ほろ苦さの馥郁に、
神無月四日、毬花―unaffected
ほろ苦い、ほろ甘い。
そして香り高いのは?
「おつかれ、」
黄昏に徹る声、よく知っている。
この声ここで再会するんだ?ただ懐かしさ笑った。
「オツカレサン、何?」
笑いかけた先、ほら?知った顔。
残暑あざやかな夕空の街、変わらない端正がきれいに笑った。
「何って光一、そんな感じ?」
笑いかける切長い瞳、白皙あいかわらず美しい。
そのくせ深い黒い眼差し「あいかわらず」だ?こんなザイルパートナーに唇の端上げた。
「ナンも無く会いに来るオマエじゃないからね、コンナ似合わないトコまでさ?」
予備校すぐ前、長身すこやかなジャケットの背が美しい。
この見た目どれだけ惑わしてきたのだろう?そんな美しい口もとが微笑んだ。
「似合わないかな俺、老けてる?」
「キッチリ美青年だよ、落ちついちゃいるけどね、」
応えながら呆れて可笑しい、そんなこと解っているクセに?
だからこそ現職が天職なのだろう、この男は。
―ソレも利用する男だから、ねえ?
ほら、街ゆく視線また振り返る、予備校生たちツイ見惚れてしまう。
コレで今日の授業すっかり忘れなきゃいいけどね?そんな空気の中心に言った。
「オマエは予備校なんざご縁無いだろが、何しに来たね?」
それくらい優秀で有能な元同僚、そしてたぶん「何」も無くここに来たりはしない。
その伸びやかな脚かろやかに三歩、きれいな低い声が微笑んだ。
「ちょっと話したくてさ、時間いいかな?」
微笑んだ切長い瞳、ダークブラウンの髪きらめいて風が梳く。
きれいな笑顔、けれどそれだけではない男に笑った。
「コレでも俺は受験生だからねえ?一刻千金ってヤツだよ、」
「受験生でも、社会人入学の枠なんだろ?」
問い返してくる視線、穏やかなくせ鋭利に深い。
何気ないようで緊迫が匂う、そんな空気ながめながら唇の端上げた。
「フツーに受験だよ、俺は高卒任官だったからねえ。オマエと違ってさ?」
おまえと違ってエリートじゃないよ?
応えながら歩きだす隣、ジャケットの肩あざやかに並んだ。
「なんか俺のこと怒ってる?ごめん、」
きれいに響く低い声、ふっと香る。
ほろ苦い甘い、どこか森のような香に笑った。
「怒ってるワケじゃないね、メンドウだなっては思うけどさ?」
「面倒?」
訊き返してくる視線、戸惑かすかに揺れる。
やっぱり「面倒」なんだ?推測と歩きながら言った。
「だってねオマエ、警察のヤツが持ってくる話なんてね?イッパン人からしたらメンドウだろが、」
もう自分は一般人の民間人、その前提あらためて示す。
忘れるわけにいかない線引きに、端整な微笑は口ひらいた。
「面倒でごめん、でも光一に訊いてみたいんだ、」
穏やかな笑顔、けれど視線まっすぐ鋭利に見つめてくる。
こういうところ変わらず反則だな?呆れながら笑った。
「ゴキタイありがたいけどね、守秘義務ヤバいんじゃないかね?」
そんなこと解っているだろう、この男は。
それだけ優秀で有能で解っている、それでも元同僚は頭下げた。
「相談させてほしいんだ、頼む、」
きれいな低い声のまま、けれど白皙の頬かすかに汗伝う。
この男が緊迫している、それだけ「面倒」で追いつめられる何かがある。
おそらく放り出したらソレもまた「面倒」かもしれない?それになにより、
―ふうん?ちっと聞いてみたいかもね、
この男が何かに「緊迫」追い立てられる、その原因たぶん普通じゃない。
それくらい有能な元同僚に、からり笑った。
「こう暑いとさ、ビールいいよね?」
当然おごってくれるよね?
ふくんだ発言、切長い瞳ゆっくり瞬いて微笑んだ。
「赤いビールが旨い店あるんだ、秋らしくていいだろ?」
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10月4日誕生花ホップ毬花
神無月四日、毬花―unaffected
ほろ苦い、ほろ甘い。
そして香り高いのは?
「おつかれ、」
黄昏に徹る声、よく知っている。
この声ここで再会するんだ?ただ懐かしさ笑った。
「オツカレサン、何?」
笑いかけた先、ほら?知った顔。
残暑あざやかな夕空の街、変わらない端正がきれいに笑った。
「何って光一、そんな感じ?」
笑いかける切長い瞳、白皙あいかわらず美しい。
そのくせ深い黒い眼差し「あいかわらず」だ?こんなザイルパートナーに唇の端上げた。
「ナンも無く会いに来るオマエじゃないからね、コンナ似合わないトコまでさ?」
予備校すぐ前、長身すこやかなジャケットの背が美しい。
この見た目どれだけ惑わしてきたのだろう?そんな美しい口もとが微笑んだ。
「似合わないかな俺、老けてる?」
「キッチリ美青年だよ、落ちついちゃいるけどね、」
応えながら呆れて可笑しい、そんなこと解っているクセに?
だからこそ現職が天職なのだろう、この男は。
―ソレも利用する男だから、ねえ?
ほら、街ゆく視線また振り返る、予備校生たちツイ見惚れてしまう。
コレで今日の授業すっかり忘れなきゃいいけどね?そんな空気の中心に言った。
「オマエは予備校なんざご縁無いだろが、何しに来たね?」
それくらい優秀で有能な元同僚、そしてたぶん「何」も無くここに来たりはしない。
その伸びやかな脚かろやかに三歩、きれいな低い声が微笑んだ。
「ちょっと話したくてさ、時間いいかな?」
微笑んだ切長い瞳、ダークブラウンの髪きらめいて風が梳く。
きれいな笑顔、けれどそれだけではない男に笑った。
「コレでも俺は受験生だからねえ?一刻千金ってヤツだよ、」
「受験生でも、社会人入学の枠なんだろ?」
問い返してくる視線、穏やかなくせ鋭利に深い。
何気ないようで緊迫が匂う、そんな空気ながめながら唇の端上げた。
「フツーに受験だよ、俺は高卒任官だったからねえ。オマエと違ってさ?」
おまえと違ってエリートじゃないよ?
応えながら歩きだす隣、ジャケットの肩あざやかに並んだ。
「なんか俺のこと怒ってる?ごめん、」
きれいに響く低い声、ふっと香る。
ほろ苦い甘い、どこか森のような香に笑った。
「怒ってるワケじゃないね、メンドウだなっては思うけどさ?」
「面倒?」
訊き返してくる視線、戸惑かすかに揺れる。
やっぱり「面倒」なんだ?推測と歩きながら言った。
「だってねオマエ、警察のヤツが持ってくる話なんてね?イッパン人からしたらメンドウだろが、」
もう自分は一般人の民間人、その前提あらためて示す。
忘れるわけにいかない線引きに、端整な微笑は口ひらいた。
「面倒でごめん、でも光一に訊いてみたいんだ、」
穏やかな笑顔、けれど視線まっすぐ鋭利に見つめてくる。
こういうところ変わらず反則だな?呆れながら笑った。
「ゴキタイありがたいけどね、守秘義務ヤバいんじゃないかね?」
そんなこと解っているだろう、この男は。
それだけ優秀で有能で解っている、それでも元同僚は頭下げた。
「相談させてほしいんだ、頼む、」
きれいな低い声のまま、けれど白皙の頬かすかに汗伝う。
この男が緊迫している、それだけ「面倒」で追いつめられる何かがある。
おそらく放り出したらソレもまた「面倒」かもしれない?それになにより、
―ふうん?ちっと聞いてみたいかもね、
この男が何かに「緊迫」追い立てられる、その原因たぶん普通じゃない。
それくらい有能な元同僚に、からり笑った。
「こう暑いとさ、ビールいいよね?」
当然おごってくれるよね?
ふくんだ発言、切長い瞳ゆっくり瞬いて微笑んだ。
「赤いビールが旨い店あるんだ、秋らしくていいだろ?」
毬花:ホップ・勿布、別名・西洋唐花草、花言葉「軽快、天真爛漫、不公平、不正、不法、希望、信じる心」
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