静岡旅行記。前回は駅弁の話。
静岡を離れるべく、東海道本線の普通列車で、清水から熱海へ向かう。天候や気分で行程がどうなるか見通せなかったので、きっぷを買わずに、Suicaで乗車。
ただ、タイミングが合えば、乗ってみたい列車があった。313系電車の“8000番台”。※最近は接頭語を使って「313-8K」と表記する愛好家も少なくないようだ。昔は「485-1K」などとは言わなかった。
JR東海の普通列車の主流・313系電車。1999年から2014年にかけて539両が製造された。ワンマン運転対応の2両編成から、名古屋都市圏の6両編成まで存在し、それに合わせて車内設備はいろいろ。
静岡の東海道本線(熱海~浜松)では、313系と国鉄時代製造の211系電車が使われ、それらを組み合わせて3~6両で運行される(短距離では2両編成もあり)。座席はほぼロングシートのみ。
特に長距離の列車では、混雑していることも少なくなく(青春18きっぷ期間は避けたい)、座れてもロングシートで、せっかくの富士山や駿河湾、街並み・茶畑・ミカン畑といった車窓も楽しみにくくて、少々つらい旅というより移動になってしまうこともある。
でも、東海道本線の線路整備が良好なこともあるにせよ、313系は、滑らかで乗り心地が良いのは好印象。211系と併結した列車で、同じ混雑具合なら、いつも313系を選んでいた。
(再掲)313系2000番台
そんな“ロングシート王国”に、2022年春、名古屋の中央本線(いわゆる中央西線)から、313系8000番台が転属して来た。1999~2000年に、有料(乗車整理券方式)快速「セントラルライナー」用として製造された3両編成×6本。
沼津駅にて
ほかの313系は先頭部が白く(※)、側面はJR東海のカラーであるオレンジ色帯が2本。※313系登場と同時期に、美白ブームを巻き起こしていた鈴木その子さんとの連想から、鉄道愛好家らに「その子」のあだ名を付けられた。
8000番台は、先頭部も銀色。オレンジ色は前も側面も多用され派手。
所属表記は静岡車両区を意味する「静シス」に書き換えられている
車内は、ロングシートでも、ボックスシートでもなく、
2人掛け転換クロスシート
背もたれを好きな方向に変えられるだけで、リクライニングはしない。
向きを変える時は、座席全体が回るのではなく、背もたれだけをバッタンと前後(上の写真では左右)に動かす。
昔の東海道新幹線や在来線特急でも採用されていて、このように今も地域によっては見られる。東日本エリアではお目にかからない。
名古屋圏では、東海道本線の新快速などに使われる313系も、ほぼ同じ設備だが、座席の色が水色だったり、座席間隔がやや狭かったり、日除けがカーテンでなくスクリーンだったり、相違点もある。8000番台は有料快速用だっただけに、少し豪華。
中央本線のセントラルライナーは、2013年で運行終了し、8000番台は以後は無料の快速として運用されていた。ロングシートの新形式315系電車が投入され、持て余し気味で、静岡転属となったのかもしれない。
転属直後、ネット上では、身延線の特急「ふじかわ」を快速化するための車両ではないか、といった噂も流れていたが、違った。東海道本線の普通列車(身延線、御殿場線でも運用されることがあるらしい)で、ロングシートばかりの中に混ざって使われている。
具体的には、211系5000番台・LL編成と共通運用。313系8000番台のほうが優先的に運用されるようだが、整備などの都合上、211系が来る場合があるとのこと。
211系の老朽置き換えとともに、211系にはトイレがないので、その改善策として、持て余していた313系8000番台に白羽の矢が立ったのではないか、との説があるようだ。たしかに、ロングシートと2人掛けの車を共通運用するとは、少々乱暴な話だし、せっかくの8000番台の設備がもったいない【8月22日補足・座席はどうでもよく、トイレの存在を理由に、この運用に入れられているという意味で】。
8000番台は6本しかないだけに、乗車するのは難しい。
ネット上には、ダイヤごとの運用(どの便にどの形式が充当されるか)を調べて公開してくれるサイトがある。それを参考に、静岡を離れる最後、沼津始発熱海行きの電車を狙っていた。さらに運良く、その2本前、浜松発興津止まりの電車でも最後の1駅だけ、乗車できた。
3両編成の興津止まりは、最後の1駅はガラガラ。わずかな折り返し時間で再び浜松へ向かったが、車掌・運転士が場所を交換する時、時間がなかったのかもしれないが、特に背もたれの向きを変えてはいなかった。名古屋やJR西日本では、車掌が車内巡回がてら、バタバタと転換しているのだが。
前回、沼津で降りて駅弁を買ったのは、始発から8000番台に乗るため。
今度の電車は、前が8000番台、後ろが211系5000番台SS編成3両の計6両。※身延線の低いトンネルに対応したのがSS編成。LL編成は非対応。
どちらも、乗務員室扉のドアノブが高低2つ付いている。東日本の211系は1つだけのはず
沼津から乗る人は少なく、余裕で先頭のクモハ313に乗車。次の三島からもそれほどでもなく、熱海まで空席があった。
クロスシートとロングシートが混結されていれば、前者を選ぶ客が多いのではと予想したが、それほどでもないのかな。後ろの車は席が埋まっていたかもしれないが。
沼津~熱海はおよそ20分。混雑していると長い時間に感じるが、今回はあっという間。乗車券だけで、こんなに快適に、この区間を移動できたのは初めてだった。
座席の座り心地は、名古屋の新快速と同じ。373系「ふじかわ」の座席にも、ちょっと似ていて、悪くない。
どの駅でも、発車時に、後ろからぐぐっと引っ張られる、後ろの車両が重く、起動に手間取っているような感覚があった。313系と211系で、加速のタイミングやパワーが違うのは当然だけど。
なお、秋田地区の701系2両×2本の、クハ700形先頭の車両でも、同じような発進だったことがある。
通路部分に、LED式の文字情報装置があり、興津止まりの列車では作動していたが、熱海行きの列車では消灯していた。Wikipediaには「次は 熱海」と表示している写真が載っているので、この時は故障?【17日コメントいただき追記・表示は車掌が設定するため、車掌が乗る後ろの編成が211系の場合は表示させられないとのこと。】
ロングシートに慣らされた東日本エリア住民、そして静岡の人たちにしてみれば、特急かグリーン車ではないかと錯覚してしまいそう。また、不慣れなので、自分で背もたれの向きを変えるのを躊躇したり、相席や通路に立つのを遠慮したりもしそう。一方で、18きっぷシーズンなど混雑列車に充当されたら、修羅場と化しそう。
静岡地区にまだ残る211系電車も、遠くないうちに315系に置き換えられるはず。その時、313系8000番台はどんな存在になっているだろう。
客としては、普通列車であっても適材適所で座席を使い分けられたらいいのだけど、鉄道会社としては、ロングシートに落ち着いてしまうのか。
熱海駅到着。列車は浜松行きに
↑ホームのacure自販機を見て、東日本エリアへ戻ったことを思い知らされる。
ところで、JR東海のホームの自販機。
清水駅。Kioskブランド
写真の清水駅のラインナップは、コカ・コーラ商品のみ。緑茶は綾鷹。
以前は、acureのような自社ブランドのお茶があったのだが、いつの間にかなくなってしまった。緑茶だけでも、静岡茶と宇治茶がそれぞれ出ていた時期もあって、JR東海エリアを訪れる小さな楽しみだった。
熱海駅について続く。
静岡を離れるべく、東海道本線の普通列車で、清水から熱海へ向かう。天候や気分で行程がどうなるか見通せなかったので、きっぷを買わずに、Suicaで乗車。
ただ、タイミングが合えば、乗ってみたい列車があった。313系電車の“8000番台”。※最近は接頭語を使って「313-8K」と表記する愛好家も少なくないようだ。昔は「485-1K」などとは言わなかった。
JR東海の普通列車の主流・313系電車。1999年から2014年にかけて539両が製造された。ワンマン運転対応の2両編成から、名古屋都市圏の6両編成まで存在し、それに合わせて車内設備はいろいろ。
静岡の東海道本線(熱海~浜松)では、313系と国鉄時代製造の211系電車が使われ、それらを組み合わせて3~6両で運行される(短距離では2両編成もあり)。座席はほぼロングシートのみ。
特に長距離の列車では、混雑していることも少なくなく(青春18きっぷ期間は避けたい)、座れてもロングシートで、せっかくの富士山や駿河湾、街並み・茶畑・ミカン畑といった車窓も楽しみにくくて、少々つらい旅というより移動になってしまうこともある。
でも、東海道本線の線路整備が良好なこともあるにせよ、313系は、滑らかで乗り心地が良いのは好印象。211系と併結した列車で、同じ混雑具合なら、いつも313系を選んでいた。
(再掲)313系2000番台
そんな“ロングシート王国”に、2022年春、名古屋の中央本線(いわゆる中央西線)から、313系8000番台が転属して来た。1999~2000年に、有料(乗車整理券方式)快速「セントラルライナー」用として製造された3両編成×6本。
沼津駅にて
ほかの313系は先頭部が白く(※)、側面はJR東海のカラーであるオレンジ色帯が2本。※313系登場と同時期に、美白ブームを巻き起こしていた鈴木その子さんとの連想から、鉄道愛好家らに「その子」のあだ名を付けられた。
8000番台は、先頭部も銀色。オレンジ色は前も側面も多用され派手。
所属表記は静岡車両区を意味する「静シス」に書き換えられている
車内は、ロングシートでも、ボックスシートでもなく、
2人掛け転換クロスシート
背もたれを好きな方向に変えられるだけで、リクライニングはしない。
向きを変える時は、座席全体が回るのではなく、背もたれだけをバッタンと前後(上の写真では左右)に動かす。
昔の東海道新幹線や在来線特急でも採用されていて、このように今も地域によっては見られる。東日本エリアではお目にかからない。
名古屋圏では、東海道本線の新快速などに使われる313系も、ほぼ同じ設備だが、座席の色が水色だったり、座席間隔がやや狭かったり、日除けがカーテンでなくスクリーンだったり、相違点もある。8000番台は有料快速用だっただけに、少し豪華。
中央本線のセントラルライナーは、2013年で運行終了し、8000番台は以後は無料の快速として運用されていた。ロングシートの新形式315系電車が投入され、持て余し気味で、静岡転属となったのかもしれない。
転属直後、ネット上では、身延線の特急「ふじかわ」を快速化するための車両ではないか、といった噂も流れていたが、違った。東海道本線の普通列車(身延線、御殿場線でも運用されることがあるらしい)で、ロングシートばかりの中に混ざって使われている。
具体的には、211系5000番台・LL編成と共通運用。313系8000番台のほうが優先的に運用されるようだが、整備などの都合上、211系が来る場合があるとのこと。
211系の老朽置き換えとともに、211系にはトイレがないので、その改善策として、持て余していた313系8000番台に白羽の矢が立ったのではないか、との説があるようだ。たしかに、ロングシートと2人掛けの車を共通運用するとは、少々乱暴な話だし、せっかくの8000番台の設備がもったいない【8月22日補足・座席はどうでもよく、トイレの存在を理由に、この運用に入れられているという意味で】。
8000番台は6本しかないだけに、乗車するのは難しい。
ネット上には、ダイヤごとの運用(どの便にどの形式が充当されるか)を調べて公開してくれるサイトがある。それを参考に、静岡を離れる最後、沼津始発熱海行きの電車を狙っていた。さらに運良く、その2本前、浜松発興津止まりの電車でも最後の1駅だけ、乗車できた。
3両編成の興津止まりは、最後の1駅はガラガラ。わずかな折り返し時間で再び浜松へ向かったが、車掌・運転士が場所を交換する時、時間がなかったのかもしれないが、特に背もたれの向きを変えてはいなかった。名古屋やJR西日本では、車掌が車内巡回がてら、バタバタと転換しているのだが。
前回、沼津で降りて駅弁を買ったのは、始発から8000番台に乗るため。
今度の電車は、前が8000番台、後ろが211系5000番台SS編成3両の計6両。※身延線の低いトンネルに対応したのがSS編成。LL編成は非対応。
どちらも、乗務員室扉のドアノブが高低2つ付いている。東日本の211系は1つだけのはず
沼津から乗る人は少なく、余裕で先頭のクモハ313に乗車。次の三島からもそれほどでもなく、熱海まで空席があった。
クロスシートとロングシートが混結されていれば、前者を選ぶ客が多いのではと予想したが、それほどでもないのかな。後ろの車は席が埋まっていたかもしれないが。
沼津~熱海はおよそ20分。混雑していると長い時間に感じるが、今回はあっという間。乗車券だけで、こんなに快適に、この区間を移動できたのは初めてだった。
座席の座り心地は、名古屋の新快速と同じ。373系「ふじかわ」の座席にも、ちょっと似ていて、悪くない。
どの駅でも、発車時に、後ろからぐぐっと引っ張られる、後ろの車両が重く、起動に手間取っているような感覚があった。313系と211系で、加速のタイミングやパワーが違うのは当然だけど。
なお、秋田地区の701系2両×2本の、クハ700形先頭の車両でも、同じような発進だったことがある。
通路部分に、LED式の文字情報装置があり、興津止まりの列車では作動していたが、熱海行きの列車では消灯していた。Wikipediaには「次は 熱海」と表示している写真が載っているので、この時は故障?【17日コメントいただき追記・表示は車掌が設定するため、車掌が乗る後ろの編成が211系の場合は表示させられないとのこと。】
ロングシートに慣らされた東日本エリア住民、そして静岡の人たちにしてみれば、特急かグリーン車ではないかと錯覚してしまいそう。また、不慣れなので、自分で背もたれの向きを変えるのを躊躇したり、相席や通路に立つのを遠慮したりもしそう。一方で、18きっぷシーズンなど混雑列車に充当されたら、修羅場と化しそう。
静岡地区にまだ残る211系電車も、遠くないうちに315系に置き換えられるはず。その時、313系8000番台はどんな存在になっているだろう。
客としては、普通列車であっても適材適所で座席を使い分けられたらいいのだけど、鉄道会社としては、ロングシートに落ち着いてしまうのか。
熱海駅到着。列車は浜松行きに
↑ホームのacure自販機を見て、東日本エリアへ戻ったことを思い知らされる。
ところで、JR東海のホームの自販機。
清水駅。Kioskブランド
写真の清水駅のラインナップは、コカ・コーラ商品のみ。緑茶は綾鷹。
以前は、acureのような自社ブランドのお茶があったのだが、いつの間にかなくなってしまった。緑茶だけでも、静岡茶と宇治茶がそれぞれ出ていた時期もあって、JR東海エリアを訪れる小さな楽しみだった。
熱海駅について続く。