みんなのうたと歌詞の字幕について。前回の続き。
※以下、過去の放送の書体については、録画映像のほか、番組公式ホームページ掲載のキャプチャ画像から判断。曲や時期によっては、字幕がない画像がアップされていて、全貌は不明。
終わってしまった2022年12月・2023年1月の再放送曲から。
「バナナ村に雨がふる」。1987年8月・9月。これも久しぶりに聞いたが、記憶通り。
シチュエーションは「オランガタン」にちょっと似ているが、2者の敵対はないし、曲はポップで明るい。これがトラウマになる子はいないだろう。
この作詞が前回「ポケットの中で」の銀色夏生。ポケットの中でとは打って変わって明快。作曲・乾裕樹、歌・EPO。
南家こうじのアニメーションも、詞に合わせてポップで楽しいが、詞に合わせて色数が限定されているのが特徴。
字幕。
これも当時標準のモリサワ「テレビ太ゴシック体BT1」。
なのだけど、
「片手(かたて)」
「男(おとこ)」
「女(おんな)」
ふりがな(ルビ)が手書き!
昔のみんなのうた(に限らずテレビ全般)では、ルビ以外の本文でも、活字の中に部分的に手書き文字で混ざることがたまにあった。
今のデジタル製作と異なり、後で間違いに気付いても、工程上、作り直しが間に合わず、手で修正したのだろう。※2020年代の修正の事例(メゲメゲルンバ)。
バナナ村では、ルビの指定もしくは作成時の入力を忘れてしまって、仕方なく手で書き加えたのか。
当時は、NHKでも民放でも、手書きテロップは珍しくなく(例えば「たんけんぼくのまち」など)、それを手掛けるスタッフ(美術スタッフということか?)がいたようだ。各人の個性がある文字ではあるが、それなりに上手い文字。
だけど、このルビは、なんか下手な字。専門スタッフも手配できず、AD(?)か誰かが書いたのだったりして…
バナナ村でルビが振られるのは、片手、男、女のみ。ほかの漢字は、村雨花空口大が出てくるが、ルビなし。
小学校で習う学年は、「片」が6年生で、ほかは1年生。すべての漢字にルビを付けるべきだったのでは?
なお、タイトルに含まれる「村」と「雨」は、当時の曲が始まる前のタイトル画面でルビが振られていて、作中では振らなかった可能性はある。今回の再放送のCGタイトルにはルビなし。
昭和末期のみんなのうたの歌詞のルビ振り基準はどうかと、他の曲を少し見てみたが、明確なルールはなさそう。曲の対象年齢を意識している感じは多少する。
同じ漢字が複数回出てくる曲では、初出時のみルビ。
例外は1984年「メトロポリタン美術館」の「美術館」の「ミュージアム」。これは当て字だからか、毎回ルビ付き(カタカナのルビはレア)。そのほかの漢字は「大理石」も「靴下」も一切ルビなし。【13日追記・ほかにも例外はあるようで、1980年「展覧会で逢った女の子」では、3番までで2度ずつ・計6度出る「展覧会」の、各フレーズの初回(=3度)と、各フレーズ1度ずつ出る「逢った」すべてにルビが振られる。】
「神父さんのパイプオルガン」。1987年4月・5月。
「ロバちょっとすねた」に続く、アグネス チャン(この曲では名黒なし)・東京放送児童合唱団の歌。これも楽しい歌で、「ボワボワチュッチュー」のフレーズがインパクトあり。
これも36年ぶりに聞いた。「ボワボワチュッチュー」以外の部分は、あまり記憶になかったけれど、まあ想定内。「ボワボワブーブー」のフレーズもあったのは忘れていた。
僕はこの歌で「パイプオルガン」という楽器を知ったかもしれない。アトリオン音楽ホールはまだなかったので。尾崎真吾のアニメーションで描かれるパイプオルガンは、パイプが7本しかなく、ウツボカズラのようにふにゃっとした形。こういうパイプオルガンもあるのだろうか。
作曲は、ポケットの中での吉川洋一郎(「吉」は上の横棒が短いのが正当)。
作詞は小黒恵子。童謡作詞家で、「ロバちょっとすねた」ほか、みんなのうたも多数手掛ける。動物が出てくる歌が多い。12月・1月にはもう1曲放送された(後日また)。
字幕。
これは、モリサワBT1ではなく、写研「石井ゴシック(石井太ゴシック?)」。モリサワによってデジタル化されようとしている。
ポケット~とバナナ村~の間の時期の製作だが、書体どころかそのメーカーが異なるのだ。写研とモリサワの書体は、それぞれの写植機でないと扱えない。NHKには両方の写植機があったのだろうが、それにしても(インストールしておけば自由に切り替えられるデジタルフォントとは違って)気軽に書体を使い分けるというものではなかったと思う。
1987年4月・5月の他の新作3曲の字幕がどうだったかは不明。
しかし、1つ前の2月・3月(※)と、1つ後の6月・7月の曲は、基本のモリサワBT1の字幕。
※ゆらんゆろん、風のオルガンと名曲。余談だが、みんなのうたでタイトルに「オルガン」が含まれるのは、風の~と神父さんの~の2曲のみ。
したがって、神父さん~は、例外というか臨時の措置として写研書体を使用したと言える。
このように、この頃のみんなのうたでは、モリサワBT1を原則としながら、たまに石井ゴを使用する場合があった。
憶測だが、字幕を作ろうとした時に、NHKのモリサワ写植機が、故障したりふさがっていたり、あるいはモリサワ写植機のオペレーターがつかまらなかったりして、じゃあ、写研写植機のほうで、となったのかも。
石井ゴのほうがすっきり見える気はする。個人的にはモリサワのゴシック体のほうが好きだけど。
ここで、2021年1月に(単発で?)再放送された曲。
1988年10月・11月初回放送の「フラミンゴのワルツ」。「ラッタッタ ラッタッタ」が印象的な尾藤イサオの歌。
その字幕が、
モリサワBT1でも、写研石井ゴシックでもない。「な」の3画目と4画目がつながっている。
モリサワ「太ゴB101」だ!
BT1のベースとなった書体であり、前回のように同時期のテレビ東京「演歌の花道」の歌詞で使用されており、デジタル化されて現在でもお目にかかるフォント。
「そ」は一筆書き
↑BT1や石井ゴでは、2画の「そ」。太ゴB101も、もしかしたらデビュー当初は2画で、途中から(この時点ですでに)一筆書きに改訂されたのかもしれない。
同時期新作の他の3曲のうち、公式サイトの画像で確認できた「みんなでステップ」と「風の歌が聞こえますか」でも、同じくB101を使っている。
この前月の4曲は不明。次月以降は、以前のようにBT1をメインとしながら、たまに石井ゴを使っている。
したがって、かなり例外的に、太ゴB101が使われたことになる。
NHKのモリサワ写植機の中に、BT1がセットされていない個体があって、それを使わざるを得なかったとか、書体の指定もしくは操作のミス(我々素人がパソコンでやりがちだけど)で、うっかりB101を使ってしまったとかだろうか。
ただし、冒頭の歌手・アニメーション作者表示。
これだけ石井ゴシック
通常ならば、BT1にせよ石井ゴにせよ、歌詞と同じ書体で表示されるようだが、これも例外的。
なお、表示位置は上下左右中央まちまちだが、これは映像を邪魔しない配慮だと思う。文字のサイズ(長体/平体を含む)や改行・行間隔も統一されていないが、これは単にこだわりがないためかも。
余談だが、歌手名は「うた」とされるのが基本だが、堺正章版の「北風小僧の寒太郎」では「歌」と漢字表記。
「神父さんのパイプオルガン」は歌詞と同じく石井ゴ
1985年4月・5月放送の「ああおかしいね」という歌。これも銀色夏生作詞で、筒美京平作曲。
歌詞と同じくBT1
「う」は、BT1より石井ゴのほうが縦に長い印象。「尾」の「毛」の右への飛び出しや、「真」の下の点のバランス、「ア」2画目の始まりの位置、小さい「ョ」の大きさなども違う。
そして、1989年1月に昭和が終わり平成へ。その直後に変化。
1989年4月・5月の「旅人のように」では、BT1が使われていたのが確認できる。
この間は、ホームページの画像に字幕が入っていないので確認できないが、1989年10月・11月の「教室大笑い」「はる なつ あき ふゆ」では石井ゴが使われ、それ以降、BT1は一切使われなくなったようだ。
したがって、1989年度の前半で、モリサワ「テレビ太ゴシック体BT1」は使われなくなってしまった。方針転換なのかもしれないが、NHKの字幕作成機器の更新によるものではないだろうか。
詳しくは不明だが、同じ辺りでテレビ東京「演歌の花道」も、太ゴB101から石井ゴに変更されている。
写研書体に一本化されたみんなのうた。1989年12月・1990年1月の所ジョージ「背中でツイスト」のセリフ部分では、丸ゴシック体の写研「ナール」が使われる。角ゴシック体以外の字幕は、みんなのうた史上初かもしれない。
翌年の「東の島にコブタがいた」でもセリフはナール。
1994年4月・5月の「ボクの勝ち」という歌では、部分的に写研「ファン蘭」というデザイン書体を使用。
そして、1994年8月・9月の「また明日」「花かんざし」、それにたしか「チュンチュンワールド~おげんきたいそう~」では、メインの歌詞としてナールが使われる。
ホームページで確認できる限りでは、10月以降もナールへ移行したかに思えるものの、1996年4月・5月「星空のオルゴール」「父さんの背番号」や、1996年6月・7月「かざぐるま」「切手のないおくりもの(2度目のリメイク)」「ずっと友達」では、石井ゴシックが復活。6月・7月の「おじいちゃんのブランコ」だけはナール。これを最後に、石井ゴシックは確認できない。
段階的移行を経て、1996年度半ばに、ナールへ完全移行ではないだろうか。【2024年6月27日コメントいただき追記・1996年4~7月の歌は、初回放送時はナールだったとのこと。となると、もう少し早い移行だったのか。】
石井ゴもナールも、写研書体だから切り替えは容易なのだろうが、明らかに見た目が違う2書体を、同じ番組の同じ時期の同じ用途で並行して使っていたのはなぜなのだろう?
その後、2003年頃までは、ナールが使われているのを確認できる。以降分は、ホームページでは歌詞がない画像ばかりになって、分からなくなる。
2003年10月・11月の「りんごのうた」では、写研のニュースタイルの角ゴシック体である「ゴナ」が使われる。
ただし、りんごのうた冒頭の歌手・映像作者表示は、昔ながらの石井ゴシック。
2000年代後半には、多くのテレビ番組で写研の字幕が使われなくなり、パソコンのデジタルフォントへ移行していき、写研はすっかり影を潜める。みんなのうたも同じ流れだったのではないだろうか。
現在では、曲によってさまざまなフォントが使われているようだ。
以上、みんなのうたの字幕書体の変遷。
2022年12月・2023年1月の再放送曲では、字幕とは別に、印象的なものが2曲あったので、後日。
※以下、過去の放送の書体については、録画映像のほか、番組公式ホームページ掲載のキャプチャ画像から判断。曲や時期によっては、字幕がない画像がアップされていて、全貌は不明。
終わってしまった2022年12月・2023年1月の再放送曲から。
「バナナ村に雨がふる」。1987年8月・9月。これも久しぶりに聞いたが、記憶通り。
シチュエーションは「オランガタン」にちょっと似ているが、2者の敵対はないし、曲はポップで明るい。これがトラウマになる子はいないだろう。
この作詞が前回「ポケットの中で」の銀色夏生。ポケットの中でとは打って変わって明快。作曲・乾裕樹、歌・EPO。
南家こうじのアニメーションも、詞に合わせてポップで楽しいが、詞に合わせて色数が限定されているのが特徴。
字幕。
これも当時標準のモリサワ「テレビ太ゴシック体BT1」。
なのだけど、
「片手(かたて)」
「男(おとこ)」
「女(おんな)」
ふりがな(ルビ)が手書き!
昔のみんなのうた(に限らずテレビ全般)では、ルビ以外の本文でも、活字の中に部分的に手書き文字で混ざることがたまにあった。
今のデジタル製作と異なり、後で間違いに気付いても、工程上、作り直しが間に合わず、手で修正したのだろう。※2020年代の修正の事例(メゲメゲルンバ)。
バナナ村では、ルビの指定もしくは作成時の入力を忘れてしまって、仕方なく手で書き加えたのか。
当時は、NHKでも民放でも、手書きテロップは珍しくなく(例えば「たんけんぼくのまち」など)、それを手掛けるスタッフ(美術スタッフということか?)がいたようだ。各人の個性がある文字ではあるが、それなりに上手い文字。
だけど、このルビは、なんか下手な字。専門スタッフも手配できず、AD(?)か誰かが書いたのだったりして…
バナナ村でルビが振られるのは、片手、男、女のみ。ほかの漢字は、村雨花空口大が出てくるが、ルビなし。
小学校で習う学年は、「片」が6年生で、ほかは1年生。すべての漢字にルビを付けるべきだったのでは?
なお、タイトルに含まれる「村」と「雨」は、当時の曲が始まる前のタイトル画面でルビが振られていて、作中では振らなかった可能性はある。今回の再放送のCGタイトルにはルビなし。
昭和末期のみんなのうたの歌詞のルビ振り基準はどうかと、他の曲を少し見てみたが、明確なルールはなさそう。曲の対象年齢を意識している感じは多少する。
同じ漢字が複数回出てくる曲では、初出時のみルビ。
例外は1984年「メトロポリタン美術館」の「美術館」の「ミュージアム」。これは当て字だからか、毎回ルビ付き(カタカナのルビはレア)。そのほかの漢字は「大理石」も「靴下」も一切ルビなし。【13日追記・ほかにも例外はあるようで、1980年「展覧会で逢った女の子」では、3番までで2度ずつ・計6度出る「展覧会」の、各フレーズの初回(=3度)と、各フレーズ1度ずつ出る「逢った」すべてにルビが振られる。】
「神父さんのパイプオルガン」。1987年4月・5月。
「ロバちょっとすねた」に続く、アグネス チャン(この曲では名黒なし)・東京放送児童合唱団の歌。これも楽しい歌で、「ボワボワチュッチュー」のフレーズがインパクトあり。
これも36年ぶりに聞いた。「ボワボワチュッチュー」以外の部分は、あまり記憶になかったけれど、まあ想定内。「ボワボワブーブー」のフレーズもあったのは忘れていた。
僕はこの歌で「パイプオルガン」という楽器を知ったかもしれない。アトリオン音楽ホールはまだなかったので。尾崎真吾のアニメーションで描かれるパイプオルガンは、パイプが7本しかなく、ウツボカズラのようにふにゃっとした形。こういうパイプオルガンもあるのだろうか。
作曲は、ポケットの中での吉川洋一郎(「吉」は上の横棒が短いのが正当)。
作詞は小黒恵子。童謡作詞家で、「ロバちょっとすねた」ほか、みんなのうたも多数手掛ける。動物が出てくる歌が多い。12月・1月にはもう1曲放送された(後日また)。
字幕。
これは、モリサワBT1ではなく、写研「石井ゴシック(石井太ゴシック?)」。モリサワによってデジタル化されようとしている。
ポケット~とバナナ村~の間の時期の製作だが、書体どころかそのメーカーが異なるのだ。写研とモリサワの書体は、それぞれの写植機でないと扱えない。NHKには両方の写植機があったのだろうが、それにしても(インストールしておけば自由に切り替えられるデジタルフォントとは違って)気軽に書体を使い分けるというものではなかったと思う。
1987年4月・5月の他の新作3曲の字幕がどうだったかは不明。
しかし、1つ前の2月・3月(※)と、1つ後の6月・7月の曲は、基本のモリサワBT1の字幕。
※ゆらんゆろん、風のオルガンと名曲。余談だが、みんなのうたでタイトルに「オルガン」が含まれるのは、風の~と神父さんの~の2曲のみ。
したがって、神父さん~は、例外というか臨時の措置として写研書体を使用したと言える。
このように、この頃のみんなのうたでは、モリサワBT1を原則としながら、たまに石井ゴを使用する場合があった。
憶測だが、字幕を作ろうとした時に、NHKのモリサワ写植機が、故障したりふさがっていたり、あるいはモリサワ写植機のオペレーターがつかまらなかったりして、じゃあ、写研写植機のほうで、となったのかも。
石井ゴのほうがすっきり見える気はする。個人的にはモリサワのゴシック体のほうが好きだけど。
ここで、2021年1月に(単発で?)再放送された曲。
1988年10月・11月初回放送の「フラミンゴのワルツ」。「ラッタッタ ラッタッタ」が印象的な尾藤イサオの歌。
その字幕が、
モリサワBT1でも、写研石井ゴシックでもない。「な」の3画目と4画目がつながっている。
モリサワ「太ゴB101」だ!
BT1のベースとなった書体であり、前回のように同時期のテレビ東京「演歌の花道」の歌詞で使用されており、デジタル化されて現在でもお目にかかるフォント。
「そ」は一筆書き
↑BT1や石井ゴでは、2画の「そ」。太ゴB101も、もしかしたらデビュー当初は2画で、途中から(この時点ですでに)一筆書きに改訂されたのかもしれない。
同時期新作の他の3曲のうち、公式サイトの画像で確認できた「みんなでステップ」と「風の歌が聞こえますか」でも、同じくB101を使っている。
この前月の4曲は不明。次月以降は、以前のようにBT1をメインとしながら、たまに石井ゴを使っている。
したがって、かなり例外的に、太ゴB101が使われたことになる。
NHKのモリサワ写植機の中に、BT1がセットされていない個体があって、それを使わざるを得なかったとか、書体の指定もしくは操作のミス(我々素人がパソコンでやりがちだけど)で、うっかりB101を使ってしまったとかだろうか。
ただし、冒頭の歌手・アニメーション作者表示。
これだけ石井ゴシック
通常ならば、BT1にせよ石井ゴにせよ、歌詞と同じ書体で表示されるようだが、これも例外的。
なお、表示位置は上下左右中央まちまちだが、これは映像を邪魔しない配慮だと思う。文字のサイズ(長体/平体を含む)や改行・行間隔も統一されていないが、これは単にこだわりがないためかも。
余談だが、歌手名は「うた」とされるのが基本だが、堺正章版の「北風小僧の寒太郎」では「歌」と漢字表記。
「神父さんのパイプオルガン」は歌詞と同じく石井ゴ
1985年4月・5月放送の「ああおかしいね」という歌。これも銀色夏生作詞で、筒美京平作曲。
歌詞と同じくBT1
「う」は、BT1より石井ゴのほうが縦に長い印象。「尾」の「毛」の右への飛び出しや、「真」の下の点のバランス、「ア」2画目の始まりの位置、小さい「ョ」の大きさなども違う。
そして、1989年1月に昭和が終わり平成へ。その直後に変化。
1989年4月・5月の「旅人のように」では、BT1が使われていたのが確認できる。
この間は、ホームページの画像に字幕が入っていないので確認できないが、1989年10月・11月の「教室大笑い」「はる なつ あき ふゆ」では石井ゴが使われ、それ以降、BT1は一切使われなくなったようだ。
したがって、1989年度の前半で、モリサワ「テレビ太ゴシック体BT1」は使われなくなってしまった。方針転換なのかもしれないが、NHKの字幕作成機器の更新によるものではないだろうか。
詳しくは不明だが、同じ辺りでテレビ東京「演歌の花道」も、太ゴB101から石井ゴに変更されている。
写研書体に一本化されたみんなのうた。1989年12月・1990年1月の所ジョージ「背中でツイスト」のセリフ部分では、丸ゴシック体の写研「ナール」が使われる。角ゴシック体以外の字幕は、みんなのうた史上初かもしれない。
翌年の「東の島にコブタがいた」でもセリフはナール。
1994年4月・5月の「ボクの勝ち」という歌では、部分的に写研「ファン蘭」というデザイン書体を使用。
そして、1994年8月・9月の「また明日」「花かんざし」、それにたしか「チュンチュンワールド~おげんきたいそう~」では、メインの歌詞としてナールが使われる。
ホームページで確認できる限りでは、10月以降もナールへ移行したかに思えるものの、1996年4月・5月「星空のオルゴール」「父さんの背番号」や、1996年6月・7月「かざぐるま」「切手のないおくりもの(2度目のリメイク)」「ずっと友達」では、石井ゴシックが復活。6月・7月の「おじいちゃんのブランコ」だけはナール。これを最後に、石井ゴシックは確認できない。
段階的移行を経て、1996年度半ばに、ナールへ完全移行ではないだろうか。【2024年6月27日コメントいただき追記・1996年4~7月の歌は、初回放送時はナールだったとのこと。となると、もう少し早い移行だったのか。】
石井ゴもナールも、写研書体だから切り替えは容易なのだろうが、明らかに見た目が違う2書体を、同じ番組の同じ時期の同じ用途で並行して使っていたのはなぜなのだろう?
その後、2003年頃までは、ナールが使われているのを確認できる。以降分は、ホームページでは歌詞がない画像ばかりになって、分からなくなる。
2003年10月・11月の「りんごのうた」では、写研のニュースタイルの角ゴシック体である「ゴナ」が使われる。
ただし、りんごのうた冒頭の歌手・映像作者表示は、昔ながらの石井ゴシック。
2000年代後半には、多くのテレビ番組で写研の字幕が使われなくなり、パソコンのデジタルフォントへ移行していき、写研はすっかり影を潜める。みんなのうたも同じ流れだったのではないだろうか。
現在では、曲によってさまざまなフォントが使われているようだ。
以上、みんなのうたの字幕書体の変遷。
2022年12月・2023年1月の再放送曲では、字幕とは別に、印象的なものが2曲あったので、後日。