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音楽教科書 採択理由?

2023-10-12 20:55:05 | 秋田のいろいろ
勇気一つを友にして」で、音楽の教科書の話が出てきたので、思い出して調べたこと。

日本では、教科書は複数の出版社が作成し、国の検定を受ける。検定に合格した中から、各地域もしくは各学校ごとに、それぞれが使う出版社を選んで決める「採択」をして、児童生徒に配られる。
採択は、公立小中学校は市町村ごと、国立大学附属や私立の小中学校と、公私とも高等学校では、各学校ごとに(ただし公立高校では、名目上はその設置者)採択を行う。

小中学校では、市町村ごとではなく、周辺の市と郡などで同じ採択をする「共同採択」が行われたり、都道府県教育委員会が「教科用図書選定審議会」を設置して、各市町村に採択の助言をする制度があるため、同一県内なら教科書のラインナップは似たものになる傾向はあるようだ。

秋田市の国語の光村図書や地図帳の帝国書院のように、永年、採択が不変の教科書もある。全国的なシェアを踏まえれば、その選択に一理あるのだろうなというものもあるし、地域ごとの実情で選んだ結果(後述)というものもあるようだ。
一方で、変更されることもある。秋田市では1990年度に中学校英語の採択が変わった。それに巻き込まれて、いい迷惑だった
採択変更は、県や市の教育委員会が教科書の改訂内容を吟味した結果ということなのだろうけれど。また、近年は、出版社の廃業や(学校種や教科など部分的な縮小も含めて)教科書事業からの撤退もあり、変えざるを得ないこともあろう。
ただ、検定に関する不祥事も報道される昨今、裏で何かやった結果なのではと、勘ぐりたくもなる。


小中の音楽の教科書(中学校「器楽」も含む)。
1990年代半ばまでは音楽之友社も出版していたが、現在は高校用のみに縮小。教育出版と教育芸術社の2社になった。2000年代頃まで東京書籍も出していたような情報がある。
教育出版は、多くの教科の教科書を出す総合出版社。秋田市では算数・数学が永年同社(秋田県内他地区は東京書籍が多い)。対して教育芸術社は、音楽専門出版社。全国的なシェアは小中では不明だが、高校では3社中、教育芸術社がおよそ半分を占めるとのこと。

Wikipediaによれば北海道では、教育芸術社のシェアが低いという。
その理由は、教育出版の小学校教科書に「札幌の空」という合唱曲(これもみんなのうた作品とのこと)が掲載されているためらしい。

秋田県。※採択結果は秋田県教育庁がホームページで公開している。最新版のコンテンツ番号は小学校44384、中学校59748。
小学校では、由利本荘にかほ、湯沢雄勝と秋田大学教育文化学部附属小が教育出版。秋田市などその他8地域は教育芸術社。(私立小学校は存在しない)

中学校では、9地域すべてと秋大附中が教育芸術社。
私立中学校はない(聖霊中は休止)が、県立中高一貫校3校の中学部は、高校と同じように各学校ごとに採択することになっていた。県立秋田南高等学校中等部(市立秋田南中とは異なります)と県立横手清陵学院中学校も、教育芸術社。
そして、県立大館国際情報学院中学校だけが、教育出版だった。
秋田県教育庁「令和4年度使用中学校教科用図書 県内採択地区等採択結果」より抜粋・加工
秋田で教育芸術社のシェアが高いのは、単純に内容がふさわしいのかもしれないが、うがった見方をすれば、多少の忖度というか、郷土愛的な視点も入っているのかもと、前から思っていた。
何度か取り上げているように、合唱曲の作曲・編曲を多数手がけ、教育芸術社の役員でもある、橋本祥路(はしもと しょうじ)氏が、秋田県出身だから。

ところで、橋本祥路氏は大館市出身(出典:県立大館桂桜高等学校校歌資料)、県立大館鳳鳴高等学校卒。
全国各地の校歌の作詞作曲もしている。作詞は「花岡恵(はなおかけい)」の名義で行うのだが、大館市花岡町と関係があるのかもと思っていた。それが筆名の由来かは分からないが、秋田県北秋田市ホームページ「第2回浜辺の歌音楽祭(コンテンツ番号9602)」に「大館市花岡町出身の作曲家・橋本祥路(しょうじ)氏による講評」とあるので、花岡とゆかりはある人だ。
秋田県内では、秋田市立飯島中学校、秋田市立雄和小学校(作詞も)、横手市立横手北小学校、県立大館桂桜高等学校、県立大館国際情報学院を作っている(他にもあるかも)。
大館国際情報学院の校歌も。
それなのに、同校の教科書は教育芸術社ではない。
その町出身者が、その町にある学校の校歌を作ったからといって、その人の勤務先の商品を買わなければいけないわけはないし、教科書の場合、その理由で買ったとなれば問題になりかねない。
だけど、もし、橋本氏と学校長などが会う機会があったら、なんか気まずくなりそうだし、教育芸術社の営業社員が「弊社の橋本がよろしく申しておりました」とひと押しすれば…などと妄想してしまう。
大館国際情報学院は、忖度なしで、純粋に教育出版を選んだのだろう。かなりのこだわりがあったのか。
他の県立一貫校2校を見ても、秋田南高中の数学が啓林館(※)など、ピンポイントで珍しい(周辺市郡や秋大附中が採択しない)会社を選んでいる教科はあるから、各校の教育方針により合致したものを選んで、独自性を示したのだろうか【12日追記・高等部で採択した教科書と出版社を統一して、連続性を持たせる狙いがある場合もありそうだが、各高校の採択結果はネットではなかなか分からない。】。教わる側よりも、教えるほう、他校から異動してくる先生にしてみれば、使ったことがない教科書なわけで、戸惑うこともあるのかもしれない。
※啓林館(けいりんかん)は、中学校の数学と理科では、全国ではトップシェアのようだが、秋田県では秋田南高中の数学以外は採択なし、小学校も皆無。こういう地域差はどこから来るのか興味深い。


ホームページでの教科書紹介は、教育出版より教育芸術社のほうが圧倒的に情報が多く、素人が眺めてもおもしろい。昔の内容も紹介してくれる光村図書には及ばないけれど。
掲載曲一覧もあり、特に小学校では、30年以上前と変わらないものもあれば、前回の「明日という大空」のように掲載学年が移動した作品もある。「アマリリス(昭和末では4年生)」「ジャマイカンルンバ(同5年生)」などは消えてしまった。中学部は、昔の記憶がほとんどないが、J-POPがかなり増えている。器楽では「笑点のテーマ」なんてのも。

昭和63年度の秋田市の教科書採択について
コメント (2)
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