「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

こころ 2006・07・01

2006-07-01 13:15:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、萩原朔太郎(1886-1942)の詩集「純情小曲集」の「愛憐詩篇」より「こころ」と題した詩一篇。

  こころ

   こころをばなににたとへん
   こころはあぢさゐの花
   ももいろに咲く日はあれど
   うすむらさきの思ひ出ばかりはせんなくて。

   こころはまた夕闇の園生のふきあげ
   音なき音のあゆむひびきに
   こころはひとつによりて悲しめども
   かなしめどもあるかひなしや
   ああこのこころをばなににたとへん。

   こころは二人の旅びと
   されど道づれのたえて物言ふことなければ
   わがこころはいつもかくさびしきなり。


   (角川春樹事務所刊 「萩原朔太郎詩集」 ハルキ文庫 所収)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする