いきはよいよい 帰りはこわいつらい。という下山路のこと。
山頂まで1キロメートルの地点から見える景色。瀬戸内海の向こうに白い雲。この日は特別天気がよかったようです。普通は一度くらいはガスがかかるんだとか。
下の方で花が咲いていたイチゴに実がなっていました。

これはシモツケ? 下の方で見たピンクの草むらはこの花だったのかも?
こんな高いところにもアサギマダラはいました。
そして
土小屋ルートと成就ルートが合流する地点に来ました。
西条市からロープウエイで成就に上がりそこから頂上を目指すのが石鎚神社への参拝の道です。ここまで3㎞の道のり。
面河側から石鎚スカイラインで終点土小屋に車を置き、そこから登るのが今回わたしが上ってきた道。西条市側から土小屋に行くには寒風山からUFOラインを通ってきます。4㎞の道のり。なんと4時間かかっていました。(普通は2時間半くらい?)
大学時代、ゼミの仲間と面河から登ったことがありますが、このルートは初っぱなからめちゃくちゃ険しいルートです。途中にある「愛大小屋」で一泊してよく朝山頂へ登りました。
次に登ったのは子どもたちを引率して。これは土小屋からのぼりましたが、当時県下一のマンモス校で、一学年400人という大所帯。それを2班に分けて登るのですが、それでも200人の大行列で、今だったら大迷惑の行列でしょう。当時登山客も今ほど多くはなく、みんなおおらかな時代でした。
成就から登るチャンスはありましたが、わたしはお留守番隊で、緊急事態に備えていましたので登ることはありませんでした。でも娘は頂上まで登ったのですよ。希望者は鎖を登り、山頂からさらにけわしい天狗岳まで。当時の5年生は皆、登山を経験しています。今は親も教師もそんな勇気はありますまい。
で、この分岐点はどんなところかというと
石鎚神社頂上社への入り口のようです。 どうやらこの上が休憩所のようですが、そこに行くためには急な階段を上らなければなりません。わたしと同じように、家族から遅れて登ってきた女性がいて、二人ため息をつきました。
でも、上らねば。急な階段を上りました。
眼下に見えるのは西条市の町並み。
先ほどから何度も見てきましたが、この位置から見ると、信者でも何でもないわたしでさえ「神様はこうやって自分たちの暮らしを見守ってくれているのだ。」と素直に思えるから不思議です。石鎚は山全体が信仰の対象になっています。
さて、一度見てみたかった休憩所兼避難小屋。

西条市の職人さんたちが苦労して作り上げたと聞いています。大工さんは毎日仕事があるので頂上の宿泊所に泊まって、毎日鎖を滑り降りてきたとか(消防士さんか!) 実は知っている職人さんが工事のために毎日成就から登って通ったと言うことを聞いていました。なんと、1時間で登ったんですと。ご苦労様でした。そしてありがとうございました。気持ちのよいトイレでした。
トイレは水洗ですが、紙を捨てることはできず、中においてあるゴミ箱に捨てます。そして使用するには管理費用として100円箱の中に入れます。箱と言ってもただのお菓子か何かの空き箱。お金がむき出しです。やっぱりおおらかなものです。もっときっちり集めても良いものを。
下山するとき、黒いゴミ袋を下げた人が降りていましたが、多分あれがトイレのゴミ。こうして働く人がいてわたしたちは気持ちよくとざんができるのだなあと思いました。
休憩所の縁台に座って上をながめました。
あの灯籠当たりを登っていくと2の鎖の下に出ます。あとは一路頂上目指すのみ。だけど
わたしは登りません。
帰り道を歩く体力を温存しておかなければ。それに今頂上にいるトラオたちより早く降りなければ途中で追い抜かれ、下で待たす羽目になるでしょう。600メートルの距離差と時間差がちょうどよいと思います。
普通は帰り道の方が短く、あっという間に着くような気がするものですが、帰り道は長くつらいものでした。
お昼にはサンドイッチを食べただけだし。目新しい植物もあまりないし、写真も撮ってしまったし・・・
ウマスギゴケはいたるところにありました。よくよく見れば苔ってほんとにきれい。
ほとんど黒に近い色になったヤマアジサイ
ガマズミかな? もう色付いていました。
帰りも後ろから足音が聞こえるたびに道の端に寄って先に行ってもらいました。もう上がってくる人は少なく、ベンチで居合わせた人同士がおしゃべりすることもなく、ただただ足を動かすだけの帰り道でした。
登りのアップダウンが逆になっただけのやはりアップダウンの多い道で、ちょっとだけ左膝に痛みを感じるようになりました。特に段差の大きい階段を下りるときはバランスを崩さないようにと、気も使いました。
それに山の日没は早く、森の中が薄暗くなってきました。早く着かないかなあ、そんなことだけを考えていると一気に疲労が押し寄せてきました。
もってきた水も、飲み干しました。駐車場には自販機がありますから。
登山道の入り口に着いたときはほっとしました。その足で遙拝所の階段を上り、杖を返して、無事に降りられたことを感謝してお礼を言っておきました。
着いた時刻4時ちょうど。降りるのにかかった時間は2時間30分。登りに比べてなんと速かったこと。なのに、倍以上歩いたようなしんどさでした。
そして自販機へ。だけど、ショック。お茶も水も全部売り切れでした。
トイレ近くの東屋で休んでいたら、わたしと同じくらいの女性が話しかけてきました。聞くと、お父さんが熱心な信者で、子どもの頃はよくお父さんに連れられて登ったそうです。弟さんには小児麻痺か何かの障がいがあったのですが、登る(お参りする)うちにいつの間にか麻痺もなおり、今ではお孫さんもいるとか。
「石鎚山のおかげよねえ。」とその人は言っていました。この山には身を鍛え(リハビリ)心(精神力)を癒やす力があるのかもしれません。
西条市民は今でも災害が少ないのは石鎚山のおかげと信じています。(地理的にね、いい場所にあるのです)
そんな話を聞いているうちに子どもたちが元気よく降りてきました。ちょっとした困りごともあったようですが、小学1年生のウマオも初めての登山をがんばりぬいたそうです。
その後売店で飲んだコーヒーのおいしかったこと。
トラオたちは次は成就コースに挑戦するそうです。わたしも今から鍛えればついて行けるかな?