能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

なぜ日本の会社は生産性が低いのか?生産性とは組織やチームの成果・・・働き方 改革活動に足りないもの

2019年02月15日 | 本と雑誌
働き方改革=生産性向上?
働く人たちの現場では、さまざまな試みがなされています。
働き方改革を推進すれば、政府の言う経済成長と分配の好循環が達成され、賃金も上がるのではないか?というインセンティブに期待も高まります。

そんな中、文春新書から「生産性」の新刊が刊行されました。


なぜ日本の会社は生産性が低いのか?
熊野英生著 文春新書

「生産性」に関する本は、IEや時間管理といったお堅いものが多いのですが、同書は久々に楽しく読める一冊に仕上がっています。
著者は、第一生命経済研究所経済調査部の主席エコノミスト。
小職が好きな経済の専門家です。

第1章の「2.ワンオペ化する日本企業の現場」を読んでいて、思わず膝をたたき
ました。

そう言えば、数十年前、日本の管理職は、本当に楽でした。
責任は重たかったですが、基本的な仕事は「判断」。若手から見ると、課長も次長も部長もハンコを押す仕事でした。
朝来ると、お茶を飲みながら新聞を読む・・・早目のランチ・・・夜は接待で夜の街に繰り出す・・・下から見ると、実
に楽しそうに見えたものです。

同書では、高齢化や少子化で組織が逆ピラミッドになり部下が減ったこと、成果主義の導入やワンオペ(「ぼっち」で仕事をする)、一人一台のパソコンで「中間管理職の兵隊化」が進んだこと、「生産性アップを個人のパフォーマンスのみに求める」こと、教育機会が減少したこと等が、今のような会社の状況を作り出したと解説します。
なるほど、そのとおりだと思います。
カネは使うな、気合と根性で生産性を上げろ・・・ホント、現場は大変です(笑)。

目次

はじめに「生産性の低下」で日本は貧しくなっている

第1章 日本の会社はなぜ生産性が低いのか?
・堕落した日本企業   OECD一人当たり国民所得で日本は先進国最下位の19位、時間当たり労働生産性も世界20位・・・
・ワンオペ化する日本企業の現場

第2章 生産性とは何だろう?
・かゆいところに手が届かない経済理論
・生産性を捉え直す
・不確実性とリスクをどうマネジメントするか

第3章 「働き方改革」の錯覚
・「働き方改革」は生産性を高めるか
・生産性上昇は個人任せでよいのか
・「目線」を高くもて
・「忠誠心」と「やる気」の正体

第4章 生産性を上げるにはどうすべきか?
・人材育成と組織改編
・無形資産の生み出すもの
・イノベーションとは何か?
・指導で導く経営管理

著者が同書の中で何度も触れるのが、「生産性とは組織やチームの成果である」ということ。
個人一人ひとりがどんなに努力したって、生産性はあがらない・・・。
「働き方改革」だって、個人の工夫で生産性を上げろという前提を取っていること、人件費削減のための成果主義導入を予定していること、日本企業はメンバーシップ型なのにジョブ型の思考をしていることといった理由から、うまく行かない
だろうと指摘しています。


これから、
・「目線」高くすることが生産性アップに繋がること
・経営者は「管理」ばかりしていないで、しっかりと「経営」すること
・集中力を高めること
・チームワークと協業
・職業への忠誠心と利他的行動

が、より重要になってくると指摘します。

さらには、品質プレミアム、非価格競争力、イノベーション、集合知、KPIとKGIといった切り口からも生産性向上に向けての切り口を提示しています。

日本の企業に勤めるサラリーパースン、特に管理監督者の方に読んでいただきたいお勧めの一冊です。

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