酔うならば、

藤が咲く
紫そまる、春終わる。
だから時の終わりが。
「この林はダメだなあ、」
かつん、
鉈が鳴る、節くれた手に木屑はじく。
かつかつ刃ならせて皺深い手、疑問こぼれた。
「じーちゃん、なんでダメなんだ?」
どうして「ダメ」なんて言う?
わからない紫の波に銀髪ふりむいた。
「うん?なんでってなんだ?藤のことか?」
「そう、」
うなずいて落ちた視線、薄紫ひとつ燈る。
茶色ひろがる足もと一滴、あわい色に祖父が言った。
「藤はなあ、からみついた木をダメにしちまうんだな。ほれ?」
かつんっ、
鉈が響いて木が香る。
舞った木屑やわらかな光、ほろ渋い甘い香に言われた。
「な?こーんなに木がスカスカになっちまう、こんなんばかりじゃあダメだ、」
節くれた指の先、切り開かれた幹は虚しい。
それでも頭上こぼれる紫まぶしくて、甘い馥郁あふれて香る。
「だめじゃないよ?僕には…」
本音そっと唇ひらく、香ただ愛しくて。

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五月花色

藤が咲く
紫そまる、春終わる。
だから時の終わりが。
「この林はダメだなあ、」
かつん、
鉈が鳴る、節くれた手に木屑はじく。
かつかつ刃ならせて皺深い手、疑問こぼれた。
「じーちゃん、なんでダメなんだ?」
どうして「ダメ」なんて言う?
わからない紫の波に銀髪ふりむいた。
「うん?なんでってなんだ?藤のことか?」
「そう、」
うなずいて落ちた視線、薄紫ひとつ燈る。
茶色ひろがる足もと一滴、あわい色に祖父が言った。
「藤はなあ、からみついた木をダメにしちまうんだな。ほれ?」
かつんっ、
鉈が響いて木が香る。
舞った木屑やわらかな光、ほろ渋い甘い香に言われた。
「な?こーんなに木がスカスカになっちまう、こんなんばかりじゃあダメだ、」
節くれた指の先、切り開かれた幹は虚しい。
それでも頭上こぼれる紫まぶしくて、甘い馥郁あふれて香る。
「だめじゃないよ?僕には…」
本音そっと唇ひらく、香ただ愛しくて。

撮影地:山藤@神奈川県2018.4


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