
革ろうけつ染めにパッキンをして半立体的に仕上げた作品「春の兆し」
春の県展に出品した作品です。

美術館に飾られているとき、少し印象が違うなと不思議に思ってはいたのですが、持ち帰って改めて見てわけがわかりました。 色が落ちてしまったのです。 光の輪は慎重にぼかした薄い部分が消えてドーナッツみたいになっているし、柿畑を取り巻く茶色と紫の微妙な色が、薄緑になっています。濃淡もメリハリがなくなっているし・・・さっぱりだわぁ

色落ちは染めの場合ある程度しかたのないことではありますが、
ああ~、毎度のことながら仕上がるのがぎりぎりだったため、写真を撮るのを忘れていました。 出来上がり当時の色をお見せできません。
なんとか元の色に近づくよう、修復を試みましたが・・・・
オイルワックスをたっぷり塗りこんでいるため、染料がはじかれて革にしみ込みません。
まあ、これでもいいか。 何年か時が過ぎたら、また染料を吸い込みやすくなるでしょう。その時まで待つことにします。
春の県展に向けて構想を練り始めたのは1月の終わりのこと。 その時は、今回は柿畑の雪景色でいこうかなあとぼんやりと考えていたのですが、その後2回も大雪が降って、柿畑が真っ白になりました。

これはもう、やるしかないでしょう。
雪は雪でも、真冬の厳しく寒々とした雪景色ではなく、空気に温かみの感じられる春の雪景色にしたいと思いました。あえて現実とはちがう光を描いたのはそのためです。
構図を決め、色のプランを立てて、大下図を描き・・・そこまでの準備をしておいて出かけた東京で、あの大地震。
東京から帰って本格的に制作にとりかかりましたが、構図も色も計画通りではあっても、気持ちは全く違いました。
雪の中にもやがて来る春の兆しが見えるように、絶望の中にもかすかな希望の光が見えますように、わたしなりの祈りを込めて光の輪を描きました。
冷たい雪の下で耐えた柿の木は、約束をたがわず若い芽を吹き、ぐんぐんと葉を広げました。

地面には一面にマツバウンランの花が咲き、


やがて柿の木にも花が咲きました。

柿畑はこれから豊かな実りへと勢いを増していきます。
先の見えない苦しい生活を強いられている被災者の皆さんにも、希望の光がみられますように。 そして、元気を取り戻す日が早く来ますように。
そうそう、いつもの娘たちの批評です。
「でかい鳥じゃねえ。 実際にはこんな鳥はおらんじゃろう。」ははは、そういわれればニワトリくらい大きい鳥ですねえ。
「う~ん、なんだかさびしいねえ。秋にはもっとにぎやかなのにしてよ。」はい、そうするつもりです。
娘たち、それぞれ別々に作品を見て感想を言ったにもかかわらず、そっくり同じことを言う・・・・おそるべし。