武田じゅうめい 愛と誠と正義

色即是空とは、すべての存在は虚無であると知る。
旗印は日本愛、 日本人には日の丸が足りない

新春対談 立花隆氏と (2章) 

2007年01月04日 | 人生の意味
立花 「官僚の世界で何が一番大切かといえば、順位である。官僚の世界の基本ルールは、幾つかあるが、最大のルールは順位を乱さないことである。順位の基本は何かというと入省年次プラス入省時の席次である。同じ年に入った官僚たちは、毎年席次に従って同じように出世していく。一定のポストをローテーションでまわりながら階級を一つずつ上がっていく。上位に行くに従ってポストの数が減り、上がれない人は外局に出るか、外部に転出していく。本省局長になれる人は局の数だけしかいないし、次官になれるのは一人だけだ。

じゅうめい 「それは権力のヒエラルキー構造だから、現在のシステムではそうなる」

立花 「このシステム(年功序列。席次制)は、明治国家の創設以来、日本の官僚社会でずっとつづいてきた慣習で、これを破ることは事実上不可能といっていいほど日本の社会に根深く入りこんでいる。おそらくその起源は、奈良平安朝の昔まで、あるいはそれ以上に古いところまでたどれるのではないだろうか。」

じゅうめい 「問題は、そういう官僚制がこのままでいいのかどうかということだと思う。将来的に変革を余儀なくされていくのか、官僚栄えて国滅ぶという転倒した状況にならなければいいが。 アメリカの日本研究シンクタンクは、日本の官僚システムは機能不全に陥っていると分析している。つまり官僚独裁体制になっており、アメリカ民主主義の基本であるチェック&バランスが働かず、澱みの中で腐敗臭がしているのではないかと、官製(官僚)談合、カラ出張、豪華な官舎に低家賃で住む、公共イベントに絡む多額の賄賂、裏金作り、例を上げたら切りがない。それではアメリカが日本の政治家と話をするかというと、話し相手になる政治家がいないという」

立花 「同じシステムが、陸軍、海軍の軍人の序列と進級にも働いている。昇級進級の基準が、陸軍の場合は士官学校の卒業席次、海軍の場合は海軍兵学校の卒業席次。日本の陸海軍をダメにしたのは、この順位席次システムであると昔からいわれつづけたが、それがゆるめられることはなかった。同じように、官僚の世界でも、このシステムがいけないと何度も言われながら、ほとんど全く変わることなく、明治以来今日までつづいている。」

じゅうめい 「官僚は顔が見えないからね、顔が見えないことをいいことにして、責任を取ろうとしないし、先送りばかりして、問題の解決に対処できなかった。戦後の第二の敗戦といわれた金融システムの崩壊、つまり莫大な不良債権債務処理は、結局は竹中さんがやった。まだ生臭いから明確な評価は出てきていないが、竹中さんは後になればもっと評価されるだろう。彼を5年間、使い続けた小泉さんも大したものだ。その点は少しもぶれなかった。その点、財務省は何もしなかったといっていい。そのお陰で銀行団は現在、史上最高の利益を上げている。税金は払っていないけどね」

立花 「このようなシステムの中で、事務次官会議を仕切る官房副長官は官僚トップの身分である全省庁の次官を集めてそれを仕切る役だから、官僚の最高のポストと目されている。そして、これまでは、全官僚から、この人ならと目される人が選ばれてその椅子に座ってきた。通例それは旧内務省系(警察庁、自治省、厚生労働省など)の次官が選ばれてきた。そしてその椅子に座る人は、それなりの存在感を持って全官僚を威圧できる人だった。その典型とされるのが、田中内閣時代の後藤田正晴官房副長官である。

じゅうめい 「カミソリ後藤田か、皆に恐れられたが、あの人の本当の顔は、情に厚い人だったね、大局感で物を見る人でした。だから副総理までやれたんだろうけど、政治家になってからは官僚を批判していた。つまり官僚機構という強大な制度の中で、国家経営を担っているという責任感を本当に持っているだろうかという後輩に対する期待と懐疑だね。 事実、その後大蔵省(財務)、外務省スキャンダルが噴出して逮捕者続出になった。 彼一人では官僚制が変わるものではないし、官僚制は日本に巣くう強大な権力構造そのものだから、そういう意味においては、政治家の力なんて小さく見えてくるね」

立花 「田中内閣時代の田中角栄の支配力の半分くらいは後藤田官房副長官の威圧力によるものといわれた。そのパワーを大いに評価した田中角栄は、後藤田が官僚を引退すると、これをすぐに選挙に出して、代議士にし、田中派の重鎮にしてしまった。後に中曽根が総理大臣になると、この後藤田の能力をもう一度利用したいということで、官房長官にしてしまい、中曽根時代は後藤田時代でもあったといわれるほどの辣腕をふるって内閣を切りまわした。

じゅうめい 「官僚テクノラートの最たるものだろうね。 代議士は利権構造に群がる蟻みたいなところがあって、当時は今よりひどかった。 政界をよく知っている人が言うには、3割の代議士は高潔であり、真摯であるが、残りは、利権調整屋だそうな。
最近でも農水大臣が、やばいカネをもらっていても、もらっていないと公言するし、頭にパンツかぶって尻隠さずだからね」

立花 「安倍首相が的場順三をもって官房副長官にすえたとき、これは意外の目をもって見られた。的場は国土庁事務次官の経験者であるとはいえ、そのときすでに73歳で、とっくに適齢期をすぎての任官だった。現役の次官たちとは直接の面識がなく、顔で仕切れるような実績も人間関係もなかった。出身も京都大学卒の大蔵官僚で、大蔵省での最高ランクが主計局次長だったから、官僚としては、二流のキャリアしか持っていない。」

じゅうめい 「官僚は東大法卒の成績順で財務官僚に内定していくから、その辺の押しと悪の強さが求められるのだろうか、最終的には人物論じゃなくて、成績順で決定されていくか」

立花 「国土庁事務次官を経て民間に出てから、大和総研理事長を3年ほど務めたあとは、安倍首相に突然大抜擢されるまで、大和総研特別顧問といったポストにしかついていない。なぜこの人を安倍首相が大抜擢して官房副長官という要職につけたのか、誰にもよくわからない。

じゅうめい 「ふむ」
立花 「結局なぜ安倍首相が的場を官房副長官すえたのかよくわからないまま様子見をしていた官僚たちも、すぐに、的場の力を見抜いてしまったので、的場は田中内閣時代の後藤田官房副長官とは逆の立場になりつつある。つまり、存在感がどんどんなくなり、おさえがきかなくなって現場の官僚たちに逆に仕切られてしまっているということだ。そういう状況下で、安倍首相も必然的に高級官僚たちになめられてしまっている。

じゅうめい 「安倍さんは若いというか、小泉さんのように何度も修羅場をくぐっていないからね、後見人が森、中川(秀)さんで早慶内閣も悪くないけど人がいいから情に流されるところがある、東大の智に働いてやるところは凄みはあるが角が立つか」

立花 「そのあたりが安倍首相と安倍首相の尊敬する祖父の岸信介といちばんちがうところだ。岸は東大法学部でいつも主席を奪うほどの大秀才で、商務省に入って官僚になってからも常に官僚の世界で、抜群に切れる男として他の省庁にも鳴り響くほどの名をほこっていたから、総理大臣になってからも、難なく誰の助けも借りずに楽々と、官僚世界を支配した。岸は稀代の論争家でもあり、必要とあらば官僚と正面切った論争をして、官僚を理屈でねじふせることもできた。

じゅうめい 「当時の金時計組だね、民法の大権威,故我妻栄東大教授とは無二の親友で最後まで親交が厚かった」

立花 「しかし、安倍首相にはそのような能力が決定的に欠けている。学歴にしても成蹊大学というお坊ちゃん大学の出身で、東大生を家庭教師に雇って勉強を教えてもらったほうだから、どうしても東大卒のトップ官僚たちにコンプレックスをもってしまうのである。

じゅうめい 「東大卒だから頭がいいとは限らないけどね」

(続)
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