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くも膜下出血ークリッピング術 その4 シルビウス裂開放

2008年09月21日 | くも膜下出血
いよいよ頭の中に入ってきましたよ。
クリッピング術をする時に最も重要なのは、脳と脳の隙間をきれいに分けることです。医学的には剥離(はくり)と言います。
昔は脳をむりやり引っ張って治療していましたが、現在は脳と脳の隙間を、血管を切ることなくきれいに広げることが良い治療成績につながると考えられています。
実際、脳の表面の静脈を焼いてしまうような手術の治療成績を見たことがあるのですが、術後に脳がはれたり出血したりと大変なことになってしまいます。

さて、その剥離の方法にもいろいろありますが、最近は脳と脳のすきまにある「くも膜」をハサミで切りながら進んでいく方法が良いとされています。
この方法は「sharp dissection (鋭的はくり)」と言われており、私が国立循環器病センターにいた頃、当時の部長の橋本信夫先生に教えてもらいました。
当時は動脈瘤のそばの組織をハサミで切るのを見て大変驚きましたし、「ちょっと危険じゃないのか」と思っていました。
器用な橋本先生だからできる技術とも思いました。
しかし、操作を誤って血管や動脈瘤に切り込むことさえなければ、血管や動脈瘤への力が加わらず、脳表の細かな血管が傷つかないので大変きれいですばらしい方法です。
今や世界的にも主流の方法となりました。
やはりいい方法というのは自然に広まるものなんですね。
現在は私もシルビウス裂や動脈瘤の剥離は、ハサミを使ってsharpに行っています。
動脈瘤をきれいに剥離できれば、クリッピングは非常にやりやすくなるのです。

さてシルビウス裂というのは前頭葉と側頭葉の間のスペースで、クリッピング術において最もよく通過する場所です。
ここをきれいに分けるのがクリッピング術のこつです。
若手脳神経外科医のクリッピング術の一つの壁、それがこの「シルビウス裂をきれいに分けること」なのです。

どうしたらうまく分けられるようになるんでしょうね?
数をやればうまくなる?
もちろんそうです。
練習法は?...
あるんですよ。
次回紹介します。
コメント
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