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「このような歌作をしたる大伴の旅人なるひとほほえましきか
(太宰帥オホミコトモチノカミ大伴の卿の酒を讃めたまふ歌十三首)」
「験シルシなき物を思はずは一坏ヒトツキの濁れる酒を飲むべくあらし
(歌1/13首 #3.0338)」
「効果なき下手な考えするよりもどぶろく一杯飲む方がよい()」
「酒の名を聖と負ほせし古の大き聖の言の宣しさ(歌2/13首 #3.0339)」
「酒のこと聖となづくいにしえの大聖人の言葉は善きか()」
「古の七の賢しき人たちも欲りせし物は酒にしあらし(歌3/13首 #3.0340)」
「いにしえの七賢人も望むものそれはお酒であったらしいよ()」
「賢しみと物言はむよは酒飲みて酔哭するし勝りたるらし(歌4/13首 #3.0341)」「賢いぶり物言うよりは酒飲んで酔って泣くのに優るものなし()」
「言はむすべ為セむすべ知らに極りて貴き物は酒にしあらし(歌5/13首 #3.0342)」
「言いようもしようもわからず極まって思い付くのはお酒で様々()」
「中々に人とあらずは酒壷に成りてしかも酒に染みなむ(歌6/13首 #3.0343)」
「もし人でなければならん酒壷にそうして酒で染ませていよう()」
「あな醜く賢しらをすと酒飲まぬ人をよく見ば猿にかも似む(歌7/13首 #3.0344)」
「ああ醜く!賢ぶっては酒飲まぬ人よく見れば猿に似ている()」
「価なき宝といふとも一坏の濁れる酒に豈勝らめや(歌8/13首 #3.0345)」
「値のつかぬ宝といえど一杯の濁れる酒にどうして優る!?()」
「夜光る玉といふとも酒飲みて心を遣るに豈及かめやも(歌9/13首 #3.0346)」
「夜光る玉といっても酒飲んで憂さを晴らすにおよぶことなし()」
「世の中の遊びの道に洽アマネきは酔哭するにありぬべからし
(歌10/13首 #3.0347)」
「世にいいし遊びの道に励むより酔って泣くのをおすすめしたい()」
「今代にし楽しくあらば来生には虫に鳥にも吾は成りなむ(歌11/13首 #3.0348)」
「現世が楽しくあらば来世は虫にも鳥にも何でもなるよ()」
「生まるれば遂にも死ぬるものにあれば今生なる間は楽しくを有らな
(歌12/13首 #3.0349)」
「生まれたら最後は死ねるものゆえにこの世は楽しく生きていきたい()」
「黙然モダ居りて賢しらするは酒飲みて酔泣するになほ及かずけり
(歌13/13首 #3.0350)」
「無駄言わず俐振るのは酒飲んで酔い泣きするになお及ばない()」
「泣き上戸絡み上戸と癖悪い旅人はどんな酒飲みなりし()」
「このような連作あればその歌人思いしことがよくわかりたり()」