10月23日の佐竹敬久秋田県知事による、四国(特に愛媛県と高知県)の食べ物をけなす発言が全国的に問題になって、翌日に謝罪をすることになった。
秋田県民のひとりとして、発言内容には同意できないし、そういう発言をしてしまう人が秋田県知事であることが、情けなく恥ずかしい。四国と四国に関係する皆様に、県民としてお詫びします。
報道やネットでは、「(愛媛の)じゃこ天が貧乏くさい」部分だけが取り沙汰されている感じがするので、もう少し広い視点で雑感。24、25、26日付の秋田魁新報の紙面と電子版も参考にしました。
発言の場は、23日に秋田キャッスルホテルで開かれた、「秋田の未来を創る協議会」なる組織の設立会議。
協議会は、各界の代表者が一丸となって、秋田の活性化を目指す。秋田県商工会連合会会長(注・商工会議所ではなく商工会)が呼びかけ人、その他、県議会議員連盟会長、秋田大学学長、秋田商工会議所会頭(=辻氏)らが共同代表を務める。佐竹知事は最高顧問。
設立会議では、協議会へ期待することをテーマに、佐竹知事の講演が行われた。出席者(聴講者)は、県議会議員や県内の市町村長など、160人ほどいた模様。
四国をこき下ろす前後には、「秋田ほどうまいものあるところはない。」「さまざまな自然、あとは風、水、美人(男女問わず)」も秋田にあると発言。それらの価値を見極めて、伸ばしていかれるよう、秋田県人の思考を変えていくことが、協議会の最終目的である、みたいな内容。
「四国なんかね、もう大変ですよ。」と発言しているが、具体的に挙げたのは、愛媛のじゃこ天と酒のほか、高知県の「どろめ(※知らなかったが、イワシの稚魚)」のみ。【11月1日補足・酒については、あいまい。四国全体について言っているようにも取れるが、「知事会」とつなげているので、じゃこ天と同一の愛媛県の酒とも取れる言い方。】
香川県は「なんとね、普通のね、どこでも食えるようなね。」とあいまい。徳島県には言及はなし。
愛媛と高知に失礼なのは変わらないが、2県だけで「四国」とひとくくりにするのは乱暴。「東北」に置き換えてみれば分かるように。
そして、秋田では「自然、あとは風、水、美人」まで挙げているのに、四国では食べ物にしか触れていないのは、不公平だ。
佐竹知事は謝罪時に、四国には大きな企業があって、売り込みも積極的なので、うらやましさと、強気で来るという思いがあって、今回の発言に至ったと釈明した(食べ物とつながらないじゃないか)。食べ物以外では勝ち目がないから、食べ物だけ槍玉に挙げたととらえていいのでしょうね。
それら以前の話として、複数の報道によれば、10年前に愛媛県で行われた全国知事会では、食事にじゃこ天は出なかったという。じゃあ、自分で飲食店に入って注文したのかもしれないが、だったら、ステーキとじゃこ天を勘違いすることはないだろう。あと、出されたじゃこ天が「300円」とも発言しているが、どうして分かったのか?
この人は何を言ってるんだ? 作り話は「漫談」なら許されるかもしれないが、これは講演。
今回の講演は、食べ物をテーマにしたものではない中、個人の好き嫌いが大きい食べ物のみをネタとするのは、上手な構成ではないと思う。
そして、マスコミが取り上げるとは思わなかったのかもしれないが、だとしても、会場の160人の中に、四国出身者、身内や知人恩人が四国にいる人、四国が大切な土地である人もいるかもしれない。それを【11月1日補足・自分の発言で、聴講者が不快な思いをするかもしれないことを】思えば、うかつに四国をけなすことはできない(けなさないでおくほうが無難な)のは、75年も生きているのに、想像できなかったのだろうか。
【11月1日追記・2022年に問題となった「比内地鶏は硬い」発言は、大雨被害の支援を求める生産者団体との面会の場での発言。柔らかければ被害が生じなかったわけでもなく、ダメージを受けている人たちに対して急いで伝えることではない。相手の気持ちを考えない発言として、今回にも通じると思う。
なお、比内地鶏の硬さをなんとかするということは、新たな需要や販路の拡大としてあってもいいと思う。そうだとしても、農林部、畜産試験場、総合食品研究センター、県立大学など、秋田県側も率先して取り組むことができる課題であって、県知事が一方的に「硬い」と文句をつける立場ではない。】
そもそも、「秋田の未来を創る」時に、「他県をけなす」ことが必要だろうか。
そんなことをする人が、「最高顧問」を務める協議会に期待できるのか。辞するか、もしくは「最低顧問」に役職を替えてもらってはどうでしょう。
騒動で始まった「秋田の未来を創る協議会」が、良い成果を出してくれることを祈ります。
さて、言うまでもなく、四国4県にはいいものがたくさんある。3度しか訪れたことがないが、佐竹知事よりはたくさん挙げられそうだ。
温暖な気候、瀬戸内海の島々、雄大な太平洋、松山市を始めとする各県庁所在地のにぎわい、【29日追記・高知県などの南国情緒あふれる町や自然、】山間部の風景や文化、地域独特の農産物、お遍路さんの接待に由来するもてなしの心。
ちなみに、訪問中にイヤな思いをしたのは、高松市で、おそらく生まれて初めて35℃越えの気温を経験して参ったのと、JR予讃線に宇多津(うたづ)駅と多度津(たどつ)駅が近くにあってまぎらわしく、行ったり来たりしていたら高松と松山もこんがらがってしまったことくらい。
日本人ならたいていは知っているであろう「ポンジュース」も、JA系列「えひめ飲料」のブランド。秋田でもスーパーで見かけるが、ほかにJR東日本クロスステーション「acure made」ブランド限定販売のうんしゅうみかん100%ジュース「愛媛みかん」が、2021年から毎年秋冬に発売されている。※acureとPOMのダブルブランド商品。【29日補足・よく見かける「ポンジュース」はオレンジも使われているが、本品はミカンのみ。】
280ml180円、じゃこ天に比べると高いかな。でもおいしい
秋田駅を含むJR東日本の駅などの飲料自動販売機で「POM 愛媛みかん」が買える。
では、JR四国の駅で「秋田」の商品が何か買えるだろうか。
青森にはリンゴジュースなどを作る「JAアオレン」がある。ポンジュースの青森リンゴ版と言えよう。【29日補足・正式名称「青森県農村工業農業協同組合連合会」。】
25年前、弘前大学農学部の農業経済学分野の先生が「愛媛のポンジュースは誰でも知っている。でも(青森県外において)アオレンは… その違いは?」という話をされていた。佐竹知事が釈明した「四国は売り込みが積極的で強気」とかいうのは、間違いではないのかもしれない。
【29日補足・acureのリンゴジュースで、アオレンが製造する商品もあるが、acureのみのブランドになっている。リンゴジュースの加工量・販売量とも、国内トップ級だそうだが、ポンジュースより知名度は低いのが現状。「四国」のように、秋田の枠にこだわらず「東北」全体で未来を創ることも必要では?】
※2024年1月には、東北のイオングループ店舗で、愛媛県フェアが開催された。
秋田県民のひとりとして、発言内容には同意できないし、そういう発言をしてしまう人が秋田県知事であることが、情けなく恥ずかしい。四国と四国に関係する皆様に、県民としてお詫びします。
報道やネットでは、「(愛媛の)じゃこ天が貧乏くさい」部分だけが取り沙汰されている感じがするので、もう少し広い視点で雑感。24、25、26日付の秋田魁新報の紙面と電子版も参考にしました。
発言の場は、23日に秋田キャッスルホテルで開かれた、「秋田の未来を創る協議会」なる組織の設立会議。
協議会は、各界の代表者が一丸となって、秋田の活性化を目指す。秋田県商工会連合会会長(注・商工会議所ではなく商工会)が呼びかけ人、その他、県議会議員連盟会長、秋田大学学長、秋田商工会議所会頭(=辻氏)らが共同代表を務める。佐竹知事は最高顧問。
設立会議では、協議会へ期待することをテーマに、佐竹知事の講演が行われた。出席者(聴講者)は、県議会議員や県内の市町村長など、160人ほどいた模様。
四国をこき下ろす前後には、「秋田ほどうまいものあるところはない。」「さまざまな自然、あとは風、水、美人(男女問わず)」も秋田にあると発言。それらの価値を見極めて、伸ばしていかれるよう、秋田県人の思考を変えていくことが、協議会の最終目的である、みたいな内容。
「四国なんかね、もう大変ですよ。」と発言しているが、具体的に挙げたのは、愛媛のじゃこ天と酒のほか、高知県の「どろめ(※知らなかったが、イワシの稚魚)」のみ。【11月1日補足・酒については、あいまい。四国全体について言っているようにも取れるが、「知事会」とつなげているので、じゃこ天と同一の愛媛県の酒とも取れる言い方。】
香川県は「なんとね、普通のね、どこでも食えるようなね。」とあいまい。徳島県には言及はなし。
愛媛と高知に失礼なのは変わらないが、2県だけで「四国」とひとくくりにするのは乱暴。「東北」に置き換えてみれば分かるように。
そして、秋田では「自然、あとは風、水、美人」まで挙げているのに、四国では食べ物にしか触れていないのは、不公平だ。
佐竹知事は謝罪時に、四国には大きな企業があって、売り込みも積極的なので、うらやましさと、強気で来るという思いがあって、今回の発言に至ったと釈明した(食べ物とつながらないじゃないか)。食べ物以外では勝ち目がないから、食べ物だけ槍玉に挙げたととらえていいのでしょうね。
それら以前の話として、複数の報道によれば、10年前に愛媛県で行われた全国知事会では、食事にじゃこ天は出なかったという。じゃあ、自分で飲食店に入って注文したのかもしれないが、だったら、ステーキとじゃこ天を勘違いすることはないだろう。あと、出されたじゃこ天が「300円」とも発言しているが、どうして分かったのか?
この人は何を言ってるんだ? 作り話は「漫談」なら許されるかもしれないが、これは講演。
今回の講演は、食べ物をテーマにしたものではない中、個人の好き嫌いが大きい食べ物のみをネタとするのは、上手な構成ではないと思う。
そして、マスコミが取り上げるとは思わなかったのかもしれないが、だとしても、会場の160人の中に、四国出身者、身内や知人恩人が四国にいる人、四国が大切な土地である人もいるかもしれない。それを【11月1日補足・自分の発言で、聴講者が不快な思いをするかもしれないことを】思えば、うかつに四国をけなすことはできない(けなさないでおくほうが無難な)のは、75年も生きているのに、想像できなかったのだろうか。
【11月1日追記・2022年に問題となった「比内地鶏は硬い」発言は、大雨被害の支援を求める生産者団体との面会の場での発言。柔らかければ被害が生じなかったわけでもなく、ダメージを受けている人たちに対して急いで伝えることではない。相手の気持ちを考えない発言として、今回にも通じると思う。
なお、比内地鶏の硬さをなんとかするということは、新たな需要や販路の拡大としてあってもいいと思う。そうだとしても、農林部、畜産試験場、総合食品研究センター、県立大学など、秋田県側も率先して取り組むことができる課題であって、県知事が一方的に「硬い」と文句をつける立場ではない。】
そもそも、「秋田の未来を創る」時に、「他県をけなす」ことが必要だろうか。
そんなことをする人が、「最高顧問」を務める協議会に期待できるのか。辞するか、もしくは「最低顧問」に役職を替えてもらってはどうでしょう。
騒動で始まった「秋田の未来を創る協議会」が、良い成果を出してくれることを祈ります。
さて、言うまでもなく、四国4県にはいいものがたくさんある。3度しか訪れたことがないが、佐竹知事よりはたくさん挙げられそうだ。
温暖な気候、瀬戸内海の島々、雄大な太平洋、松山市を始めとする各県庁所在地のにぎわい、【29日追記・高知県などの南国情緒あふれる町や自然、】山間部の風景や文化、地域独特の農産物、お遍路さんの接待に由来するもてなしの心。
ちなみに、訪問中にイヤな思いをしたのは、高松市で、おそらく生まれて初めて35℃越えの気温を経験して参ったのと、JR予讃線に宇多津(うたづ)駅と多度津(たどつ)駅が近くにあってまぎらわしく、行ったり来たりしていたら高松と松山もこんがらがってしまったことくらい。
日本人ならたいていは知っているであろう「ポンジュース」も、JA系列「えひめ飲料」のブランド。秋田でもスーパーで見かけるが、ほかにJR東日本クロスステーション「acure made」ブランド限定販売のうんしゅうみかん100%ジュース「愛媛みかん」が、2021年から毎年秋冬に発売されている。※acureとPOMのダブルブランド商品。【29日補足・よく見かける「ポンジュース」はオレンジも使われているが、本品はミカンのみ。】
280ml180円、じゃこ天に比べると高いかな。でもおいしい
秋田駅を含むJR東日本の駅などの飲料自動販売機で「POM 愛媛みかん」が買える。
では、JR四国の駅で「秋田」の商品が何か買えるだろうか。
青森にはリンゴジュースなどを作る「JAアオレン」がある。ポンジュースの青森リンゴ版と言えよう。【29日補足・正式名称「青森県農村工業農業協同組合連合会」。】
25年前、弘前大学農学部の農業経済学分野の先生が「愛媛のポンジュースは誰でも知っている。でも(青森県外において)アオレンは… その違いは?」という話をされていた。佐竹知事が釈明した「四国は売り込みが積極的で強気」とかいうのは、間違いではないのかもしれない。
【29日補足・acureのリンゴジュースで、アオレンが製造する商品もあるが、acureのみのブランドになっている。リンゴジュースの加工量・販売量とも、国内トップ級だそうだが、ポンジュースより知名度は低いのが現状。「四国」のように、秋田の枠にこだわらず「東北」全体で未来を創ることも必要では?】
※2024年1月には、東北のイオングループ店舗で、愛媛県フェアが開催された。