みなさん、ご無沙汰しています。
前回は、脳動脈瘤の種類のうち、形による分類について紹介しました。今回は、原因(成因)についてお話ししようと思います。
通常、脳動脈瘤は血管の壁に弱いところがあって、そこにストレスがかかって徐々に膨らむことをお話ししました。しかし、これとは違った機序で動脈瘤ができることがあります。そのうちの1つが、解離性動脈瘤です。昨年、ジャニー喜多川さんがこの病気になられたことでこの病名を知った方も多いと思います。解離性動脈瘤によるくも膜下出血は比較的稀ですが、脳動脈解離自体は頻度が高いとされていますので、少し詳しく解説したいと思います。
脳動脈解離の発生機序と症状
動脈の壁の中に内弾性板という血管の壁を保つ構造があることを紹介しましたが、それに何らかのきっかけで裂け目ができて、中膜の中に血流が進入することによって生じるとされています(図)。裂けた部分に流入した血液が外膜を破るとくも膜下出血になります。一方で、壁の割れた部分から出ている細い血管が詰まったり、流入した血液で壁が内側にせり出して詰まったり、血栓(血のかたまり)を形成すると、脳梗塞を起こします。もちろん、程度が軽ければ頭痛だけで済んだり、無症状のこともあります。解離のうち、ふくらんだ形のものを解離性脳動脈瘤と呼んでいます。
ではなぜ解離が生じるのでしょうか?交通事故や重症のけが(外傷)で脳動脈の解離が生じることがありますが、軽微な外傷(スポーツや運転中に首をひねった時など)でも解離をきたすことがあります。比較的有名なのは首をポキポキと鳴らす動作やカイロプラクティックでボキボキっと骨を鳴らしたあとに椎骨動脈に解離を生じることです。私も以前は首の骨をならすことがあったのですが、このことを知った後からは一切やめました(笑)。あと、カイロプラクティックは広く行われていますので、血管解離が起きる頻度はかなり低いと考えらえます。しかし、稀ながらこのような事例があることは知っておいた方が良いかもしれません。
脳動脈解離の場所
解離ができる場所は椎骨動脈という首の後ろを走る血管が最も多く(80-90%)、頚動脈や前大脳動脈など、他の血管にも生じることが知られています。ではなぜ椎骨動脈に多いのか?椎骨動脈は頚椎という首の骨の中を走るため、首をひねると血管がねじれたり引っ張られるためではないかとされています。同様に、頭部外傷の時に脳を包む膜などの硬い構造に当たるため脳内の血管が解離することが知られていますが、そういった硬い構造から離れた場所で、運動でも動かない位置の血管にも生じるため、血管がねじれたり、硬いものが当たらなくても起きるようです。
脳動脈解離の症状
解離が椎骨動脈に多いことから、痛みも椎骨動脈の近く、つまり首や後頭部のあたりに生じることが多いとされています。痛みが生じて少したってから(多くは数日以内)脳梗塞やくも膜下出血になることが知られています。つまり、痛みが生じてすぐに検査を受ければ症状が出る前に診断ができる可能性があるわけです。
さてそれでは痛み以外にはどんな症状が出るのでしょうか?
くも膜下出血を来たした場合には突然の激しい頭痛や嘔吐、重症では意識障害を生じます。これは通常の動脈瘤と同じです。一方、脳梗塞を起こした場合には、しびれやふらつき、重症では麻痺や意識障害を生じます。特に椎骨動脈解離の場合には脳幹という脳の中心部に血液を送っているので、顔面や半身のしびれ、嚥下障害(ものを飲み込みにくい)などの症状が生じやすいことが知られています。
またまれではありますが、一旦脳梗塞で発症して、その後にくも膜下出血を起こすことがあることも報告されています。
次回は、その頻度や診断法、そして治療法などについて紹介します。
前回は、脳動脈瘤の種類のうち、形による分類について紹介しました。今回は、原因(成因)についてお話ししようと思います。
通常、脳動脈瘤は血管の壁に弱いところがあって、そこにストレスがかかって徐々に膨らむことをお話ししました。しかし、これとは違った機序で動脈瘤ができることがあります。そのうちの1つが、解離性動脈瘤です。昨年、ジャニー喜多川さんがこの病気になられたことでこの病名を知った方も多いと思います。解離性動脈瘤によるくも膜下出血は比較的稀ですが、脳動脈解離自体は頻度が高いとされていますので、少し詳しく解説したいと思います。
脳動脈解離の発生機序と症状
動脈の壁の中に内弾性板という血管の壁を保つ構造があることを紹介しましたが、それに何らかのきっかけで裂け目ができて、中膜の中に血流が進入することによって生じるとされています(図)。裂けた部分に流入した血液が外膜を破るとくも膜下出血になります。一方で、壁の割れた部分から出ている細い血管が詰まったり、流入した血液で壁が内側にせり出して詰まったり、血栓(血のかたまり)を形成すると、脳梗塞を起こします。もちろん、程度が軽ければ頭痛だけで済んだり、無症状のこともあります。解離のうち、ふくらんだ形のものを解離性脳動脈瘤と呼んでいます。
ではなぜ解離が生じるのでしょうか?交通事故や重症のけが(外傷)で脳動脈の解離が生じることがありますが、軽微な外傷(スポーツや運転中に首をひねった時など)でも解離をきたすことがあります。比較的有名なのは首をポキポキと鳴らす動作やカイロプラクティックでボキボキっと骨を鳴らしたあとに椎骨動脈に解離を生じることです。私も以前は首の骨をならすことがあったのですが、このことを知った後からは一切やめました(笑)。あと、カイロプラクティックは広く行われていますので、血管解離が起きる頻度はかなり低いと考えらえます。しかし、稀ながらこのような事例があることは知っておいた方が良いかもしれません。
脳動脈解離の場所
解離ができる場所は椎骨動脈という首の後ろを走る血管が最も多く(80-90%)、頚動脈や前大脳動脈など、他の血管にも生じることが知られています。ではなぜ椎骨動脈に多いのか?椎骨動脈は頚椎という首の骨の中を走るため、首をひねると血管がねじれたり引っ張られるためではないかとされています。同様に、頭部外傷の時に脳を包む膜などの硬い構造に当たるため脳内の血管が解離することが知られていますが、そういった硬い構造から離れた場所で、運動でも動かない位置の血管にも生じるため、血管がねじれたり、硬いものが当たらなくても起きるようです。
脳動脈解離の症状
解離が椎骨動脈に多いことから、痛みも椎骨動脈の近く、つまり首や後頭部のあたりに生じることが多いとされています。痛みが生じて少したってから(多くは数日以内)脳梗塞やくも膜下出血になることが知られています。つまり、痛みが生じてすぐに検査を受ければ症状が出る前に診断ができる可能性があるわけです。
さてそれでは痛み以外にはどんな症状が出るのでしょうか?
くも膜下出血を来たした場合には突然の激しい頭痛や嘔吐、重症では意識障害を生じます。これは通常の動脈瘤と同じです。一方、脳梗塞を起こした場合には、しびれやふらつき、重症では麻痺や意識障害を生じます。特に椎骨動脈解離の場合には脳幹という脳の中心部に血液を送っているので、顔面や半身のしびれ、嚥下障害(ものを飲み込みにくい)などの症状が生じやすいことが知られています。
またまれではありますが、一旦脳梗塞で発症して、その後にくも膜下出血を起こすことがあることも報告されています。
次回は、その頻度や診断法、そして治療法などについて紹介します。
Aと申します。
3月下旬から頭痛がするようになり4月中旬にMRIを撮った際、椎骨動脈解離による血管の閉塞が見つかりました。経過観察で今月MRIを撮ったところ、解離発生の箇所で動脈瘤が発生していました。1ヶ月で発生、また解離で血管が弱くなった場所とすると破裂の可能性がどうなのか不安です。すぐにどうにかなる可能性はあるんでしょうか。一般論で結構ですのでもしご見解いただけますと幸いです。
しかし動脈瘤が形成されたり大きくなった場合にははれつのリスクがあると思います。また次回に説明いたしますが、主治医の先生からしっかりと説明をうけてくださいね。