初雪から、
secret talk25 霜月望郷―dead of night
切るような風、もう冬になる。
はずんだ息あわく白い、くゆらす吐息に風あおる。
断崖はるか昇らす冷風、なぶられる髪ひるがえって凍てつかす。
ほろ苦い埃っぽいような、そのくせ甘い香くゆる湿度かすめて冷たい。
ほら、北西の空に雲が湧く。
「…雪か、」
尾根はるかな北と西、あの雲じき辿りつく。
そうなれば雪は降り山の様相は冬、ほっと息つき英二は笑った。
「帰るか、」
山上、吹雪に巻かれたら危ない。
そんなこと山の常識だ、それが分水嶺の山なら危険度なお高い。
危険を知りながら登るなどダメだ、自分のプライドかけて踵返した。
「また来るな?」
頂に笑って踵返す、まだ仰ぐ山頂はるか高い。
まだ1時間はかかるだろう、その往復に雪雲きっと追いすがる。
「…30分以内かな、」
ひとりごと歩きだす道が降る、登山靴かすかに底が変わる。
登りより固くなりだす道、頬ふれる大気が5分前より硬い。
「あ、」
雪だ、もう。
「風、強いのか、」
踏みだし仰ぐ空が白い、はりめぐる雲は雪はらむ。
動かないような白い空、けれど確実に流れだす冬に初雪がふる。
きっと30分後には真白おおう、そんな風と雲にたどる山路を白が舞う。
もう冬埋もれる道、ただ30分で消えるだろう。
それでは帰られなくなる、だから辿る道に微笑んだ。
「すぐ帰るよ?」
帰ろう、君に。
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宮田@第85話+XX日
secret talk25 霜月望郷―dead of night
切るような風、もう冬になる。
はずんだ息あわく白い、くゆらす吐息に風あおる。
断崖はるか昇らす冷風、なぶられる髪ひるがえって凍てつかす。
ほろ苦い埃っぽいような、そのくせ甘い香くゆる湿度かすめて冷たい。
ほら、北西の空に雲が湧く。
「…雪か、」
尾根はるかな北と西、あの雲じき辿りつく。
そうなれば雪は降り山の様相は冬、ほっと息つき英二は笑った。
「帰るか、」
山上、吹雪に巻かれたら危ない。
そんなこと山の常識だ、それが分水嶺の山なら危険度なお高い。
危険を知りながら登るなどダメだ、自分のプライドかけて踵返した。
「また来るな?」
頂に笑って踵返す、まだ仰ぐ山頂はるか高い。
まだ1時間はかかるだろう、その往復に雪雲きっと追いすがる。
「…30分以内かな、」
ひとりごと歩きだす道が降る、登山靴かすかに底が変わる。
登りより固くなりだす道、頬ふれる大気が5分前より硬い。
「あ、」
雪だ、もう。
「風、強いのか、」
踏みだし仰ぐ空が白い、はりめぐる雲は雪はらむ。
動かないような白い空、けれど確実に流れだす冬に初雪がふる。
きっと30分後には真白おおう、そんな風と雲にたどる山路を白が舞う。
もう冬埋もれる道、ただ30分で消えるだろう。
それでは帰られなくなる、だから辿る道に微笑んだ。
「すぐ帰るよ?」
帰ろう、君に。
撮影地:谷川岳@群馬県
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