどういう方針で指せばよかったのかも分かりません。あくまでも僕の判断ですから,第1図ですでに先手の方がいいとか,第2図で後手もまだまだ戦えるということもあり得るでしょう。ちょっと僕には難しすぎる将棋でしたが,第2図で後手が勝てなさそうというのはそんなに間違ってはいなかったようで,これ以降は先手が攻め潰すような展開で終局しています。千日手局と指し直し局をみる限り,両者の将棋観には大きな違いがありそうです。その相違が正面からぶつかり合えば,かなり面白いシリーズになるのではないでしょうか。
 豊島竜王・名人が先勝。第二局は来月5日です。

 第一部定理五が,実在する実体substantiaeについて何事かを証明していると解することはできません。そして第一部定理五でいわれている実体は,第一部定義三で定義されている実体であると解さなければなりません。よって第一部定義三で定義されている実体は,何か実在するものについて定義されているわけではなく,単にそれ自身のうちにありまたそれ自身によって概念されるものについて命名しているだけであると解さなければなりません。ゆえに第一部定義三は,名前の定義あるいは名目的定義であることが分かるのです。
 実際には公理系というのは,定義Definitioと公理Axiomaによって定理Propositioなり系Corollariumなりが論証されていくものですから,定理や系によって,定義の意味が理解されることはあってはならないことです。ここでこのような説明をしたのは,こう説明すれば第一部定義三が実在的なものの定義ではないということが分かりやすいと思われるからです。実際には第一部定義三は,どのようなものをスピノザが実体と解するintelligereのかということをいっているのですから,それだけでこの定義が実在的なものを説明しようとしているのではなく,単にある種のものを実体と命名しているのであるということは分かります。つまり,公理系のルールが破られているというわけではありません。
 『エチカ』では,第一部定義三がこのような内容の定義であるがゆえに,第一部定理五と第一部定理一四が,両立し得るようになっているのです。第一部定理一四というのは第一部定理一一を通して証明される定理です。いい換えれば,第一部定理一四は第一部定理一一を明らかにすることができなければ証明することはできません。第一部定理一一というのは,神Deusいい換えれば絶対に無限な実体について,それが実在的realiterであるということを示しています。いい換えればここでは実体が実在的なものとして証明されていることになります。そしてこれを証明するために,第一部定理五を,ひとつの定理として経由しなければなりません。いい換えれば実体が実在的なものであることを論証するためには,事前に実体を名目的なものとして解しておく必要があるのです。これが『エチカ』における実体の定義の意義です。
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