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映画「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」:よく出来た歌舞伎の新作演目のようだ

J.J.エイブラムスの監督作品の中で,これまで面白かったと思えたのは,往年の人気シリーズをリブートした「スター・トレック」の第1作ただ1本だけだった。
本作以前の4作の監督作品を含む数多くのフィルモグラフィーはいずれも,脚本を書いた「アルマゲドン」,製作に回った「ミッション・インポッシブル」シリーズや「クローバーフィールド」に代表される「ひたすら大きい」ことを目指した仕掛けが,本来なら主役であるはずのストーリーとの間で明らかに主客転倒を起こしていることが決定的な瑕疵となってしまい,作品世界に没頭することが出来なかった。
ただ,J.JがCGを中心に据えた大きなプロダクションを仕切る術を持っていることを「スター・トレック」シリーズで証明したことは確かであり,新しい「スター・ウォーズ」のスタートを仕切る役を任されたというニュースにもさしたる驚きはなかった。そのニュースから3年余。果たして,J.Jに白羽の矢を立てたジョージ・ルーカスの選球眼は「吉」と出た。壮大なサーガの見事な復活だ。

宇宙空間は勿論,砂漠に酒場,ドロイドにエイリアンという,お馴染みの舞台や登場人物がブラッシュアップされて出てくるだけで,初日・初回に観たファンは絶叫状態だったはず。
タクトを振るったJ.Jは,そんな目の肥えたファンの存在を充分に意識していたであろうが,得意としてきたCGの使用を控えめにする一方で,戦闘シーンのスピード感や人物や宇宙船と背景との整合感に長足の進歩を見せて,彼らの期待に応えてみせた。

初の女性ヒロインと騒がれているが,振り返ってみて最初の3部作でのレイア姫も,決して添え物の位置に留まってはいなかった。だがレイのキレのあるアクションや瑞々しい表情は,新しい物語が内包する躍動感の象徴だ。デイジー・リドリーは前シリーズのヘイデン・クリステンセンが可哀相になるほど,新たなフォースの持ち主に相応しい魅力溢れるヒロインを作り上げている。
旧シリーズ(Ⅳ~Ⅵ)の登場人物が第1作から40年近い時を越えて同じ役で登場するという,ファンには堪らないお約束の果たし方も,見事と言うほかない。

私の杞憂をあざ笑うかのように本作が成功した理由は,「スター・ウォーズ」サーガが宇宙を舞台に「親子の絆と宿命」を設定を変えて描き続けるひとつの「様式」に昇華している,という歴史的な事実を,J.Jが素直に受け入れて,そのフレームの中で出来る最善のものを作り上げる職人的姿勢に徹したことに尽きる。
ハン・ソロ(ハリソン・フォード)が登場するシーンには,間違いなく世界中で「待ってました!」の声が大向こうからかかったことだろう。
★★★★☆
(★★★★★が最高)

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