僕はアポロ計画の記憶がおぼろげながらある。もちろん、報道や本、映画「Apollo 13」(1995)等による追体験により構築・再構築された部分も含めてだ。ただ、アポロ11号の月着陸ミッションは、アポロ13号の事故の記憶に影響されたのか、順風満帆とまでは言えないものの、ミッションそのものについてあまり知らないことに気がついた。これは月着陸後アームストロングが公の場でほとんど語ることなく、7年前に死去されたためでもあると思う。本作も記憶の再構築になるのかもしれない。そんなことを考えて、見に出かけた。場所はTOHOシネマズ上野、初めて出かけた劇場である。
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静かな映画
エンドロールまで見終えて感じたこと。本作、オープニングもエンディングもきわめて静か。特にエンディングはそうだ。作品全体もはらはらどきどきというよりも、あまり激しさはないと思う。クライマックスの月着陸、月面に着陸したアームストロング船長とオルドリン飛行士が星条旗を月面に立てるシーンもないし、地球帰還後のパレードのシーンもない。
アームストロングがテストパイロットから宇宙飛行士を目指し、選抜されるところ。宇宙飛行士候補生になり日々訓練に励み、過ごしていく様子。その彼を支える家族との関係を丹念に描く、ドキュメンタリー映画のような不思議な作品である。本作はアームストロングが人類初の月面着陸を成功させるまでを描いている。これは間違いないのだが、成功物語を期待するとちょっと戸惑うと思う。
映画を見るまで知らなかったこと。
彼に娘がいて、幼くして病死したこと。
映画を見て思い出したこと。
アポロ1号の事故で、3名の宇宙飛行士が殉職したこと。
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Apollo 13(1995)とはちがう!
あの作品のように、困難が次々と11号のクルーに起こるわけではない。アポロ11号のミッション成功は、多くの困難と悲劇…その中にはアームストロングがジェミニ計画で体験したものを含め…から得た知見による部分がある。そんな描き方に見えた。
ミッションを描く様子は月着陸シーンを除いて、それほどスリリングではない。
月着陸・着陸後のシーンはすごい。
着陸まで息をするのが、はばかられる感じがした。それくらいの緊張感、臨場感である。月面にアームストロング船長が降り立つシーンで、船外活動用に宇宙服を着用した2飛行士が、着陸船のハッチを開ける。残っていた空気が抜ける。無音。その場に立ち会った感じがした。
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丸顔の故アームストロングと、ゴズリングが重なるか少し心配したが問題ない。
アポロ13号事故が題材の「Apollo 13」とも、ジェミニ計画の前のマーキュリー計画が題材の「The Right Stuff」(1983)とも違うと思う。☆四つだろうか。
Tagline通り「EXPERIENCE THE IMPOSSIBLE JOURNEY TO THE MOON」大きなスクリーンで「体験」すべき映画だろう。
(文中敬称略)