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くも膜下出血ー治療法選択 クリッピング術

2008年07月20日 | くも膜下出血
くも膜下出血の原因が破裂脳動脈瘤である場合には、放置すると50-70%が再破裂で命を失うと言われています。
このため何らかの止血処置が必須です。現在、開頭手術によるクリッピングと血管内手術によるコイル塞栓術の2つがあります。

まずはスタンダードとされるクリッピング術について紹介します。
テクニックの細部については別の機会に紹介しますね!

さてクリッピング術の歴史は古く、長期の安全性が確立しています。止血効果も確実です。
頭蓋骨の一部をあけ、顕微鏡を使って脳のすきまを広げ、動脈瘤の根元にクリップをかける方法です。
この治療の良い点は、動脈瘤の形に関係なく完全な処置が出来ることです。
とくに動脈瘤のねもと(ネック)の広い動脈瘤や動脈瘤から枝がでているようなケースではクリッピングが最善の治療法となります。
また動脈瘤の処置が完全なので、再治療が不要なこと、退院後の外来通院が早期に不要となることがこの治療の利点です。

ただし欠点もあります。
1)全身麻酔が必要なこと。
  ただし最近は麻酔が良くなったので、麻酔自体による問題はまず起こらないと考えても良いくらいです。
2)開頭が必要なこと
  「頭をあけられる」というのは、不安なことですよね。「それだけでおかしくなってしまうのではないか?」と心配される方もおられます。この点を強調するとまず「手術はやめてくれ」ということになりがちですが、皮膚の切開は髪の毛のはえている中で行いますし、外した骨もチタンでしっかりと固定するので見た目にまず分かる様なことはなくなりました。自分の患者さんでも外来に来られる頃には「左右どちらでしたっけ」ということがよくあります。
3)脳をさわるということ
  これは脳には何かしら影響があります。同じ全身麻酔の手術でも脳にさわらない手術に比べれば、やはり少しは脳に影響があるというのは脳外科医自身がよくわかっているところです。未破裂脳動脈瘤のように頭蓋内圧が高くなくて血液が全くない術野では脳表の損傷は最小限で済みますが、くも膜下出血ではもともと脳圧が高くなっており、出血で血管が十分に見えない場合があるので脳にある程度損傷がおきます。元通りになることの方が多いのですが、脳圧が非常に高い状態で無理に手術をすると不可逆的な損傷が起きてしまいます。
4)血管のはくりが必要なこと
  動脈瘤にクリッピング術を行う時には、脳動脈瘤の周囲の血管をきれいに外しておく必要があります。そうしないとクリップをかける時に大事な血管を一緒胃挟み込んでしまうからです。このときに血管損傷が起こりえます。

どうでしょうか?
クリッピングの手技の詳細については後日述べますがだいたいイメージが出来たでしょうか?
http://www.e-oishasan.net/doctors_site/yoshimura/treat02.html
に画像がありますので一度みてくださいね。
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