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ISC 2025速報: MeVO shock!末梢血管閉塞に対する血栓回収療法の有効性証明されず

2025年02月07日 | トピックス

Los Angelesで開催されているISC 2025に参加しています。

最も注目していたのは、末梢血管に対するカテーテル治療(血栓回収療法)の有効性に関するランダム化比較試験の結果です。

これまでの臨床試験では主幹動脈(Large vessel)の閉塞が対象となっていました。しかし現場ではやや末梢の血管(MeVO)に対しても治療が行われており、その有効性と安全性確認のための試験が進行中でした。

今回の学会ではそのうちの3つが報告され(DISTAL, ESCAPE-MeVO, DISCOUNT(中間解析))、なんと3つとも有効性が示されませんでした。

しかもESCAPE-MeVO試験では血管内治療群で出血合併症が多く、死亡率も高いという結果となっています。

(3試験中2つについては発表と同時にNew England Journal of Medicineに出版されています)。

厳密に実施された臨床試験ですのでこれらの結果は尊重すべきです。ただ、臨床現場で行っている治療の有効性が示されなかったため、私たちにとっては、「MeVO shock !」と呼ぶべき事態です。

 

なぜ有効性が示されなかったのかについて、さまざまな意見が交わされていますが、個人的には以下を考えています。

1)比較的軽症が対象となっていた

2)出血合併症が多かった

3)血流検査が登録の選択基準となっていなかった

4)使用した治療器具が適切ではなかった

5)判定したmRSスコアが適切でなかった

などです。

3つも否定的な結果が出ると、臨床現場でも治療を差し控える必要が生じます。しかし、一定の患者さんに対する有効性はあるはずですので、全ての治療をやめてしまうと、「助けられる人を助けられない」、といったことが起こりえます。

このようなことを防ぐためには、治療が有効な患者さんを選び出し、その効果を科学的に示さなければなりません。

私たちは今回の結果をある程度予想していたため臨床試験を検討中でした。今後、迅速に対応を講じたいと思います。

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