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長いロングシート

2014-05-21 23:47:36 | 秋田のいろいろ
男鹿線のキハ40系気動車の話。※以前の関連記事
国鉄が製造してJR各社に引き継がれたこの形式群は、各地の実情や経年への対応から各社・各地域ごとにさまざまな改造が施され、形式番号では分からない、種々雑多な仕様が混在している。

秋田車両センター所属の男鹿線用のキハ40系には、こんな車内の車がある。
「キハ40 569」
窓を背にして座る「ロングシート」の座席がずーっと並んでいる。
原型のキハ40は、両端のドア付近に短いロングシート、中央部は4人がけボックスシートと、2種類の座席配置が1両に混在する「セミクロスシート」だけ。このようなオールロングシート仕様は存在しない。この車は後の改造でロングシート化されたことになる。
(このキハ40 569は、以前は仙台支社所属だった。仙台時代に既に改造され、その後秋田へ転属したと思われる)

秋田車両センターには、キハ40 569以外にもロングシート仕様に改造されたキハ40系がそれなりに配置されている。
男鹿線用と五能線用合わせて61両のキハ40系が配置されており、ロングシートはおそらく男鹿線だけで運用されているはずだが、具体的に何両かは不明。
感覚としては、2.5両に1両くらいの割合でオールロングシート車がある感じだろうか。
【2015年6月11日追記】2015年時点では、五能線では29両が運用されているとのこと。男鹿線との掛け持ち分がカウントされているのかは不明だが、差し引き、男鹿線でも30両ほどが走っていることになりそう。【2016年9月11日追記】2016年夏の五能線全通80周年のロゴマークが掲出されたキハ40系は「32両」。ちょっと増えた?

この時は4両編成で、秋田寄りから2両目と4両目がロングシートだった。
1本の列車の中で、全部がロングシートという場合はないようで、逆にロングシートがまったく連結されていない場合もあまりないと思う。それなりに配慮して配車しているのだろう。【2016年6月7日追記】2両編成で2両ともロングシートの場合はあった。3両以上だと、どこかに最低1両はセミクロスが入っている印象かな。


ところで、冒頭で「座席がずーっと並んでいる」としたけれど、このキハ40 569の場合、
中央部に座席がない部分が
中央にドアがない車両でオールロングシートの場合、その長さが際立って感じてしまうものだが、途中で途切れていることにより、そんなに「長い」という印象は受けない気もする。
ただし、最近のロングシートでは一般的な仕切り板がなく、座席とわずかな棒だけが単調に並ぶためか、一般的なロングシートとはどこか違う、異質な感じもする。

座席が途切れている部分は、壁や窓は元のまま。窓の下に手すりが設置され、荷棚(網棚)は撤去されて途切れている。座席に相当する部分は、
片側は床面に何もなく、窓際に立つことができる
もう片側は、
座席と同じ高さの金属製の「台」みたいなのがある
台のある側は、下に暖房機と思われる出っ張りがあるので、そこに立たせるわけにはいかなくて台を置いたのかもしれないが、だったら座席にしてもいいような…
たまに荷物を置く人がいるのはいいとして、腰掛けてしまう人もいる。無意味なスペースではないだろうか。
なお、車椅子スペースは、端のほうにある(折りたたみ式椅子になっている)。

宇都宮支社のロングシート化されたキハ40系でも同じような空間があり、そこにゴミ箱と消火器を設置しているが、幅がもっと狭い。
男鹿線のは、位置や幅からして、ドアを設けられそうにも感じる。将来のドア増設の改造を見越して、その準備スペースかなとも考えたが、座席撤去なんて簡単な作業だろう。やるんだったら壁や窓のほうが大掛かりな工事になるから、そっちを準備をするだろう。(そもそもドア増設なんて技術的にできるのか、できたとしても費用対効果がどれほどかも疑問だし)

さらに、この車では、座席も独特。
現在一般的なロングシートの座席は、縫い目がつけられて1名ずつ座る位置を指定する「バケットシート」。それが2~3名分ずつで1セットになった背もたれと座布団から構成されている。
701系電車のシート。3席で1セットで切れ目が入っている

ところが、このキハ40 569では、
1名分ずつ切れ目が入っている
厳密に1人ずつのスペースが定められているせいで凹凸があり、視覚的に「うるさく」感じるかもしれない。

一方、足元はキハ40 569のほうが何もなくシンプル。
701系では、中に暖房機が入っている都合上「蹴込み(けこみ)」と呼ばれるカバーが付いていて、足の置き場に困ることがある。最近の首都圏の電車では、暖房機を工夫して蹴込みがないタイプが増えているが、キハ40 569はそれを先取りしているかのようだ。

701系と比べれば、薄っぺらに見える座席だけど、座り心地はそんなに悪くないと思う。凹凸が大きいせいで、やや窮屈でベンチに座っているような感じがして、長時間は厳しいかな。

男鹿線で使われるロングシートのキハ40系の中には、これとは違う仕様のものもあって、途切れなく座席が並んでいたり、3席で1セットの席の車もあるようだが、乗ったことはないような気がする。
【2015年5月16日追記】3席1セットのロングシートに乗る機会があった。柔らかめながら、浅くてどこか落ち着かない掛け心地で、あまり良くなかった。
【2016年11月5日追記】3席1セットのロングシートの車両かと思うが、吊り手(つり革)のひもが長いのと短いのが1つずつ交互にぶら下がっている車両もあった(優先席部分を除く)。ほんとにいろいろなバリエーションがある。


キハ40 569をもう少し観察。
キハ40 569という番号は、国鉄時代の法則にのっとれば「両端に運転台があって、トイレがあって、寒冷地仕様」ということになる。
写真では分かりにくいが、運転台はちゃんと両側にある。ところが、片方のドア直後にあるはずのトイレが見当たらない。よく見ると…
優先席付近
優先席の片側がおかしい。細長い小さい窓しかなくてあとは壁だし、非常ボタンが壁の途中のおかしな位置にある。
そう。改造時にトイレを撤去して客席にしていたのだった。
窓や壁以外の床、荷棚、吊り手は他と同じで区別がつかず、上手に処理している。トイレがないのなら、国鉄時代の法則なら「キハ40 1569」に改番されるはずだが、そこまではしないのか。

さらに上の写真で分かるように、デッキとの仕切りが撤去され、そのための保温対策として半自動ドア化も実施(ドアボタンがある)されている。運転台周りは原型のままで、ワンマン運転はできない。

両運転台だけど、トイレなし、ワンマン非対応というこの車。運用上の制約がある。
男鹿線の他の車でも、どれも何らかの制約があるだろうから、車両運用を決める作業は、奥羽本線などより大変かもしれない。

窓が狭い場所が
これは原型ではボックスシートとロングシートの境界部。2人がけの席があった場所だ。
再掲)元々はこうなっていたはず
杓子定規な国鉄の規定のためか、原型のキハ40では、ロングシート部分も含めて座席番号が割り当てられ、表示されていた。さすがにオールロングシートでは表示されていない。

あと、男鹿線では定番の改造だが、冷房設置・扇風機撤去も実施されている。



このような2ドア車の長いロングシートは、男鹿線キハ40系だけのものではなく、各地でちらほら見られる。
キハ40系では北海道や西日本でも改造されているし、国鉄末期以降には新製時からロングシートの形式(四国のキハ54、JR東日本左沢線のキハ101、JR西日本のキハ120等々)も存在する。

利用者が多く、そのほとんどが短距離利用である大都市ではロングシートがふさわしいけれど、地方の長距離路線でもロングシートの車が走っている。
鉄道会社としては、できるだけ客を詰め込んで、かつ乗降の流れをスムーズにして遅れを減らし、車内清掃の手間を省きたいのがホンネだろう。通学時間帯とそれ以外で混雑の差が激しく限られた車両数で回さなければいけないこと、大都市の車両と共通設計にしてコストを減らす目的もあるだろう。


ところで、僕が初めて列車に乗ったのが、たしか1981年の夏。羽越本線の普通列車で秋田-羽後本荘を往復した。
当時は、青や茶色の雑多な形式の旧型客車を機関車(羽越本線はEF81か)がひいていた。

行きは、ボックスシートの車両で、座席の枠や壁は木製だった(写真が残っているはず)。これは当時としてはありふれたものだったはず。
帰りは、なんと古い客車なのにロングシート。これも端から端までオールロングシート(たしか青い布)で、内装は塗り立てのようにきれいだった(というのを同行者が話していたのを覚えている)。車内のお客はとても少なく、小学生くらいの男の子が、つり革にぶら下がって遊んでいた。
この時も、おそらく全車両がロングシートではなく、ボックスシートの車両があってほとんどの客はそちらに座っていたのかもしれない。

調べてみると、「オハ41」形というロングシートの客車が存在し、秋田にも配置されていたようなので、それだろうか。
戦前(1939年から)に製造された「オハ35系」(さらに改造されてオハ55?)を1965年頃に土崎工場などでロングシート改造・改形式したものだそう。
※オハ41は1978年までに廃車されたという情報もあるし、他の形式でもロングシート客車があったようなので、違う形式かもしれません。

子どもだったからか、生まれて初めて見たロングシートだったからなのか、この時のロングシートはものすごく長かった印象がある。
それと比べれば、キハ40のロングシートなんて、大したことないように見えてしまう。長さは大して違わないはずなのに。

【2017年6月14日追記】男鹿線でオールロングシート化・トイレ撤去が行われた「キハ40 541」に乗った。
運転席後部に窓が設置され(ワンマン対応としてよく行われる)ているが、それが客席側窓のように上下に二分割されていて開閉する構造。しかも、上側の窓は、客席側に開閉つまみが付いていた。ということは、運転士の意志に関わらず客が開けられるということなんだろうか? 運転席内側にもストッパーがあるのかもしれないけれど。
また、国鉄の気動車に標準搭載されていた、車内放送用オルゴール「アルプスの牧場」は残っており、珍しく車掌が鳴らしていた。このオルゴールは自動停止機能がなく、鳴ったとしても中途半端に流れることが多いのだけど、この時の車掌さんはとても上手で、1フレーズぴったりと放送してくれた。
コメント (9)
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