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「庄太郎身の上のこと健さんが来ては話せる不思議なことを()」
「庄太郎女にさらわれ七日目に帰るはいいが熱出して寝る()」
「パナマ帽被り菓子屋の店先で道行く女を眺めるが趣味()」
「夕方に女が立ちて籠詰めの一番でかい篭を注文()」
「その篭を重いと言えるものだから庄さん暇で持って家まで()」
「いなくなり皆が騒いでいるところ七日目の晩ふらりと帰る()」
「行き先を聞けば電車で遠きとこ行って降りれば青き原っぱ()」
「草の上女と行けば絶壁に女はそこを飛び込めという()」
「『辞退せば豚が舐めるがよござんす?』聞かれたけれどそのままでいた()」
「庄さんは豚と雲右衛門とが大嫌い豚が舐めるは身の毛かよだつ()」
「そんなとき豚が一匹鼻鳴らし庄太郎へと近づいてきた()」
「しかたなくステッキで豚鼻先をたたくと倒れ絶壁を墜つ()」
「また来たり次から次に豚がくる見れば列成し無尽蔵なり()」
「そのうちにさわれば豚は墜ちていくしかし尽きない豚の数なり()」
「そのうちに腕が蒟蒻ふにゃふにゃになってとうとう豚に舐めらる()」
「健さんの話はここで途切れるがだからあんまり女見るなと()」