寒い。
手がかじかみ、体が震え、筆をとっても字がうまく書けない。
隷書だって楷書だって、草書でさえ、もうちょっとマシに書けるように
なったと思っていたのに、体がこわばって書けない。
隷書の波磔をかっこよく伸ばすには、筆を右に抜きながら時計回りにひねる。
ひねれない。
楷書の横画は右上がり、縦画はとにかく垂直の場合が多いが、
まっすぐに下ろせない。
草書は筆の動きの緩急が大事だと思っているが、
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なんでもかんでも火力の強い焼却炉でバンバン燃やしちゃえ、
という当今の傾向がある中、
私の住む調布市は、ゴミの分別をしっかりする。
「燃やせるごみ」と「容器包装プラスチック」は分ける。
仔犬の頃、人が留守にしている間に、ごみを散らかしてかじって遊ぶ、
ということが流行った。
かまってくれる人がいないし、何かを咬むのは気持ちいいし、
プラは特に音がして面白いし、後で見つけたらなんか人間も興奮して楽 . . . 本文を読む
近所に、犬と飼い主の社交場がある。
公園で幼児の親たちがおしゃべりするのとちょっと似ている。
犬は群れ社会で暮らす動物であり、その習性は飼い犬になっても変わらない。
毎日顔を合わす仲間がいれば、その中で自ずと順位が決まる。
そんな中でどこへ行っても、気弱な雄犬ジーロは最下位になるわけだ。
別にいじめられたりはしない。
おやつをもらう時になかなか近寄れない、といった事だ。
リーダー犬は、どっし . . . 本文を読む
[あらすじ] 7匹のきょうだい犬のうちの雄雌2匹を飼っていたが、
7月に雌犬が死んだ。あと5日で11歳の誕生日という日だった。
この雌犬カバサは、たいへん強い犬だった。
強気な犬だった。
売られた喧嘩はケチケチせずに全部買ってくれるわ!
という態度だった。
危険である。
売られていない喧嘩も買う勢いであった。
因縁付けて絡む、ということと同じだろう。
特に家の中で威張っていた。
冬なら一番 . . . 本文を読む
カタカナの「ス」は、私の苗字の須山の「須」の字の右下の部分からできた。
カタカナってヘンなの。
美食家、陶芸家、書家として知られた北大路魯山人は、
陶器のサインに何種類か使っているが、その中に「ロ」というのがある。
くちじゃない。ろ。
カタカナの「ロ」は「呂」からできた。
シンプル極まり無いサインだ。
私は、自分のサインに「ス山」というのを使っていた。
なんたって書きやすい。画数少ない。
小学 . . . 本文を読む
先日添えた写真を加工した。
末廣亭のパンフレットの、赤い文字だけで印刷されている面に絵を描いた。
そこで、写真の赤の成分を最高に上げてみる。
すると、全体が真っ赤になるので、赤い文字が埋もれる。
青のボールペンで描いた線が浮き出てくる。
なるほど、赤い印刷文字が見えている間はごちゃごちゃとしていて
ボールペンの青線がよく見えていなかったことがよくわかる。
もっと描き込んだほうが絵としては良か . . . 本文を読む
福祉施設の送迎車の横っぱらなんかに書いてある。
「みんなちがって、みんないい」
ひっかかる。
「みんないい」ってなんだ?
いくない人だってたくさん、どこにでもいるぞ。
「みんなちがって」
の部分は、まあ良しとしておこう。
これも、よーく考えてみると、問題が浮き彫りになってきそうだが。
今回は「いい」という部分について言いたい。
「みんなちがっていい」
というのなら、分かる。
ひとそれぞれ . . . 本文を読む
[あらすじ] 「わかりあう」という言い回しが胡散臭い。なぜか。
「わかる」を「共感する」という意味で使っているからではないだろうか。
「これだけ言ってもわからないのか」とか
「わたしたちついにわかりあえなかったわね」とか
そんな言い方を聞くと、どうもアヤシイと思う。
それは、自分の考えを相手に通そうとしているだけではないか?
自分の価値観に相手が沿っていないと、「わかっていない」と言い、
意 . . . 本文を読む
「わかりあえる」という言い回しを、よく耳にする。
これが、子どもの頃からなんだか疑わしく思えて嫌いだった。
ほんとにわかりあえるのか?
ごく身近な人、家族や友達だって、わかりあっている気はしない。
そもそも、私の恋愛対象が女性だってことも知らないだろ。
「ちゃんと話し合えばわかりあえる」
なんだか条件を付けてきたな。
これも疑わしいな。
ちゃんと話し合えるのか?
まず、話を聞いてくれるのか?
. . . 本文を読む
落語の定席に、ときどき行く。 家から電車一本で行けるので、もっぱら新宿末廣亭だ。 どこよりも大きい会場で、造りも風情が有ってよろしい。 たまにこっそりスマホを取り出している客もいるが、 場内は撮影禁止だ。 ずいぶん何度も通っているが、写真が駄目なら絵で描く ということをやっと思い付いた。 配布されるパンフレットに、いつも噺家の似顔絵を描くけれど、 今日はみっちりと箱の様子を描きながら、笑う。 . . . 本文を読む
[あらすじ] パシフィコ横浜で開催された写真関連商業フェアのCP+に行ってきた。 最後のお楽しみは、ハービー山口さんの話だ。 もう、ずっと前のこと。いつだったか憶えていない。 二十代だったろうか。 渋谷か新宿かどこかの、商業ビルの中を歩いていたら、一角で写真展をやっていた。 魚網みたいなセットで、不思議な空間を作ってあった。 観客は誰もいない。 見ると、私の好きなミュージシャンの顔がある。 ど . . . 本文を読む
[あらすじ] 十月から毛筆の書を独習し始めた。
隷書の魅力を知り、そこから木簡の臨書に集中した。
行書や草書は楷書を崩したものと思ったら大間違い、
隷書から発達したものだ、という。
書いてみりゃわかるらしい。
書いてみたい。
発掘される木簡には様々の時代のもの、
行政の記録や、通信文や、教科書など様々な種類のものがある。
時代がちょっと下り、急ぎの通信であったりすると、
速く記すために草書が使 . . . 本文を読む
[あらすじ] 横浜美術館で篠山紀信展。
同じ週に今度はパシフィコ横浜で写真関連の商業フェアCP+。
大きめのメーカーのブースでは、プロカメラマンが様々なテーマで数十分しゃべる。
もちろん、そのメーカーの製品を使うとこんなことができますよ、という宣伝になっている。
カメラやレンズだけでなく、カメラバッグや現像ソフトやプリンターも扱っている。
会場は男性が多いが、女性向けのかわいいカメラバッグを作 . . . 本文を読む
篠山紀信の写真展に横浜へ行った。
旧作から最近の作までを集めていた。
最初の部屋が圧巻で、美術館の壁の大きさを利用して、
往年の大人物の写真を大きくプリントしてある。
勝新太郎の座頭市の構図が大胆でもキマるのは、
役者と役どころにハマっているからだろう。
それにしても三島由紀夫は贅沢をしたもんだ。
なりきりナルキソ写真を紀信に撮ってもらうんだから。
湖面の細い舟の上に半裸の女性が仰向けにポー . . . 本文を読む
昨日のは法螺話です。
毎月一日に、法螺話を書いています。
年に一度、四月一日だけでは足りない、もっと法螺が吹きたいからです。
いえ、月に一度騙されるのが快感というへんたもといあくしゅもとい
高雅なインテリジェンスをお楽しみになる読者がいてくれるので続けられています。
見るからに法螺という回もあれば、
どこが法螺なのかという回もあれば、
読者にご心配をかけてしまう回もあります。
だから、毎月二日 . . . 本文を読む