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コロナワクチンと脳動脈瘤の関係

2021年04月23日 | トピックス
ご質問をいただきました。
「いつも先生のブログ拝見させて頂いております。コロナワクチンのことについて質問させてください。重篤な副反応は稀ということですが脳動脈瘤がある人でも接種によって悪影響がでることは考えられないでしょうか。まだわからないことが多いとは思いますが先生の見解を伺えたら非常に参考になります。お願いいたします。」

ご質問ありがとうございます。
まず結論から申し上げると、正確なデータはないものの、「おそらく無関係」だと思います。

なぜこのように推定するのかをお示しします。
上の図はコロナワクチンの接種数を示しています。
左のグラフを見ると、世界の累計接種回数は8億回をゆうに超えており、10億回に迫っています。
1回接種した人と2回接種した人が含まれていますが、総接種回数の半分と換算しても5億人です。つまり5億人以上が1回以上の接種を受けたと想定されます。

一方、脳動脈瘤は成人の2-5%にあるとされていますし、子供へのワクチン接種はまだ進んでいないはずです。
したがって、5億人のうちの2-5%、つまり1000万人から2500万人の脳動脈瘤を持つ人たちが、接種を受けたことになります。
もしそのうちのたった1%の人たちが破裂をきたすとしても、世界で10万人から25万人の方にくも膜下出血が起きることになります。
世界で10万人以上のくも膜下出血です。発展途上国が半分を占めてはいますが、半分は先進国です。
このような大規模な副反応が世界的に見逃されるとは考えにくいのではないでしょうか。

日本でもすでに200万回の接種が行われていて、100万人以上が一回以上の接種を受けています。
つまり、2-5万人の脳動脈瘤患者さんが接種を受けたことになりますが、くも膜下出血が増えたという報告はありません。
ですから、安心されても良いのではないでしょうか。

同じような心配をされる患者さんはとても多いです。
ただ、脳動脈瘤よりもむしろ脳梗塞を起こした方が心配されています。
外来で、「アストラゼネカのワクチンで血栓が起きたと報道されていた。自分は血栓ができやすいのだから大丈夫だろうか」と質問を受けることがあります。
しかし、ご安心ください。現時点で日本ではファイザーのワクチンしか認可されていません。
このため日本で接種を受けるワクチンは現時点ではすべてファイザー製です。
5月にはアストラゼネカのワクチンも承認される見込みとのことですが、先日、菅総理が米国訪問をして、ファイザー社に追加を依頼したのはご存知かと思います。
新しく開発されたmRNAワクチンの方が有効性と安全性が高いとされていて、それを追加輸入するのです。ちなみに米国モデルナ社のmRNAワクチンも2回接種で安全性、有効性が高いとされています。このワクチンは通常の冷蔵庫で保管可能です。

日本ではワクチンがまだ十分に普及していませんが、おそらくこれから入ってきます。
重度のアレルギーなどのない方は、ワクチンを接種して、ご自身と周囲の人を守りましょう。

図はhttps://answers.ten-navi.com/pharmanews/20139/から引用しました。



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脳動脈瘤 その30 外科手術が難しい動脈瘤:大型・巨大動脈瘤 治療の工夫5

2021年04月23日 | 動脈瘤
みなさん、こんにちは!
前回まで巨大動脈瘤や、深い場所にある動脈瘤に対して、「バイパスをして血管自体を止めてしまう」、という方法を紹介しました。
しかし、実際には単に脳の血管を止めてしまうだけでも問題ないことがあるのです(図)。
その場合、治療はとても簡単です。頭を全く切らずに、血管をコイルで止めるだけで良いのです。
このようなことが可能となる理由を、説明します。

脳に向かう血管は首のレベルでは4本あるのですが、頭の中に入るとくっついたり、分かれたりしています。そのうち、左右の頚動脈だけを抜き出して模式的に示しました。
脳の血管は左右、前後で繋がりがあるので、根元の方なら血管が1本ぐらいなら詰まっても大丈夫なようになっているのです。
ただし、全員が大丈夫ではありませんし、止める血管や場所によっても安全度は違います。
このため、一旦風船で血管を止めてみて、それによって何か症状が出るかどうかを確認するのです(図)。
この閉塞テストの結果、症状が全く出ず、しかも脳の血流が低下しない場合にはバイパスをしなくても安全に血管を止めることが可能です。

実際、このようにバイパスをしないで血管を止める治療も行ってきて、比較的良い結果が得られています。ただし、脳の血流がどの程度低下したらどのようなバイパスをするのかについては科学的な結論が出ていません。このため、各施設の経験によって選ばれているのが実情です。

以上、治療が難しい脳動脈瘤の開頭手術について紹介してきました。
次回からは血管内治療をテーマとして進めていきます。最新情報も紹介していきますので、ご期待ください。
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