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「夜が深く寒空のなか大勢の人声がして馬の音する()」
「かの宮が狩衣姿に身をやつしびっしょり濡れて入ってきたり()」
「中の姫日頃の恨み忘れそうまりそうだけど逢う気になれず()」
「亡き姫を安心させるができなくて今となっては何になろうと()」
「女房等道理を説いて聞かせれば物を隔ててお会いになれる()」
「宮が言うご無沙汰詫びるを聞けるけど消え入るようで宮も心配()」
「その夜は内裏のお叱り受けようと決意も固くお泊りになる()」
「誓ひつることのあまたになりぬれば千々の社も耳馴れぬらん(河海抄所引)」
「来し方を思ひ出づるもはかなきを行く末かけてなにたのむらん(#181)」
「行く末をみじかきものと思ひなばめのまへにだに背かざらなん(#182)」
「なにごとも変る世の中邪推等するなと言えど奥に入りたり()」
「怨むのはわかるがそうまで無愛想思って宮は悔し涙を()」
「中納言主人顔して住み馴れて人を使うを面白くみる()」
「かの人と中納言とを切り離し京へ連れんとお思いになる()」
「いかでわれつれなき人に身をかへてくるしきものと思ひ知らせ(河海抄所引)」
「都でもあちらこちらで案じたり今はどうでも帰る決意を()」
「かの宮も通うは難く段取りし近いあたりに迎えるという()」
「ありようは后宮がききおよび西の対へと引き取りたまう()」
「中納言宮とは違いわれをおきおせわするものほかにはないと()」