脳卒中をやっつけろ!

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LINNCで得たもの

2009年06月02日 | 閑話休題
今日は印象的なことがありました。
以前重症のくも膜下出血でコイル塞栓術を行った患者さんが今日、久しぶりに私の外来に来ました。
他県に引っ越していたのですが、調子が悪いということで来てくれたのです。
この患者さんはもともと大型の血栓化動脈瘤の破裂だったのですが、一命を取り留めたばかりか、完全に回復されたのです。
しかし半年後に動脈瘤が再開通し始め再治療を勧めてきました。
でも本人も奥さんも拒否され、その後、他県に引っ越すということでそこの専門医のドクターに紹介しました。

今日、診察すると、前はあんなに元気だったのに、ぼーっとして歩きもおぼつかない。
すぐにCTを撮ると動脈瘤が巨大化し、脳を圧迫していました。
以前は開頭手術を勧めていたのですが、こうなるとLINNCで見てきたステントとコイルの併用療法しかない。
もちろん日本には海外のように頭蓋内血管専用のステントはありませんが、冠動脈のものを応用すれば何とかなりそうです。
治療は万全を期して2週間ほど後に予定しました。

上の写真は実際にLINNCで紹介されたステントとコイルの併用療法の写真です。
ステントが非常に柔らかいので曲がった血管にきれいに沿って留置されているのが分かります。
ライブではもっと進んだ治療、つまり「ステントだけで直す」治療が多かったのですが、それに見合うデバイスが日本にはまだありません。
日本ではステントとコイルを併用するのがベストだと考えています。

血栓化巨大動脈瘤が脳の深いところにできると、日本ではまず「治療不可能」ということになってしまいます。
自分も救えなかった患者さんが何人もいます。
もちろん治療にある程度の合併症の確率はありますが、良いステントを使えば根治できる時代が来そうなのです。
この方法は難しい動脈瘤の患者さんの救いの手となるはずです。
早い認可を期待したいところです。
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