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造影剤アレルギーについて

2009年12月02日 | 動脈瘤
造影剤アレルギーについてMasayoshiさんからコメントを頂きました。
冠動脈は専門外ですが、調べた範囲でお返事致します。

造影剤アレルギーについては「最近は造影剤の改良でほとんどなくなっている」との記載も見受けますが、実際以前このサイトで紹介した患者さんやMasayoshiさんのように最新の非イオン性造影剤でもショック状態になる方がおられます。
日本医放会誌によれば、非イオン性血管内投与造影剤による重度副作用の頻度は、2.5万例に1例、死亡例は40万例に1例と報告されており、非常に稀です(しかし当院の説明文書ではきっちりとその確率が記載されています)。
ただ、すでに造影剤アレルギーの既往がある方が再度投与を受けた場合には、アレルギー発作はほぼ必発と考えた方が良いと思います。

インターネット上に造影剤アレルギーに関する記述のあるサイトは多くあります。例えば
http://www.fujita-hu.ac.jp/~sfujii/satuei/satuei06.html には
「ヨード系造影剤の副作用をヨード過敏症といい、経口用の造影剤ではほとんど発生しないが、注射用で発現する確率が高い。軽度のものは、くしゃみ、悪心、蕁麻疹等が現れ、重症な場合は顔面蒼白、呼吸困難、血圧低下、チアノーゼ、さらに重篤な時は虚脱、心臓停止を起こす。」とあります。
また 
http://intmed.exblog.jp/4390439/ には
造影剤ショック予防対策を行っても、その有用性が少ないことが記載されています。
以上をまとめると、「造影剤アレルギーの予知のためのテストはリスクがあるため最近行われず、しかもアレルギーの予防治療もあまり有効なものがない」ということになります。このため実際の医療現場では、過去の既往についての問診を行うことと、投与後早期に十分な患者さんの観察を行うことが重要とされています。

したがってMasayoshiさんのように過去に造影剤アレルギー症状が明らかにあった方はできるだけ同じ造影剤の投与を避けるのが良いとされており、どこの医療機関も造影剤を使った検査は勧めないと思います。
それでは冠動脈を一生検査できないのか?ということになりますが、そうでもありません。

血管造影に代わる検査法としてCTやMRIを使った方法があります。
これは以前このサイトでも、脳の血管の検査のところで説明しました。
冠動脈でもこれらの検査が可能になってきました。CTでは血管造影と同じ造影剤を使うので、造影剤アレルギーの方には行えませんが、MRIを使ったMRAという検査法は、造影剤を用いず血管の構造をある程度調べることができます。
下記のサイトを参考になさってください。
http://www.jc-angiology.org/journal/meeting/abstract.php?mc=48&p=SY-4&no=6
http://rdsv.medic.mie-u.ac.jp/rad-home/sh-1a.htm
http://tohoku-b.umin.ac.jp/data/17bukaizassi/17_page096.pdf
などです。

ただしMRAは冠動脈造影やCTAよりも画質が劣るのが欠点です。その診断能力に否定的な見解もあります。
www.onh.go.jp/seisaku/circulation/qa305.html

このため少しでも画質が良く(1.5テスラ以上)で、こういった検査の経験の多い施設で相談されてはどうかと考えます。
以上、参考となれば幸いです。

コメント (6)
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