創作 義理と人情 2

2024年11月12日 02時03分11秒 | 創作欄

人生には落し穴もあるものだ。

その落し穴は、人間関係に起因する落し穴でもあった。

誰と出会うかによって、人生行路は決まる場合もある。

北側徹は、梅が満開であった夜の東京・湯島神社へ行った帰り、春日通の路地裏のビル地下1階のスナックへ初めて足を踏み入れる。

その店は、韓国パブであったのだ。

40代と思われるママさんの他に、若い4人のホステスが居た。

だが、来店した客は20分ほど、ウイスキーなどを飲むと、ホステスの人と共に店を出て行くのだ。

「二人は何処へ行くのか?」徹は想ってみた。

約1時間後に、客と出て行ったホステスの一人が戻ってきた。

新たな客が来て、同じく20分ほどウイスキーなどを飲むと、ホステスの人と共に店を出て行くのだ。

「買春だな?」徹は確信した。

その店はホテルと隣接していたのだ。

だが、新客の徹は警戒されていたようで、ホステスからの誘いはなかった。

一方、彼はお金で女を抱かない質であったのだ。

韓国人ホステスの一人と思っていた徹の脇に座ったホステスは、にこやかに「メイユイ(美雨)です」と名乗る。

「北京から来たばかりです。わたし、日本語勉強したいです。教えてください」女はビールを徹のグラスに注ぐ。

他のホステスは皆ミニスカートであったが、メイユイはロングスカートであり、しかも野暮な上着姿でもあった。

30分ほどして、徹は店を出た。

メイユイが店の階段の上まで、徹を送り出す。

「わたしは、店やめます。センセイわたしにまた会ってください」メイユイは体を売る女ではなかった。

ママからの「客に身を売ることを求める」要請に抗していたのだ。

「センセイ、名刺ください」すがりつくような声の響きであった。

 

 

 

 

 

 

 

 


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