もう、なんとも情けない話です。7割方完成に近づいた40号の作品、デュルビュイ。ろうけつ染めという手法で染めています。それを、ちょっとしたミスで、台無しにしてしまいました。
ろうけつ染めというのは、ろうが水をはじく性質を利用して、模様を描く、染めの手法です。布のろうけつ染めは、日本ののれんや着物、インドネシアのバティックなど、よく目にすることがありますが、革のろうけつ染めは見たことがない人も多いかと思います。そのやりかたは・・・・
1 トレーシングペーパーに下図を書く。
2 湿らせた革の上にペーパーを置き、鉄筆などで下図をなぞって革に写していく。
3 薄い色から染めていく。
4 一番目の色を残したい部分にろうを塗る。
5 次に濃い色の染料を染める。一番目の色はろうに守られてそのままの色が残る。
6 2番目の色を残したい部分にろうを塗る。
7 さらに濃い色で染める。
何度もこの行程を繰り返し、次第に濃く染めていく。
最後にろうをはがす。さらに完全にろうを落とすために、革を水洗いする。
簡単に言うとこうなります。
おとといのこと、わたしがろうを落としているかたわらで、師匠が、他の人に説明をしていました。
「ろうは完全に落とさないと、溶けて革にしみこんでしまうんですよ。そうするとその部分だけ黒くなって、(よごれが)とれなくなっちゃうんです。」
そうなんです。だからかなり神経を使ってろうを落とすのです。ろうを落とす瞬間は、今までヴェールにかくれていた作品が本当の姿を現す瞬間ですから、一番楽しみな行程でもあります。
「ああ、なかなかうまくいったじゃないですか。」「そうですね。じゃあ家で洗ってきます。」
そして車に積み込み、途中で買い物をし、(これがまちがいのもとでした)
帰って作品をひろげてみたら・・・・・・
ろうが溶けてる!
写真の茶色く汚れたようになっているのが溶けたろうです。
石壁の、紫がかったブルーグレーの幻想的な色も
ほんのりと牡丹色がかった明かりの色も
みんな茶色に汚れて・・・・
布染めのSさんが、車で2時間かけて教室に通っているのですが、去年の夏、やはり車内の高温でろうが溶けたとか。その話を知っていながらー。つい先ほども師匠のことばを、そうそうなんて頷きながら聞いていながらー。
大急ぎで水洗いしました。晩ご飯も食べず1時間洗い続けました。細かいろうが垢が落ちるようにボロボロとれて、これは何とか助かったかな?と期待したのですが、乾くとやっぱり汚い。おまけに洗いすぎて大切な空にしわが寄るしー。
あきらめました。やりなおします。(きっぱり!)
今日新しい革を買って、下絵を写しました。これだけで3時間。締め切りまで20日足らず。がんばらねば。